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赤翼のワイダー  作者: 忍絵 奉公


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第3章.識字滞在   44話:竜の弟子達


 スタンピードの戦いから、しばらく経った。

 街には平和が戻り、壊れた防壁の修理も終わりかけていた。

 そして――

 アリューたちの生活も、少し変わり始めていた。

 朝。

 学校の鐘が鳴る。

 石造りの校舎の前に、生徒たちが集まっていた。

 その中に――

 三人の見慣れない顔があった。

 アリュー。

 シリュー。

 ユウ。

 そして少し離れたところに――

 青い髪の男。

 グラナディス。

 生徒たちがざわめく。

「誰?」

「転校生?」

「なんか強そう……」

 校長が咳払いをした。

「静かに」

 生徒たちが一斉に黙る。

 校長は三人を前に出した。

「今日からこの学校に通うことになった」

「新しい生徒だ」

 ざわめきが起こる。

 校長が続けた。

「紹介しよう」

「アリュー、シリュー、ユウ」

 そして少し言葉を選ぶようにして言った。

「……強い転校生たちだ」

 その言葉に、生徒たちは興味津々だった。

 中には噂を知っている者もいる。

「もしかして……」

「スタンピードの……」

 しかしアリューは何も言わない。

 ただ教室を見回した。

 少しだけ居心地が悪そうだった。

 シリューは静かに立っている。

 ユウはちょっと楽しそうだ。

 そして教室の後ろでは――

 グラナディスが腕を組んで見ていた。

 教師が慌てて聞く。

「え、えっと……あなたは?」

 グラナディスが答える。

「保護者じゃ」

 教師は一瞬固まった。


 学校の時間は、意外と静かだった。

 文字の練習。

 読み書き。

 計算。

 ユウがノートに字を書く。

「これで合ってる?」

 シリューが頷く。

「たぶん」

 アリューは普通に読めるが、難しい言葉はまだ苦手だった。

 しかし三人とも吸収は早い。

 先生も驚いていた。

「覚えるのが早い……」


 夕方。

 学校が終わる。

 そして――

 本当の訓練が始まる。

 庭の温泉の横。

 グラナディスが腕を組んで立っていた。

「よし」

「今日から体術を教える」

 アリューが聞く。

「竜の戦い方?」

 グラナディスが首を振る。

「違う」

「竜が人間に教える戦い方じゃ」

 次の瞬間。

 グラナディスの拳が飛んだ。

 ドン!

 アリューが地面に転がる。

「ぐっ!」

 グラナディスが言う。

「遅い」

 シリューが飛び込む。

 しかし足払い。

 転倒。

 ユウが後ろから蹴る。

 グラナディスが軽く避ける。

「甘い」

 三人まとめて投げ飛ばされた。

 ワイバーンたちが見ている。

 アルフェリスが楽しそうに鳴く。

 グラナディスは笑った。

「いいか」

「人間は弱い」

「だから技術で戦う」

 そして拳を構える。

「竜より強くなるには」

「竜より賢く動け」

 三人は立ち上がる。

 汗だく。

 だが目は燃えていた。


 夜。

 家の中。

 テーブルの上には――

 料理。

 湯気の立つ肉料理。

 スープ。

 焼いたパン。

 ユウが目を輝かせる。

「すごい」

 シリューも驚く。

「これ全部……?」

 グラナディスが頷く。

「儂が作った」

 アリューが聞く。

「なんで?」

 グラナディスは普通に言った。

「暇だから」

 そして肉を食べながら言う。

「八百年生きとると」

「料理くらい出来る」

 ユウが笑う。

「ドラゴンすごい」

 グラナディスが少し嬉しそうに言った。

「もっと褒めていいぞ」

 三人は笑った。

 外ではワイバーンたちが眠っている。

 温泉の湯気が静かに上がる。

 こうして――

 アリューたちの新しい生活が始まった。

 朝と昼は学校。

 夕方から夜は竜の訓練。

 そして夜は竜の料理。

 竜と暮らす、少し変わった日常だった。



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