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赤翼のワイダー  作者: 忍絵 奉公


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第35話 魔物が強くなる理由


 表彰式の翌朝。

 昨夜の祭りの余韻がまだ街に残っていた。

 広場には空になった酒樽が転がり、露店の跡には炭の匂いが残っている。

 しかし、街の外れに用意された新しい家の庭では、三匹のワイバーンが朝の光を浴びながら翼を伸ばしていた。

 アルフェリスは大きく羽ばたき、スノウェルは静かに羽を整え、ブモーは地面をどっしりと踏みしめている。

 庭の真ん中では、アリュー、シリュー、ユウが簡単な朝食を取っていた。

「いい家だな」

 アリューがパンをかじりながら言う。

「うん。庭も広いし」

 シリューが周囲の木々を見渡す。

 ユウは笑いながら言った。

「ワイバーンたちも嬉しそう」

 確かに三匹は機嫌がよさそうだった。

 そのとき、門の外から声が聞こえた。

「赤翼のワイバーンの皆さん! いらっしゃいますか!」

 ギルドの職員だった。

 三人は顔を見合わせ、門を開ける。

 職員は少し慌てた様子で言った。

「すぐ来てほしいんです。ギルド長が呼んでいます」

 三人は急いでギルドへ向かった。

 ワイバーンたちは空を飛び、三人はその背に乗る。

 街の人々は朝からその姿を見て歓声を上げた。

「赤翼のワイバーンだ!」

「今日も討伐か!」

 しかし三人は、そのままギルドの広場へ降り立った。

 ギルド長はすでに待っていた。

 表情は少し険しい。

「来てくれたか」

「どうしたんです?」

 アリューが聞く。

 ギルド長は机の上に地図を広げた。

 街の周囲の地形が描かれている。

 森、丘、川。

 そしてその一点を、指で叩いた。

「最近、この辺りで魔物の強さが急に上がっている」

 シリューが地図を覗き込む。

「森の奥ですね」

 ギルド長は頷いた。

「普通ならゴブリンやオーク程度の場所だ」

「だが最近は違う」

 職員が言った。

「オーガが現れました」

 ユウが目を丸くする。

「オーガ?」

 さらにギルド長が続ける。

「グリフォンも出ている」

 三人は思わず顔を見合わせた。

「……やっぱり」

 アリューが小さく言った。

 ギルド長が眉をひそめる。

「やっぱり?」

 シリューが静かに言う。

「来る途中で、僕たちも見ました」

「強い魔物が多かった」

 ユウも頷く。

「普通じゃない数でした」

 ギルド長は腕を組んだ。

「原因はおそらく一つだ」

 地図の森の奥を指差す。

「魔力の噴き出し口」

 三人は首をかしげた。

「噴き出し口?」

 ギルド長は説明した。

「地中から魔力が大量に湧き出す場所がある」

「そこでは魔物が異常に強くなる」

 職員が続ける。

「しかも魔物の数も増える」

 アリューが腕を組む。

「つまり……」

 シリューが言った。

「森の奥に原因がある」

 ユウは少しワクワクした顔をした。

「行ってみたい」

 ギルド長は真剣な表情で三人を見る。

「正直に言う」

「この街の討伐者では手に負えない」

「だから君たちに頼みたい」

 三人は黙った。

 窓の外では、三匹のワイバーンが翼を休めている。

 アルフェリスがゆっくり首を上げた。

 アリューは笑った。

「面白そうだな」

 シリューも頷く。

「調べてみよう」

 ユウは元気よく言った。

「魔物いっぱい倒せそう!」

 ギルド長はほっとしたように息を吐いた。

「ありがとう」

 しかしそのとき。

 ギルドの外から、大きな鐘の音が鳴り響いた。

 ゴォォォン!

 街の警鐘だった。

 職員が窓の外を見る。

 そして叫んだ。

「大変だ!」

「森から魔物の群れが出てきた!」

 ギルドの空気が一瞬で凍りついた。

 三人は顔を見合わせる。

 そして同時に笑った。

 アリューが剣を握る。

「ちょうどいい」

 シリューが魔力を練る。

 ユウが弓を構える。

 外では三匹のワイバーンが翼を広げていた。

 どうやら――

 原因の正体は、すぐに見つかりそうだった。



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