第39話 蒼き竜の目覚め
山の奥。
崩れた岩の向こう側で、巨大な影がゆっくりと動いた。
岩が砕ける。
重い音が響く。
そして――
青い鱗が現れた。
まるで宝石のようだった。
深い青。
夜空のような青。
そして、光を受けて淡く輝く。
それはまるで――
ラピスラズリのような美しさだった。
巨大な体が岩を押しのける。
翼が広がる。
山の半分ほどもある巨大な存在。
その目が、ゆっくりと開いた。
竜は大きくあくびをする。
「ふわぁぁぁ……」
口から白い息がこぼれた。
巨大な牙が並ぶ口で、のんびりと言う。
「ふわーわ……」
「よく寝たわ~」
ゆっくりと体を起こす。
岩が崩れる。
土煙が舞う。
その声は意外にも――
人の言葉だった。
竜は首を傾げる。
眠そうな目で周囲を見回した。
「ん?」
そして空に浮かぶ存在を見つける。
アルフェリス。
赤いワイバーン。
竜は少し目を細めた。
「なんじゃ……主らは?」
そして少し驚いたように目を開く。
「むむ」
「ワイバーンではないか!」
巨大な青竜は、のんびりとした声で言った。
「何しにきた?」
アリューとユウは、完全に固まっていた。
ユウが小声で言う。
「……ドラゴン?」
アリューが答える。
「たぶんな」
アルフェリスも警戒している。
しかし青い竜は敵意を見せていない。
むしろ――
寝ぼけている。
竜はゆっくり首をかいた。
「しかし……」
「ずいぶん寝た気がするのう」
首を伸ばし、空を見上げる。
「何年くらいじゃ?」
少し考えたあと、ぽつりと言う。
「八百年くらいか?」
ユウが目を丸くする。
「八百……」
その時。
青い竜の鼻がぴくっと動いた。
くんくんと空気を嗅ぐ。
「……む?」
竜の目が、ゆっくり細くなる。
「妙じゃな」
「匂いが減っとる」
「匂い?魔素?:
竜は周囲を見回す。
そして視線が止まる。
崩れた岩。
埋まった穴。
紫色の魔素が流れていた場所。
青竜は少し沈黙した。
そしてゆっくりアリューたちを見る。
「……主ら」
静かな声だった。
「ワシの寝床、壊したか?」
空気が一瞬で凍った。
ユウが小さく言う。
「……怒る?」
アリューは苦笑する。
「そりゃ怒るだろ」
青い竜は、ゆっくり翼を広げた。
巨大な影が山を覆う。
その時――
竜は急に大笑いした。
「ガハハハハ!」
山が震えるほどの笑い声。
「まあよい!屁をこいたら、あまりに臭くてな!ちょうど起きるタイミングだったし、起こしてくれてサンキューな!」
竜は楽しそうに言う。
「八百年も寝ておったら、そりゃ屁もでるわ!」
そして大きく伸びをした。
「むしろスッキリした!」
ユウがぽかんとする。
「……いいの?」
青竜は頷く。
「うむ!」
そしてアルフェリスを見て言った。
「それにしても……」
「久しぶりにワイバーンを見たのう」
竜は興味深そうに近づく。
アルフェリスは警戒して翼を震わせた。
青竜は笑う。
「安心せい」
「食わん」
「屁もこかん」
「もしかして、あなたのおならが魔素なんですか?」
ユウが聞く
「わはは、迷惑はかけんよ」
「いや、かなり迷惑なおならでしたよ」
とアリュー
そしてドラゴンはアリューたちを見る。
「主ら、名は?」
アリューが答える。
「アリュー」
ユウも言う。
「ユウ」
青竜は満足そうに頷いた。
「ワシは――」
巨大な翼が広がる。
青い鱗が太陽を反射する。
「青竜グラナディスじゃ」
その名が山に響いた。
しかしその時。
遠くの空から、甲高い叫び声が聞こえた。
ハーピーの群れ。
三十体。
怒り狂ってこちらへ向かってきていた。
ユウが振り返る。
「……あ」
アリューも見る。
「追いついたな」
青竜グラナディスは、その群れを見る。
そして、ものすごく面倒くさそうに言った。
「……朝から騒がしいのう」
ゆっくりと息を吸う。
次の瞬間。
青い光が口の中に集まった。




