↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤翼のワイダー  作者: 忍絵 奉公


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/96

第46話 伯爵の不良


 学校には、ひとりだけ特別な生徒がいた。

 名前は――

 レオン・ヴァルクレイド。

 王都から来た貴族。

 しかも伯爵家の長男。

 だが、優秀だから有名なのではない。

 問題児として有名だった。

 授業をさぼる。

 教師に逆らう。

 生徒を脅す。

 それでも誰も逆らえない。

 理由は簡単だった。

 伯爵家の権力。

 この地方の役人や騎士団にも影響力がある家だった。

 教師でさえ強く言えない。

 だから――

 この学校では、彼が半分王様のような存在だった。


 昼休み。

 校舎の裏。

 ユウがベンチで、一人パンを食べていた。

 そこへ影が落ちる。

「へえ」

 低い声。

 レオンだった。

 金色の髪。

 高価そうな制服。

 そして不敵な笑み。

「お前が噂の転校生か」

 ユウは顔を上げる。

「……うん」

 レオンはじっと見つめた。

「可愛いじゃねえか」

 ユウが眉をひそめる。

「何?」

 レオンが近づく。

「俺の女になれよ」

 周囲の生徒が息を呑む。

 ユウは立ち上がった。

「やだ」

 即答だった。

 レオンの笑顔が少し歪む。

「へえ」

「強気だな」

 それが――

 始まりだった。


 最初は軽かった。

 話しかける。

 からかう。

 道をふさぐ。

 ユウは普通に無視していた。

 しかし――

 だんだんエスカレートした。

 腕をつかむ。

 肩を抱く。

 逃げると笑う。

 周囲の生徒は見ているだけ。

 誰も止めない。

 止められない。

 そしてある日。

 レオンがユウの腕を掴んだ。

「逃げんなよ」

 ユウが振りほどこうとする。

「離して」

 その時だった。

「おい」

 低い声。

 アリューだった。

 レオンが振り向く。

「なんだ?」

 アリューはゆっくり近づく。

 目が冷たい。

「それ…やめろ」

 レオンが笑う。

「なんだ?お前の女か?」

 アリューのこめかみがぴくりと動く。

「違う。・・でも嫌がってる」

 レオンが肩をすくめる。

「だから?」

 その一言で――

 アリューの中で、何かが切れた。

 次の瞬間。

 拳が飛んだ。

 ドゴッ!

 レオンの顔に直撃する。

 吹き飛ぶ。

 地面を転がる。

 周囲が騒然となる。

「えっ!?」

「やばい!」

 レオンが起き上がる。

 口から血。

 目が怒りに染まる。

「てめぇ……!」

 そして殴りかかる。

 しかし――

 遅い。

 アリューが避ける。

 腹へ拳。

 肘。

 膝。

 ドン!ドン!ドン!

 レオンは一方的に殴られた。

 地面に転がる。

 起きる。

 また倒れる。

 完全に――

 ボコボコだった。

 周囲の生徒は震えていた。

「レオンが……」

「負けてる……」

 その時。

 教師が駆け込んできた。

「何をしている!!」

 先生が叫ぶ。

 地面には血だらけのレオン。

 立っているアリュー。

 状況は明白だった。

 しかし――

 先生の顔色は青かった。

 レオンを見て、すぐ理解した。

 まずい。

 そして言った。

「アリュー!」

「今すぐ謝れ!」

 アリューが眉をひそめる。

「……は?」

 先生が焦っている。

「土下座して謝るんだ!」

「今すぐ!」

 周囲の生徒がざわめく。

「え?」

「なんで?」

 レオンは地面で笑っていた。

 血を吐きながら。

「そうだ……」

「土下座しろよ」

「平民」

 空気が凍る。

 ユウが拳を握る。

 シリューの目が冷たくなる。

 しかしアリューは――

 静かに地面を見た。

 そして。

 膝をついた。

 教師が言う。

「頭を下げろ!」

 アリューは――

 ゆっくりと頭を地面につけた。

 土下座。

 校庭が静まり返る。

 誰も声を出せない。

 ユウが震える声で言う。

「……アリュー」

 しかしアリューは何も言わない。

 ただ地面に頭をつけていた。

 レオンが笑う。

「そうだ」

「それでいい」

 しかしその時。

 遠くで――

 低い声が響いた。

「ほう」

 校門の方だった。

 青い髪の男。

 腕を組んで立っている。

 グラナディス。

 その目が、静かに細くなった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。