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赤翼のワイダー  作者: 忍絵 奉公


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第20話:旅立ち ― 空へ


 朝の空気は冷たく澄んでいた。

 山の村の空には、ゆっくりと秋の雲が流れている。

 村の広場には、多くの老人たちが集まっていた。

 普段は静かなこの村が、今日はどこか落ち着かない。

 アリュウ、シリュー、ユウ。

 三人の旅立ちの日だった。

 村長が静かに言う。

「本当に行くのじゃな……」

 アリュウは頷いた。

「はい。父を探します」

 老人たちは互いに顔を見合わせる。

 寂しさはある。だが、その目にはどこか誇らしさもあった。

「お前たちは、この村の誇りじゃ」

 村長はそう言って、ゆっくりと背を叩いた。

 老人たちは次々に三人の前にやってきた。

 干し肉。

 干し果物。

 固焼きパン。

 保存野菜。

「持っていけ」

「旅は長いぞ」

 気づけば三人のリュックサックは、食料でいっぱいになっていた。

 ユウが笑う。

「重すぎるよ!」

 シリューも笑った。

「でも、うれしいね」

 その時だった。

 ザックルがゆっくりと現れた。

 杖をつきながら三人の前に立つ。

 少しの沈黙。

 そして、ぶっきらぼうに言った。

「……二度と帰ってくるな」

 三人は一瞬、固まった。

 だがザックルは続ける。

「帰る場所など作るな」

「鍛錬を怠るな」

「わしを越えろ」

 そして少しだけ声を低くした。

「父親を連れて帰ってこい」

 三人は顔を見合わせる。

 ザックルはそっぽを向いた。

「それまで……顔を見せるな」

 その声には、隠しきれない優しさが混ざっていた。

 アリュウは深く頭を下げた。

「ありがとう、師匠」

 シリューとユウも続く。

「ありがとうございました!」

 ザックルは小さく鼻を鳴らした。

 その時、空から影が降りてくる。

 アルフェリス。

 ブモー。

 スノウィル。

 三匹のワイバーンが広場に舞い降りた。

 翼が大きく広がる。

 村人たちは歓声を上げた。

 三人はそれぞれの相棒の背に乗る。

 アリュウはアルフェリスへ。

 シリューはスノウィルへ。

 ユウはブモーへ。

 ワイバーンたちは誇らしげに翼を広げた。

 アリュウが空を見上げる。

「……行こう」

 三人は同時に声を上げた。

「出発!」

 翼が大きく羽ばたく。

 ドォンッ!

 強い風が広場を吹き抜けた。

 アルフェリスが空へ舞い上がる。

 ブモーがそれに続く。

 スノウィルも軽やかに飛び上がった。

 村人たちは手を振る。

「達者でな!」

「元気での!」

「英雄になれ!」

 ザックルは腕を組み、空を見上げていた。

 三匹のワイバーンはぐんぐん高度を上げる。

 村はどんどん小さくなる。

 やがて山々の上へと飛び出した。

 無限に広がる空。

 未知の世界。

 アリュウは呟く。

「父さん……待っててくれ」

 三人と三匹は、大空へと飛び立った。

 新しい冒険が、今始まる。



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