↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤翼のワイダー  作者: 忍絵 奉公


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/96

第47話 七発の返礼


 校庭の端。

 木陰のベンチに腰掛けながら、

 グラナディスは腕を組んでいた。

 騒ぎは最初から見ている。

 アリューが殴った瞬間も。

 教師が土下座させた瞬間も。

 だが――

 助けなかった。

 理由は簡単だった。

「どうするか見たかった」

 グラナディスは小さく笑う。

「面白い」


 土下座したままのアリュー。

 目の前には血だらけのレオン。

 レオンは笑っていた。

「いいぜ」

「許してやる」

 教師がほっとした顔をする。

 しかしレオンは続けた。

「ただし」

「一発殴らせろ。」

 周囲がざわつく。

 教師はすぐ言った。

「それで済むなら!」

「アリュー、受けろ!」

 ユウが叫ぶ。

「ダメ!」

 しかし教師は強く言った。

「黙りなさい!」

 シリューの目が細くなる。

 だがアリューはゆっくり立ち上がった。

 そして――

 笑った。

「いいよ」

 レオンがニヤリとする。

 アリューは顔を近づけた。

「ほら」

 自分の頬を指さす。

「ここだ」

 さらに言う。

「殴れ。」

 挑発だった。

 レオンの顔が赤くなる。

「なめやがって!」

 次の瞬間。

 レオンの手が懐に入る。

 そして――

 鋭い小刀。

 教師が叫ぶ。

「なっ!?」

 レオンは迷いなく突き刺した。

 ズッ!

 アリューの腹に突き刺す。

 周囲が悲鳴を上げた。

「きゃあ!」

「刺した!」

 しかし――

 音がおかしかった。

 ゴツッ。

 金属が固い物に当たる音。

 レオンが目を見開く。

「……は?」

 もう一度刺す。

 ズッ!

 しかし同じだった。

 刃が全く入らない。

 アリューの強靭な腹筋に止められていた。

 レオンは狂ったように刺す。

 ザッ!

 ザッ!

 ザッ!

 ザッ!

 何度も。

 何度も。

 しかし刃は皮膚すら破れない。

 アリューがため息をついた。

「おい」

 レオンの手を止める。

「一発だろ」

 周囲が静まり返る。

 アリューが数える。

「二発」

「三発」

「四発」

「五発」

「六発」

「七発」

 そして言った。

「もう八発だ。」

 レオンの顔が青くなる。

 アリューが笑う。

「丁寧に」

「お返ししないとな。」

 パシッ。

 最初のビンタ。

 レオンの顔が揺れる。

 アリューが言う。

「これは!ユウを“俺の許可なく口説いた分だ”。」

 パシッ。

 二発目。

「これは!腕を掴んだ分」

 パシッ。

 三発目。

「これは!嫌がってるのに近づいた分」

 パシッ。

 四発目。

「これは!脅した分」

 パシッ。

 五発目。

「これは!教師を利用した分」

 パシッ。

 六発目。

「これは!刃物を出した分」

 そして――

 七発目。

 アリューが言う。

「これは!俺を刺した分。」

 パァン!!

 強烈なビンタだった。

 レオンの体がぐらりと揺れる。

 頬が真っ赤に腫れる。

 目が白くなる。

 そして――

 ドサッ。

 倒れた。

 気を失っていた。

 校庭が完全に静まり返る。

 誰も動けない。

 取り巻きたちがようやく動いた。

「レオン様!」

「やばい!」

「保健室だ!」

 慌てて抱え上げる。

「道を空けろ!」

 生徒たちが左右に避ける。

 そしてレオンはそのまま――

 保健室へ運ばれていった。

 校庭には、まだ沈黙が残っていた。

 遠くで。

 グラナディスが笑っていた。

「はは……やっぱり面白い奴だ」

 そして静かに呟く。

「まぁ伯爵家は黙らんだろうな」

 風が吹いた。

 嵐の前の静けさだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。