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赤翼のワイダー  作者: 忍絵 奉公


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第41話 青龍の咆哮


空を追ってきたハーピーの群れ。

三十体。

怒り狂った叫び声を上げながら、アリューたちへ突っ込んでくる。

その時だった。

青竜グラナディスが、ゆっくりと口を開いた。

巨大な顎。

牙が並ぶ暗い口の奥。

その口は――

五メートル以上も開いていた。

竜が息を吸う。

周囲の空気が震える。

そして次の瞬間。

青い咆哮が放たれた。

ゴォォォォォォッ!!

青い光の奔流。

雷のようでもあり、津波のようでもある。

それは一直線にハーピーの群れへ飛んだ。

触れた瞬間――

ハーピーたちは消えた。

爆発でもない。

炎でもない。

ただ――

霧になった。

三十体のハーピーが、一瞬で青い霧となって空へ散った。

羽すら残らない。

そこには何もなかった。

空が静かになる。

グラナディスは、まるで何事もなかったかのように首を傾げた。

「……ふむ」

そして不思議そうに言う。

「なぜハーピーが暴れとるんだ?」

アリューが苦笑した。

「あなたのおなら」

グラナディスが眉をひそめる。

「おなら?」

アリューが言い直す。

「……いや、魔素です」

ユウが小さく頷く。

「寝てる間に出てたやつ」

アリューが続けた。

「あなたの魔素が濃すぎて、周囲の魔物が凶暴化したんですよ」

グラナディスは少し考えた。

「……ほう」

腕を組む。

そして言う。

「たくさんおるのか?」

アリューが答える。

「はい」

「今、街で戦っています」

グラナディスは目を細めた。

少し申し訳なさそうな顔になる。

「それは……迷惑をかけたのう」

そして翼を軽く広げた。

「儂が行けば、皆おとなしく帰るじゃろうに」

ユウが言う。

「ほんと?」

グラナディスは笑った。

「魔物にも序列がある」

「竜が出れば、普通は逃げる」

アリューが肩をすくめる。

「じゃあ、お願いします」

グラナディスが頷いた。

「よかろう」

巨大な翼が広がる。

風が吹き荒れる。

「行くか」

アルフェリスと並び、青龍が空へ舞い上がった。

そして――

街へ向かう。


そのころ。

街の防衛線。

戦いは限界に近づいていた。

剣が重い。

腕が上がらない。

冒険者たちは息を切らしていた。

騎士団の盾もボロボロだった。

それでも魔物は来る。

ゴブリン。

オーク。

ウルフ。

倒しても倒しても終わらない。

地面には魔物の死体が山のように積み上がっていた。

その中で――

ブモーがまだ戦っていた。

「ブモォォ!!」

角でオークを吹き飛ばす。

だが体は傷だらけだった。

血が流れている。

それでも立っている。

その背後で、回復魔法の光が飛ぶ。

「ヒール!」

「まだ戦える!」

魔法使いたちが必死に回復をかける。

しかし魔力も限界だった。

ギルド長のパーティも戦っている。

斧が振り下ろされる。

ハーピーが落ちる。

だが息が荒い。

ギルド長が叫ぶ。

「まだ持つか!?」

仲間が答える。

「……あと少し!」

空では――

シリューとスノウェル。

ハーピーの群れの中で戦っていた。

剣が振られる。

一体落とす。

しかしすぐに次が来る。

スノウェルの翼にも傷が増えていた。

高度が下がる。

街の屋根が近い。

シリューの腕も震えていた。

息が荒い。

「まだ……」

剣を握る。

だが視界が揺れる。

疲労。

限界。

それでも言う。

「街を……守る」

しかしハーピーが三体、同時に襲いかかった。

スノウェルが避ける。

だがもう力が残っていない。

シリューが歯を食いしばる。

いよいよ限界だった。

その時――

空の遠くから影が現れた。

赤い影。

そして――

青い巨大な影。

誰かが空を指さす。

「……なんだ?」

兵士が呟く。

「竜……?」

その瞬間。

戦場の空気が変わった。


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