第69話 残された時間
「・・・ブモーにかけよう。一番大型だし。運ぶの大変だ」
ギルドに行けばなんとか解決できるだろうと言う考えだった。
二人も了承したので、ブモーの頭に手のひら一杯の血をかける。
ピシ……
小さな音。
石に走るヒビ。
ユウが息を呑む。
「……!」
ゆっくりと、本当にゆっくりと、ブモーの体が動いた。
石の表面が崩れ、中から本来の肉体が現れる。
呼吸。
鼓動。
命。
戻ってきている。
「ブモー!!」
ユウが駆け寄る。
ブモーが弱々しく鳴く。
「グル……」
完全ではない。
だが、生きている。
アリューが安堵の息を吐く。
「助かったな……」
シリューも頷く。
「一部だけでも血が効いたか」
しかし、問題は残る。
アリューが振り返る。
そこには完全に石化したままのアルフェリス。
そしてスノウェル。
動かない。
反応もない。
ユウの顔が曇る。
「……二人は」
シリューが静かに言う。
「血が足りない」
アリューが拳を握る。
「戻す」
短く。
強く。
「絶対にだ」
三人は急いで行動した。
シリューが手をかざす。
植物魔法。
地面から伸びるツル。
それがアルフェリスとスノウェルの石像をブモーにしっかりと固定する。
落ちないように、崩れないように。
ブモーの背に乗せる。
二体の石像。
そして三人も乗る。
明らかに重量オーバー。
ユウが心配そうに言う。
「大丈夫……?」
ブモーは低く唸る。
「グルル……!」
覚悟。
そしてバサァッ!!
翼を広げた。
重い。
明らかに。
だが、それでも、空へ。
風が唸る。
高度が上がる。
ブモーの羽ばたきは重い。
だが止まらない。
アリューが言う。
「いけるか……?」
シリューがブモーの背を撫でる。
「頼む」
ユウも小さく言う。
「お願い……」
やがて、街が見える。
そしてギルド。
広場。
ドスン……!
重い着地。
ブモーは息を荒げていた。
限界に近い。
だが耐えた。
三人はすぐに降りる。
受付へ向かう。
男が驚く。
「お前たち……!」
そして視線が止まる。
石像。
ワイバーン。
「まさか……」
アリューが言う。
「仲間が石化した」
シリューが続ける。
「解決策はあるか?」
男は一瞬黙る。
そして言う。
「言った通りだ。石化を解くにはその個体の血が必要だ」
ユウが焦る。
「それはある!」
アリューが説明する。
「だが……」
「稲妻魔法と爆発魔法で、ほとんどが凝固した」
手のひらほどの大きさ。
それだけ。
男が考える。
腕を組む。
そして。
「……水だ」
三人が反応する。
「水?」
男が頷く。
「凝固した血でも水で分解すれば使える可能性がある」
希望。
わずかだが。
確かにある。
ユウの目が光る。
「やれるかも!」
アリューが即決する。
「行くぞ」
アルフェリスとスノウェルの石像はギルドの広場に置く。
人目のある場所。
安全な場所。
そして再び。
三人とブモーは空へ。
「グル……」
ブモーは疲れている。
だが飛ぶ。
仲間のために。
森へ向かう。
あの場所へ。
ギガントメガデスを倒した場所。
そこに残された血。
時間はない。
石化がどこまで進むか分からない。
完全に戻らなくなる可能性もある。
アリューが前を見据える。
「急ぐぞ」
シリューも頷く。
「間に合ううちに」
ユウが強く言う。
「絶対助ける」
空を切り裂きながら、三人は再び戦場へ向かう。
仲間を取り戻すために。




