第25話:巨斧の隙
オーガリーダーが突進してきた。
ドォン!!
地面が震えるほどの勢い。
アリュウは身構えた。
だが――
(……遅い?)
確かに突進は速い。
しかし、そのあとが妙だった。
巨大な戦斧を持ち上げる動作が、やけに遅い。
まるで重い岩を持ち上げているようだ。
(油断させてるのか?)
アリュウは一瞬そう思った。
だが、とりあえず避ける。
スッ
ほんの一歩横に動いただけだった。
次の瞬間――
ズガァン!!
戦斧が地面に突き刺さった。
土と石が飛び散る。
もし当たっていたら、人間など跡形もないだろう。
だが問題はそこではなかった。
オーガリーダーは戦斧を抜こうとしている。
しかし――
「グ……グォ……」
必死だ。
筋肉を震わせながら、ようやく引き抜く。
ズズズ……
そしてまた重そうに持ち上げる。
ゆっくり。
とてもゆっくり。
頭上高く振りかぶった。
(……遅すぎる)
アリュウは思った。
あまりにも一撃必殺すぎて、動きが大きすぎる。
つまり――
隙だらけ。
二撃目が来る。
ブォォン!!
空気を裂いて戦斧が落ちた。
アリュウはまたワンステップ。
スッ
それだけで避けられた。
ズガァァン!!
再び地面が砕ける。
その瞬間――
周囲のオーガたちがざわめいた。
「グオォ……!」
「ボグラ……!?」
信じられないという顔。
そして次の瞬間――
歓声が上がった。
「グラァァ!!」
「ボグラーデ!!」
どうやら、アリュウの動きを称えているらしい。
勇敢な戦いを見て興奮しているのだ。
アリュウは小さく息を吐いた。
(……もういいかな)
そう思った。
オーガリーダーが三撃目を振りかぶる。
巨大な斧が持ち上がる。
その瞬間。
アリュウは踏み込んだ。
シュッ
一閃。
刀が走る。
スパッ
オーガの太腿を斬った。
だが――
(硬い!)
筋肉が分厚すぎる。
刃は深く入らなかった。
皮一枚ほど。
しかし――
血が出た。
次の瞬間。
ドクン。
太い血管が裂けたのだろう。
ドバァッ
血が吹き出した。
オーガの太腿から、赤い血が流れる。
まるで――
川のように。
それでもオーガリーダーは気づいていない。
まだ戦斧を持ち上げている。
ゆっくり。
ゆっくり。
(この速度なら……)
アリュウは計算した。
(持ち上げてる間に)
三十回は斬れる。
オーガの太腿から、血が流れ続けていた。




