第60話 顧客名簿
洞窟の奥、煙はまだ残っている。
レッドコングは倒れたまま。
その巨大な体を見て、セレールが恐る恐る洞窟を覗いた。
「……すごい音が」
足を一歩入れる。
そして止まる。
洞窟の中の光景。
死体。
倒れた魔物。
三人は普通に歩いている。
セレールは目を丸くした。
「本当に……」
「全部倒したの?」
シリューは周囲を見回す。
洞窟の奥に小さな机があった。
その上に引き出し付きのテーブル。
「何だこれ」
引き出しを開ける。
中には紙の束。
アリューが一枚取る。
ユウも覗く。
そこには
名前が並んでいた。
アリューが言う。
「顧客名簿か?」
ユウが数える。
「十五人くらい」
その名前はほとんどが貴族。
アリューが言う。
「エルフ奴隷の客か」
ユウが顔をしかめる。
「最低」
シリューが一番下を見る。
「ん?」
そこにはこう書かれていた。
ブラード・ヴァルクレイド
三人は顔を見合わせた。
アリューが言う。
「……聞いたことある」
ユウも頷く。
「ある」
シリューも言う。
「でも思い出せない」
三人は少し考えた。
しかし、誰なのか思い出せない。
ユウが言った。
「そういえば、説明書で読んだ」
二人が見る。
「盗賊とか山賊って、武器を持って帰ると、ギルドが個人鑑定して賞金出してくれるらしいよ」
アリューが言う。
「マジ?」
シリューが言う。
「いいなそれ」
アリューが笑う。
「じゃ」
「回収」
三人は動き出す。
剣。
斧。
ナイフ。
賊たちの武器を集める。
近くにロープ。
それで束ねる。
さらに袋。
そこに詰める。
アリューが背負う。
「重い」
シリューが笑う。
「金の重さ」
その時、シリューが止まった。
「……」
振り向く。
人の気配。
そこにいたのはセレール。
すぐ後ろ。
ものすごく近い。
顔と顔の距離。
シリューの顔が一瞬で赤くなる。
「うわっ」
セレールは微笑む。
「ありがとう」
シリューは完全に照れていた。
ユウがニヤニヤする。
アリューも笑う。
「お前、完全に惚れてるな」
シリューが怒る。
「うるさい」
洞窟の中に少しだけ平和な空気が流れた。




