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赤翼のワイダー  作者: 忍絵 奉公


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第51話 大人の落とし前


 校長室は、戦場のあとだった。

 壁には大穴。

 床には倒れた騎士。

 窓ガラスは粉々。

 職員室からはまだ教師たちが覗いている。

 その中で、後ろにいたグラナディスがゆっくり歩いた。

 伯爵の横に来ると、

 ドサッ。

 無遠慮に隣へ腰を下ろす。

 そして腕を組んだ。

「さぁーて」

 低い声。

「ここからは」

 少し笑う。

「大人の話だ。」

 伯爵の背中に冷たい汗が流れる。

 グラナディスが凄んだ。

「どう」

 顔を近づける。

「落とし前つける気だ?」

 伯爵は黙っている。

 グラナディスが顎で示した。

「見ろ」

 アリュー。

 頬から血が流れていた。

 結構な量だ。

 グラナディスが大げさに言う。

「おいおい、出血多量で死ぬかもしれんな。」

 アリューが言う。

「いや」

 ユウが言う。

「死なないよ」

 二人は顔を見合わせる。

 完全に呆れていた。

 しかしグラナディスは構わない。

 伯爵の肩を組む。

 ぐいっと引き寄せる。

「聞いてるのか?」

 耳元で言う。

「おい?」

 伯爵はしばらく黙っていた。

 やがて言う。

「……何が望みだ」

 グラナディスが少し考える。

「そうだな」

 伯爵の顔を覗き込む。

「お前、もう伯爵引退した方が良くないか?」

 伯爵の眉が動く。

 グラナディスは続ける。

「ん?こんだけ恥かいて、のうのうと」

「王都?」

 少し笑う。

「戻れるのか?」

 伯爵は何も言えない。

 横ではレオンが震えていた。

 さっきまで威張っていた少年は、今や顔が真っ青だった。

 伯爵が低く言う。

「……いくら欲しい」

 グラナディスの顔が変わる。

「は?」

 伯爵が言う。

「金だ」

「望みは金だろう」

「いくらでも出す」

 その瞬間。

 グラナディスの眉が吊り上がった。

「金?」

 机を軽く叩く。

「金!金!金!」

 睨む。

「馬鹿にしてるのか?」

 声が低くなる。

「金なんていらん。」

 伯爵の顔がこわばる。

 グラナディスが指を向けた。

 レオン。

「それよりまず」

「このレオンだっけ?」

 レオンがビクッとする。

 グラナディスは言った。

「こいつを王都に転校させろ。」

 伯爵が黙る。

 グラナディスは続ける。

「そして」

 指を立てる。

「二度とこの学校に干渉するな。」

 さらに言う。

「いや・・この街にもだ。」

 沈黙。

 長い沈黙。

 やがて伯爵が言う。

「……わかった」

 グラナディスが眉を上げる。

「わかった?」

 少し顔を近づける。

「まだ、わかってないな。」

 伯爵の顔が引きつる。

 グラナディスが言った。

「こう言うんだろ?」

「わかりました。」

 伯爵は歯を食いしばる。

 そして――

 頭を下げた。

「……わかりました」

 グラナディスが笑う。

 伯爵は続けた。

「レオンを王都に戻します」

「そして」

「二度とこの街に干渉しません。」

 静寂。

 グラナディスは立ち上がった。

 満足そうだった。

 アリューを見て言う。

「終わったぞ」

 アリューは頬を拭いた。

「早かったな」

 ユウがため息をつく。

 校長室の外では、教師たちがまだざわざわしていた。

 レオンは震えたまま動けない。

 伯爵はただ俯いていた。

 そしてグラナディスが、最後に小さく言った。

「教育完了だな」

「あ、壊したものは、お前が弁償しておけよ」



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