第4章 旅立ちの時 75話、そして大空へ
朝、澄み切った青空。
冷たい風が大地を撫でる。
三人は庭に立っていた。
その背後には、三匹のワイバーン。
赤翼――アルフェリス。
白翼――スノウェル。
赤黒――ブモー。
いよいよ。
旅立ちの時。
アリューが軽く振り返る。
「準備いいか?」
シリューが頷く。
「いつでも」
ユウも笑う。
「行こう」
そこにラ・セレール。
自然な流れで、ユウのブモーの方へ歩いていく。
そして、当然のように乗ろうとする。
それを見たシリュー。
「……チッ」
小さく。
だが確実に。
舌打ち。
アリューが横目で見る。
(分かりやすいな……)
シリューは露骨に残念そうだ。
目で訴えている。
「そっちじゃない」
本当は。
スノウェル。
二人乗りしたかった。
ユウがそれを察する。
一瞬で。
「ねぇセレール」
優しく声をかける。
「ブモー、大きいんだけど……」
少し間。
「ちょっと体調悪いの」
ブモーが「え?」という顔をする。
ユウは続ける。
「スノウェルに乗ってくれる?」
ラ・セレールは首をかしげる。
「スノウェル……?」
わからない。
そして。
歩き出す。
向かった先はアルフェリス。
アリューの赤翼。
そのまま乗ろうとする。
シリューの顔が。
絶望。
「……ちが……」
声にならない。
アリューが見かねて言う。
「スノウェルは白いやつだ」
ラ・セレールが「あ」と小さく声を出す。
ようやく、方向転換。
シリューの元へ、近づいてくる。
一歩ずつ。
シリューの心臓がうるさい。
目の前に立つ。
「これ?」
「……ああ」
声が少し裏返る。
シリューはそっと手を差し出す。
ラ・セレールの手を取る。
軽い。
柔らかい。
そのまま。
スノウェルの背へと導く。
「気をつけろ」
ラ・セレールは頷く。
その光景を見て。
ユウがにやりと笑う。
アリューも小さく笑う。
準備完了。
その時。
後ろから声。
「おい」
グラナディス。
腕を組んで立っている。
「当面の生活費よこせ」
アリューが即答。
「働け」
グラナディスが睨む。
「誰がこの家守ると思ってる」
一瞬の間
アリューはため息をつく。
懐から袋を取り出す。
ポイッ
グラナディスが片手で受け取る。
中を確認。
「ふむ……まぁいい」
満足げ。
「この家は任せろ~」
軽い調子で言う。
三人が同時に思う。
(こいつ本当に大丈夫か……)
だが。
それでも。
背中を預けられる存在。
アリューが前を見る。
「行くぞ」
三匹が翼を広げる。
ドンッ!!
地面を蹴る。
風が巻き上がる。
空へ。
アルフェリスが先頭。
スノウェルが続く。
ブモーがゆっくりと上昇。
街が小さくなる。
家が遠ざかる。
グラナディスが下で手を振る。
(振ってるのか?適当か?)
空は広い。
これから始まる。
新しい旅。
父を探す旅。
そしてそれぞれの想いを乗せて。
四人は、空へ消えていった。




