第63話 限界と日常
二十回目。
三人は水中から這い上がった。
バシャッ!!
「はぁ……!!」
ユウが大きく息を吸う。
肺が焼けるように痛い。
シリューも膝をつく。
「無理……もう無理……」
アリューですら地面に倒れ込んだ。
「はぁ……はぁ……」
三人とも、完全に限界だった。
そのまま。
陸に寝転がる。
空を見上げる。
体が動かない。
指一本すら重い。
しばらく誰も喋らなかった。
ただ呼吸の音だけが響く。
グラナディスが言う。
「今日はもういい」
三人が少しだけ安心する。
しかし次の言葉。
「毎日やれ」
ユウが小さくうめく。
「やっぱり……」
シリューも苦笑する。
グラナディスは続ける。
「学校が終わったら必ずだ」
そして、少しだけ口元を上げた。
「一番早くゴライアスタイガーを捕らえた者には――」
三人が顔を上げる。
「褒美を与える」
アリューがニヤリと笑う。
「いいね」
シリューもやる気を出す。
「負けない」
ユウも言う。
「やる」
その日の夜。
夕食。
塩と蜂蜜で味付けされた肉。
昨日よりもずっと美味い。
食卓にはラ・セレールも座っていた。
彼女の説明は何もしていなかったが、グラナディスはそういうもんだろと高尚な理解をしていた。
そして三人はほとんど喋らなかった。
疲れすぎている。
食べ終わるとすぐに。
バタッ。
倒れるように寝た。
まるで泥のように。
翌朝。
「……いてぇ」
アリューが起きる。
体が動かない。
全身が軋む。
シリューも起きる。
「無理……」
ユウはさらにひどい。
「歩けない……」
三人とも全身筋肉痛。
動きがぎこちない。
まるでロボットのようだった。
それでも。
学校へ向かう。
教室。
席に座る三人。
その時。
教師が言った。
「今日はテストをする」
ユウが固まる。
「え?」
配られる紙。
二枚。
一枚目。
計算問題。
二枚目。
漢字テスト。
ユウの顔が青くなる。
「やばい……」
テスト開始。
教室は静かになる。
紙をめくる音。
ペンの音。
アリューは意外にも手が動いていた。
(これくらいなら)
計算もスラスラ。
漢字も問題ない。
シリューは悩みながら書く。
「うーん……」
ユウは完全に止まっていた。
「……」
計算問題。
数字が並ぶ。
しかし。
(わからない)
頭が真っ白。
一方で、漢字になると、手が止まらない。
(これは簡単)
スラスラ書いていく。
結果発表。
アリュー。
「計算……85点」
「漢字……90点」
ユウが驚く。
「すごいじゃん」
アリューは肩をすくめる。
「まあな」
シリュー。
「どっちも……60点」
「普通だな」
本人も納得している。
そしてユウ。
「計算……25点」
「えぇ……」
ユウが頭を抱える。
しかし。
「漢字……100点」
教室がざわつく。
シリューが言う。
「極端すぎ」
アリューが笑う。
「才能の偏り」
ユウは言い返す。
「漢字は得意なの!」
その日の帰り道、三人は並んで歩く。
体はまだ痛い。
でも。
どこか楽しい。
戦いも。
訓練も。
学校も。
全部が混ざり合っていた。
そして。
夕方になればまたあの水の中へ。




