第19話:師弟の契りと旅立ちの決意
それからおよそ一か月。
三人は毎日、ザックルのもとで魔力修行を続けていた。
朝は呼吸と瞑想。
昼は魔石の制御。
夜は戦闘訓練。
池での無呼吸修行も続け、剣、弓、魔石の扱いは見違えるほど洗練されていた。
三人の体から発せられる魔力の流れは、以前とは比べものにならないほど安定している。
そんなある日、アリュウがふと口にした。
「師匠、次は何を教えてくれる?」
ザックルは眉をひそめた。
「何度も言うが、わしは師匠ではない。弟子も取らん」
それでも三人はやめない。
「師匠」
「師匠」
「師匠」
毎日のように呼び続けた。
ある日、ザックルが訓練の最中に言った。
「よし、そこまでじゃ。今日はここまでにするぞ、弟子たちよ――」
言った瞬間、ザックルは固まった。
三人は一斉に顔を上げた。
「今、弟子って言ったよね?」
「聞いた!」
「言った!」
ザックルは咳払いをする。
「……う、うむ」
少しだけ空を見上げ、やがてため息をついた。
「仕方ないのう。ここまでしつこい弟子志願ははじめてじゃ」
ザックルは笑いながら、杖を地面に突いた。
「正式な儀式をする」
その日の夕方、村の広場で小さな儀式が行われた。
村長や老人たちも集まり、静かに見守る。
焚き火が灯り、秋の空気の中で炎が揺れる。
ザックルは三つの小さな魔法陣を地面に描いた。
「魔法使いの主従関係の儀式じゃ」
三人は魔法陣の中に立つ。
ザックルは杖を掲げ、低い声で呪文を唱えた。
魔石が共鳴し、淡い光が広がる。
「今日よりお前たちは、わしザックルの弟子」
光が強くなる。
「魔力の道を共に歩む者として認める」
三人の胸の魔石が同時に輝いた。
儀式が終わると、村長たちが拍手を送った。
「立派じゃ…」
「ザックルの弟子とはのう…」
老人たちは誇らしそうに三人を見る。
その後、ザックルは三人の魔力を確かめた。
しばらく観察し、ゆっくり頷く。
「ふむ……」
アリュウが聞く。
「どう?」
ザックルは静かに言った。
「お前たちの魔力効率は、ほぼ十割に近い」
三人は顔を見合わせて喜ぶ。
だがザックルは首を振った。
「じゃが、わしの基準ではまだ七割じゃ」
「ええ!?」
「魔力の道は深い。慢心するな」
ザックルは少しだけ笑った。
「だがな……」
三人を見る目が、少し誇らしげになる。
「今のお前たちは、王国の将軍クラスの実力に匹敵するじゃろう」
その言葉に、村人たちがどよめく。
王国の将軍。
それは、この国で最強クラスの戦士たちだ。
その夜。
三人はザックルの家の前で空を見上げていた。
アリュウが言う。
「……そろそろ行くか」
シリューが頷く。
「うん」
ユウも静かに言った。
「父さんを探さなきゃ」
三人の目的は最初から決まっていた。
父を探すこと。
真実を知ること。
そして――
この世界をもっと知ること。
アルフェリスが空から降りてくる。
ブモーとスノウィルも並ぶ。
三人は立ち上がった。
旅立ちの時が来たのだった。




