第64話 一週間の進化
あれから一週間。
三人は毎日、
学校が終わるとすぐに裏庭へ向かった。
そして、無言で飛び込む。
バシャッ。
それが日課になっていた。
ラ・セレールは箒を持って、様子を見ていた。
最初は地獄だった訓練。
だが今は違う。
水の中。
濁った視界。
それでも
「いた」
アリューが動く。
手が触れる。
ゴライアスタイガー。
確実に触れている。
しかし。
「くそ」
逃げられる。
掴めない。
あと一歩。
それが遠い。
それでも三人は変わった。
確実に、大きく。
ユウが言う。
「なんかさ」
「目つぶっても歩ける」
シリューが頷く。
「わかる」
アリューも言う。
「気配でわかる」
実際三人は、目を閉じたまま学校へ行けるレベルになっていた。
周囲の空気。
足音。
気配。
すべてを感じ取る。
もはや普通ではない。
体も変わった。
服の上からでもわかる。
筋肉。
特に背筋。
異様なほど発達している。
シリューが槍を振る。
シュッ!!
以前より圧倒的に速い。
アリューも剣を振る。
空気が裂ける。
ユウでさえ弓の引きが余裕になり、更に強い弦に変えていた。
完全に水泳筋肉。
しなやかで強い。
無駄がない。
そして。
呼吸。
最初は五分だった。
限界。
だが今は違う。
「……」
三人は水の中で動く。
焦らない。
呼吸を抑える。
意識を沈める。
気づけば十分。
それも無意識で。
ユウが言う。
「なんかさ」
「普通に潜ってるよね」
シリューが笑う。
「人間じゃないな」
さらに魔力。
これも変わっていた。
濃く。
深く。
扱いやすくなっている。
以前感じた
“ 宇宙と繋がる感覚”
それを自然に扱えるようになっていた。
ユウが呟く。
「魔法……前より軽い」
アリューも頷く。
「強くなってるな」
そして知識。
三人は文字もかなり読めるようになっていた。
ユウが本を持つ。
「これ読めるよ」
シリューも言う。
「前は無理だったのに」
アリューは考える。
(そろそろ……)
頭に浮かぶのは
一つ。
父。
探しに行きたい。
王都へ。
だがまだ、修行の途中。
グラナディスの顔が浮かぶ。
(今じゃない)
アリューは小さく息を吐いた。
その夜。
三人は池の前に座っていた。
水面を見つめる。
ゴライアスタイガーが動く。
速い。
逃げる。
アリューが言う。
「このままじゃ無理だな」
シリューが頷く。
「一人じゃ捕まえられない」
ユウが考える。
「じゃあさ」
二人が見る。
ユウは言った。
「三人で一匹追い込めばいいんじゃない?」
アリューの目が光る。
「なるほど」
シリューも理解する。
「逃げ道を塞ぐ」
ユウが頷く。
「一匹ずつ確実に」
少しの沈黙。
そして。
アリューが笑う。
「いいじゃん」
立ち上がる。
「それでいこう」
シリューも槍を握る。
ユウも覚悟を決める。
水面が揺れる。
その下には三匹の獲物。
三人は新しい作戦を手に入れた。




