第42話:絶対できる
結奈視点です。
夏真っ盛りの朝。今日は空気が澄んでいる。コンディションもバッチリ。絶対良い結果が出せる。
「行ってきます。」
荷物を持って自転車に乗る。試合のある体育館まで走る。着いたのは私が一番最初だった。入り口で先輩方や先生を待つ。徐々に人が増えてきた。全員揃ったタイミングでミーティングが始まる。私にとっては初スタメン。ミーティング内で改めてスタメン発表のとき名前が呼ばれ気分が奮い立たされる。
ミーティング後にアップをして休憩する。徐々に観客席に人が入ってきた。多分どこかに恵那もいる。恵那をこっそり探しながら水を飲んだ。
「山本さんスタメンじゃん。頑張ってね。」
「真夏先輩!ありがとうございます。」
真夏先輩にも励まされたし、恵那も見てるはずだから絶対できる。絶対かっこいいとこ見せて夏祭り誘うんだ。
ティップオフが行われて試合が始まる。相手にボールは取られたが、先輩がすぐ取り返してシュートを決めた。すぐに切り返してボールを奪いに行く。相手のシュートをすんでのところでリバウンドを決めて先輩にパスする。先輩が繋いでくれてまた点が入った。相手のスタメンは2、3年生ばっかりで、こっちも1年生は私だけ。それでも喰らいつけてる。練習の甲斐があった。相手のミスによるこぼれ球を取ってそのままシュート。決まった。初めて対外試合で3ポイントシュート決まった。第一クォーター終了のブザーが鳴る。一度コートから出て水を飲む。
「シュート決まったじゃん。」
「はい。でもまだまだこれからです。」
第二クォーター開始。やっぱり先輩達はすごい。連携やパス回し、ドリブルが私とはレベルが違う。相手を置いて行ってる。私も必死でついていってパスを出したりシュートを打つ。ミスも先輩にカバーしてもらいながら走り回っている。リバウンドは得意。第一、第二クォーターだけで7回リバウンドできた。シュートはあまり決まっていないけど、失点を減らすという部分では貢献できたと思う。ハーフタイム中に第三クォーターから交代すると言われた。前半だけだけどよくできたと思う。もちろんまだまだな部分もあった。
「お疲れ〜。どうだった?」
「まだできたと思います。シュートも、それ以外の細かいプレーも。」
「リバウンド7回はすごいよ。何回も相手のプレーの流れ切ってたし。」
「ありがとうございます。真夏先輩も次から出るんですよね。頑張ってください。」
「ありがと。」
タオルを首から下げて試合を見ている。試合に出ていない間は常に声を出して先輩方を鼓舞する。一つ一つのプレーを見てなんとか技を盗みながらやっていかないといけない。第三クォーターも終わった。第四クォーターからまた出場する。追いかける展開ではあるが点差はわずか2点。シュート一本で逆転可能な点差だ。
クォーター間のインターバルに準備していると客席に恵那の姿を見つけた。ちゃんと来てくれてる。私は頬を両手でぱちんと叩いて気合いを入れ直した。第四クォーターが始まってすぐ3ポイントシュートを入れられて点差が広がる。切り替えてすぐシュートを返した。まだ2点差。食らいつかなきゃいけない。リバウンド決まった。
「真夏先輩!」
真夏先輩がしっかりシュートを決めて逆転。そのまま逃げ切って試合終了。私も追加点のシュート入れたし、チームも勝って良かった。
試合後のミーティングと片付け、着替えを終えて真夏先輩と歩いていた。
「今日いつもより何倍も気合い入ってたじゃん。」
「好きな子来てたんで。」
「いつも言ってる子?」
「なんでわかるんですか!?」
真夏先輩はニヤニヤしている。
「名前は言ってないのにな〜」
やられた。完全に真夏先輩のペースに乗せられた。体育館から出ると自販機の横の屋根付きのバス停に恵那が座っていた。
「結奈ちゃん、お疲れ様。あ、先輩もお疲れ様です。」
真夏先輩は私のことは気にしないでと言って先に帰ってしまった。
「恵那、来てくれてありがとね。」
「うん。結奈ちゃんすごいかっこよかったよ。」
私はその一言で胸がいっぱいになった。抱きしめたい衝動に駆られたがさすがに外だしやめておいた。
「恵那、夏祭り一緒に行かない?」
「良いよ。初日?」
なんか思っていたよりポンポン物事が進む。
「うん。浴衣着ようね。髪もやらせて。」
「うん。」
そのまま二人で自転車で家まで帰った。夕日に照らされながら。




