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赤翼のワイダー  作者: 忍絵 奉公


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第36話 ワイバーン空戦


 街の警鐘が鳴り響いた瞬間、広場にいた人々は一斉に空を見上げた。

 森の上空から、黒い影がいくつも現れていた。

 翼。

 巨大な翼。

「……ワイバーンだ!」

 誰かが叫んだ。

 だが、アリューたちはすぐに違うと気づいた。

「あれは……ハーピー!」

 シリューが目を細める。

 鳥の翼を持つ人型の魔物。

 鋭い爪と狂暴な性格で知られる空の魔物だ。

 しかも数が多い。

 十体。

 いや、二十体以上。

「群れか……」

 アリューが剣を握った。

 その瞬間、三匹のワイバーンが翼を広げた。

 アルフェリスが唸る。

 スノウェルは低く羽ばたき、ブモーは重々しく地面を蹴った。

「行くぞ!」

 アリューの声と同時に、三匹は空へ飛び上がった。

 地面が一瞬で遠ざかる。

 冷たい風が顔を打ち、空気が鋭くなる。

 ハーピーの群れが甲高い叫び声を上げ、三人へ向かって突っ込んできた。

「来る!」

 ユウが弓を構える。

 爆発の魔石が光った。

 矢が放たれる。

 ドンッ!

 空中で爆発が起こり、ハーピーが一体吹き飛ぶ。

 しかし敵の数は多い。

 すぐに三体がユウへ襲いかかった。

 鋭い爪が振り下ろされる。

「危ない!」

 シリューが叫ぶ。

 しかし一瞬遅かった。

 ユウの肩に爪が食い込み、血が空中に散った。

「ぐっ……!」

 ブモーが怒りの咆哮を上げる。

 ハーピーを体当たりで弾き飛ばした。

 シリューはすぐに魔力を練る。

「回復!」

 緑の光がユウを包む。

 傷口がみるみる塞がっていく。

 ユウが驚いた顔をした。

「治った……!」

 しかし戦いは続いている。

 今度はアリューの方へ、巨大なハーピーが突っ込んできた。

 アルフェリスはトップスピードで加速する。

 だが空戦では、速すぎるのも問題だった。

 旋回する場所がない。

 死角から敵が突っ込んできた。

 鋭い爪がアリューの脇腹を裂いた。

「ぐあっ!」

 血が飛び散る。

 アルフェリスが怒りの咆哮を上げた。

 シリューはすぐに方向転換する。

 スノウェルは敏捷性が高い。

 くるりと空中で回り込み、アリューの側へ滑り込んだ。

「回復!」

 再び緑の光。

 アリューの傷が塞がっていく。

「助かった……!」

 しかし敵はまだ多い。

 ハーピーたちは空中を縦横無尽に飛び回り、三人を包囲していた。

「このままじゃ押し切られる!」

 ユウが叫ぶ。

 そのときシリューが言った。

「ユウ!」

「爆発矢を撃って!」

 ユウが頷く。

 弓を引く。

 爆発の魔石が輝く。

「いくよ!」

 矢が放たれた。

 しかしその矢は普通の軌道ではなかった。

 シリューが風魔法を放ったのだ。

「風よ!」

 矢が空中で曲がる。

 まるで生きているかのようにハーピーの群れへ突っ込んだ。

 次の瞬間――

 ドォン!!

 空中で爆発。

 二体のハーピーが吹き飛んだ。

「いける!」

 ユウが叫ぶ。

「もう一発!」

 再び矢。

 シリューの風がそれを導く。

 ドォン!!

 また一体撃破。

 そしてアリューが剣を掲げた。

「今度は俺だ!」

 剣に魔力が集中する。

 黄金の雷が弾けた。

 アルフェリスが一気に加速する。

 そして――

 バチィッ!!

 雷がハーピーに流れ込む。

 ハーピーは一瞬で痙攣し、そのまま空から落ちていった。

「よし!」

 三人の戦いに、リズムが生まれていた。

 ユウが撃つ。

 シリューが風で導く。

 爆発。

 そしてアリューが雷で仕留める。

 ユウの矢。

 シリューの風。

 アリューの雷。

 ワイバーンの翼が空を裂く。

 空中戦は、次第に三人の流れへと変わっていった。

 ハーピーたちは次々と撃ち落とされていく。

 やがて最後の一体が、恐怖に叫びながら森へ逃げていった。

 静寂。

 三人は空の中で息をついた。

 アリューが笑った。

「なんとか勝ったな」

 シリューも笑う。

「紙一重だった」

 ユウは空を見上げながら言った。

「でも……」

「ワイバーン空戦、楽しい」

 三匹のワイバーンが嬉しそうに鳴いた。

 その下では、街の人々が歓声を上げていた。

 しかし三人はまだ知らない。

 このハーピーの群れは――

 ただの前触れにすぎないことを。



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