第52話 特別メニュー
校長室での騒動から数日。
アリューの頬には細い傷跡が残っていた。
シリューが治療魔法をかけて、すぐに血は止まった。
だが、完全には消えなかった。
鏡を見ながらアリューが言う。
「意外と深かったな」
指で軽く触れる。
「もしかしたら」
「これ、一生残るかもな。」
ユウが少し悲しそうな顔をした。
「ごめん…」
アリューが笑う。
「なんでお前が謝るんだ」
「悪いのはあいつだろ」
その日の昼休み。
校舎裏。
ユウはシリューを呼び出した。
「ねえ」
シリューがパンをかじる。
「なに」
ユウは少し迷う。
そして小さく言った。
「わたし」
「アリューのこと…」
一瞬黙る。
そして。
「好きになっちゃった。」
シリューは普通に答えた。
「いいんじゃね?」
ユウが目を丸くする。
「え?」
シリューは肩をすくめた。
「実際、頼りあるお兄ちゃんだし」
パンをもう一口食べる。
「俺も」
普通に言う。
「大好きだよ。」
ユウが苦笑する。
「そういう意味じゃなくて」
シリューは言う。
「わかってる」
そして続けた。
「ボスだし」
「リーダーだし」
少し笑う。
「応援するよ」
あまりにもあっさりだった。
ユウはしばらく黙ったあと、少しだけ顔が赤くなった。
夕方。
三人は家へ戻った。
玄関を開けた瞬間。
低い声。
「おい」
振り向くとグラナディス。
腕を組んで立っている。
三人は同時に思った。
「怒ってる」
グラナディスはアリューを見る。
頬の傷。
そして言った。
「お前」
低い声だった。
「頬を切られるまで」
「本気出さないとは」
少し前に出る。
「油断か?」
沈黙。
さらに言う。
「それとも」
目を細める。
「自信か?」
アリューは少し考えた。
「……両方」
グラナディスの眉がぴくりと動く。
「ほう」
「お前」
少し笑う。
「そんなに強いのか?」
沈黙。
アリューは答えない。
するとグラナディスは言った。
「よし」
指を三人に向ける。
「決めた」
嫌な予感。
グラナディスが宣言する。
「明日から」
「三人とも特別メニューだ。」
ユウが言う。
「え」
シリューが言う。
「やばそう」
アリューが言う。
「何する気だ」
グラナディスは笑うだけだった。
夕食。
三人は並んで座っていた。
スープ。
肉。
パン。
しかし誰も食事に集中していない。
ユウが小声で言う。
「特別メニューって」
シリューが言う。
「ろくでもない」
アリューが腕を組む。
「間違いない」
グラナディスは楽しそうに食べていた。
三人を見ながら言う。
「覚悟しとけ」
そして一言。
「死ぬほど鍛える。」
三人は顔を見合わせた。
そして。
小さく頷く。
覚悟は決まった。
アリューが言う。
「で」
グラナディスを見る。
「新メニュー」
ユウも聞く。
「どんなの?」
シリューも言う。
「気になる」
グラナディスはゆっくり笑った。
「簡単だ」
スープを飲む。
そして言った。
「明日から」
「森で暮らせ。」
三人は固まった。
「え?」
「森?」
グラナディスは続ける。
「家には帰るな」
「三日だ」
笑う。
「三日間サバイバル。」
夕食の席が静まり返った。




