第6話:洞窟の卵と赤翼アルフェリス
翌朝、まだ空は薄暗く、山の稜線がかすかに赤く染まる頃、三人と赤翼アルフェリスは動き始めた。
空気は冷たく、息が白くなる。地下室で用意した簡単な食事を済ませ、赤い火を起こして身体を温めると、アリュウは地図をもう一度確認した。
目的地は、昨日確認したワイバーンの洞窟群。村から三百メートルほどの上方にある岩場だ。
初めはなだらかな斜面を登るだけで、三人とも問題なく歩を進めた。
シリューは小さな手で石を掴み、慎重に一歩ずつ登る。
ユウも兄の後ろについて同じように登っていく。
アルフェリスはアリュウの肩にちょこんと止まり、時折翼をばたつかせては風を切る音を響かせた。
しかし、山の中腹を過ぎるころから、道は険しくなった。
岩がごろごろと転がり、足場は不安定だ。
時折、頭上にある崖の割れ目に目をやると、いくつもの小さな洞窟が口を開けているのが見えた。
昼行性のワイバーンたちが、その洞窟から次々と羽ばたいて飛び立っていく。
赤や茶色、黒に近い色の翼が朝の光に反射し、まるで空に散らばる宝石のようだった。その光景に、アリュウは思わず息をのむ。
「すごい……」
ユウも口を開けたまま見上げる。
シリューも無言で岩場を見上げ、目が輝いていた。
だが、現実は厳しい。
洞窟に近づこうにも、手が届く距離ではない。岩の間隔は狭く、斜面は滑りやすく、簡単には登れなかった。
アリュウはため息をつく。
「……もう少し、大きくなるまで待つしかないか」
諦めかけたその瞬間、アルフェリスがアリュウの襟を咥え、強く引っ張った。
小さな身体に見えたが、翼の力は圧倒的で、風を切る音とともにアリュウは宙に浮かんだ。
「えっ!?」
シリューとユウは口を開け、目を見開いて見上げる。
アルフェリスは迷うことなく、洞窟のひとつに向かって羽ばたいた。
アリュウは必死にしがみつきながら、洞窟の口に近づく。
洞窟の中には、一つの卵が横たわっていた。
卵はおよそ三十センチほどで、まだ卵殻はつやつやと光っている。
アリュウは慎重に手を伸ばし、網を使って卵を包む。ロープをつけて、ゆっくりと下に降ろしていく。
「シリュー、受け取れ!」
叫ぶと、シリューは一歩下がって手を広げる。
ユウも後ろで支え、網をしっかりと掴む。卵はゆっくりと落ちていき、ギリギリのところでシリューの手に収まった。
小さな身体で抱きかかえながら、シリューはほっと息をつく。
「……大丈夫、セーフだ!」
アリュウはロープを引き上げ、アルフェリスを褒めるように撫でた。
しかし、アルフェリスは満足そうにしなかった。
再びアリュウの襟を咥え、より高い洞窟の方向に飛び去る。
アリュウはもう少しで落ちそうになるが、しっかりと掴んで飛ぶ。
「よし、もうすぐだ!」
卵を回収し、ロープで慎重に降ろす。
しかし最後の洞窟では、ロープがあと十メートルほど足りなかった。アリュウは口を開けて叫ぶ。
「シリュー!ユウ!受け止めろ!」
二人は声を合わせて「いいよ!」と返事をする。
網がゆらゆらと揺れる。卵が落ちる寸前、シリューが飛びつき、ユウが補助する。
ギリギリのところで卵は地面に落ちず、無事に確保された。
三人と一頭は大きく息をつく。
アルフェリスは翼をばたつかせ、満足そうにアリュウの肩に戻った。
「……やれやれ」
アリュウは汗を拭き、網に入った卵をそっと抱えた。
シリューとユウも顔をほころばせる。
小さな手で卵を抱えたその瞬間、三人は初めて、未来への小さな希望を感じた。
岩場の上空には、まだ飛び立つワイバーンの影がいくつも見える。
赤い翼、茶色の翼、光を受けてきらめく小さな生命。
アリュウはそれを見上げながら、決意を新たにした。
「父さんも……きっと生きてる。絶対に見つける」
決して小さいとは言えない卵を抱え、三人は慎重に山を下り始めた。
その上空を、赤翼アルフェリスが守るように旋回している。心の奥に、少しずつ勇気が芽生えているのを感じながら――。
本作品。私の中では自信作なのに、アルファポリスで視聴率があまり高くないんです。
だから、小説家になろうで、連載開始する事にしました。
こちらでも人気がないのか試したいところです。
よろしくお願いします。




