第60話:二人で
長い間投稿を止めてしまい申し訳ありませんでした。私生活に変化があり忙しく、その影響もあり体調を崩していました。これからもゆっくりと投稿していきます。どうぞよろしくお願いします。
今日は先輩とお付き合いしてから初めて二人でお出かけ。
とりあえず昨日借りたTシャツを返して、忘れた髪飾りを取りに先輩の家に向かった。
「おはようございます。」
「おはよ〜。上がって。」
先輩はパジャマ姿で出迎えてくれた。
お邪魔します。と言って先輩の部屋に入った。先輩はドアを閉めるとすぐに私に抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと先輩...」
「紗凪。」
「紗凪さん...いきなりは恥ずかしいです...」
先輩のことを名前で呼ぶのはかなり恥ずかしい。先輩は二人のときだけでいいと言ってくれるけど、どんな場所でも恥ずかしいものは恥ずかしい。
「昨日はありがとうございました。」
紙袋に入れたTシャツを渡す。私が忘れた髪飾りを受け取って一旦座った。
「どこ行くんですか?」
「ん〜...決めてないけど、その...は、初デートだし?ちゃんと二人で決めたいというか...」
先輩のこんな顔初めて見た。目線がちょろちょろしてて、頬や耳が少し赤く染まっている。私だけだと思ってたけど先輩も恥ずかしいんだ。そう思うとなんだか余裕が出てきた。
「紗凪さん。私、二人きりならどこでも嬉しいですよ。」
「じゃ、じゃあ...とりあえず出かける?目的とか決めずに二人でのんびり歩きたい。」
「そうしましょうか。」
着替えるから先にリビングに行くよう言われた。リビングの床にぽんちゃんが落ちている。私のことを見るなり体を捩りだした。撫でていいのかな?
「失礼します...」
ぽんちゃんの背中を優しく撫でる。気持ちよさそう?に体を捻っている。
ぽんちゃんを撫でていたら着替えた先輩がリビングに入ってきた。
「お待たせ。あ、ぽんちゃん。撫でてもらってたの?」
先輩もしゃがんでぽんちゃんを撫でる。
「恵那ちゃんは私の恋人なんだ。」
「せ、先輩?!」
ぽんちゃんに言った?今この人ぽんちゃんに言った?
「あ、まだお父さんとお母さんには言ってないから安心してね。恵那ちゃんが良いって言ってくれたときに言うから。」
「そういう問題じゃなくて...」
ぽんちゃんを撫でていた手を止めて立ち上がる。
「私は、二人のペースでゆっくり進みたいです。」
先輩も立ち上がって玄関へ向かった。
「手は?外で手繋ぐの。」
外で手を繋ぐ。私が密かに抱いていた夢。それが今叶おうとしている。この好機を逃していいのか。
「どうしてもって言うなら...」
靴を履いて外に出るとそっと指を絡めてきた。たぶん船の甲板以来。
私の方からも少し握り返す。あのときは出来なかったこと。
二人の間にぎこちない距離が空きながらも、手を繋いで歩いている。20分くらい歩くと商店街に着いた。
「紗凪さん、どうします?何か見たいお店とかありますか。」
「え?あ、ごめん聞いてなかった。なんか嬉しくてつい気が散るというか上の空になっちゃうというか。」
「早く慣れてくださいよ?これからもずっとこうなんですから。」
歩き出そうとすると先輩が固まっている。その姿を見て今自分が何を言ったのかようやく理解した。
「そ、その!変な意味じゃなくて!せめて高校の間だけでもという意味で...」
「恵那ちゃん。私はずっとでもいいよ。」
私が固まっているのを横目に先輩も歩きだした。慌てて追いかけるが先輩の赤い耳が短い髪では隠しきれていないのが見えた。




