第35話:私を繋ぐ本
結奈ちゃんが本を買って戻ってきた。
「はい、ちょっと早いけど誕生日プレゼント。」
「ありがとう。嬉しいけどなんで今?」
「恵那の誕生日と試合の日が近いからね。ちょっとピリついちゃうかもだし、なかなか時間作って渡すっていうのも難しいだろうから。遅れるよりマシかなって。」
そういうことだったのか。今まで友達に誕生日プレゼントをもらうことがなかったからなんだかすごく新鮮な気持ちだ。
「ありがとう。大事に読むよ。」
私がそういうと結奈ちゃんは嬉しそうにぱっと笑った。
貰った本を持って歩き出す。すごく気持ちがウキウキしている。結奈ちゃんは誕生日プレゼントをあげあうイベントを何回も経験しているのだろうか。
「恵那、その本読み終わったら私にも読ませてね。一緒に感想言い合おう。」
「うん。試合終わってからの方が良い?」
「恵那がどのくらいで読み終わるかによるけど…」
「じゃあ試合終わってから渡すね。まずは試合の準備に集中してほしい。応援、してるから。」
結奈ちゃんはまた嬉しそうに笑った。結奈ちゃんは普段の教室でもずっと笑顔だ。私は大体の時間を結奈ちゃんと一緒に過ごしているから、誰にでも笑顔を見せるタイプだと知ってる。結奈ちゃんはそういうとこが良いところなのだろう。先輩も、私の知っている範囲では誰とでも話せる。二人とも私に無いものがある。
「絶対恵那にかっこいいとこ見せるから。」
「楽しみ。応援行くからね。」
次はどこに行こうか考えながら歩いていると結奈ちゃんのお腹が鳴った。
「あ…お腹空いちゃった。」
「もうお昼過ぎだもんね。ご飯にしよっか。」
二人でフードコートに向かった。いつも行っているファストフード店で食べることになった。私はいつも通りチキンが挟まれたハンバーガーを、結奈ちゃんはレモンソースが白身魚のフライにかかっているハンバーガーを注文した。
「そんなのあったっけ。」
「この前発売された新作なんだよ。気になってたからあって良かった〜。」
周りの喧騒を聞きながらハンバーガーを食べるのも結構好きだ。考え事がまとまっていく気がする。
「恵那、一口食べる?さっぱりしてて美味しいよ?」
「いいの?じゃあもらおうかな。」
私はハンバーガーを受け取ろうとしたが結奈ちゃんは渡してくれない。
「せっかくだしあーんさせてよ。」
「恥ずかしいんだけど…」
「いいじゃん。こんな端っこの席誰も気にしないよ。」
それはそうだろうけど。それよりも私はこんな公共の場でイチャつくカップルみたいなことはあまりしたくない。でも本のこともあるし、ここは断るべきではないだろう。私は口を開けた。
「はい…はやく。」
結奈ちゃんが満足そうな顔で私の口にハンバーガーを入れてきた。
「美味しい。」
「でしょでしょ〜。私これ結構好き。」
口の周りにソースが少しついてしまった。それを拭いてハンバーガーを食べ終わる。
二人とも食べ終わってそのあとも服とか雑貨とかをいろいろ見て回った。気がつけば日が傾いている。
「そろそろ帰ろっか。電車の時間もあるし。」
「そうだね。結奈ちゃん荷物重くない?いくつか持とうか?」
私の提案に結奈ちゃんは首を左右に振った。
「気持ちは嬉しいけど遠慮しとく。これくらい持てないとバスケできないから。」
改札を抜けて駅のホームに出る。すぐに電車がやってきた。幸いそこまで混んでいない。空席も多く座るには十分だった。
電車に揺られているとなんだか眠たくなってきた。
「恵那、私起こしてあげるから寝てて大丈夫だよ?」
「ほんと?じゃあそうしようかな。」
私は結奈ちゃんの肩に頭をこてんと預けて眠りについた。
約30分後、電車が駅についたところで目が覚めた。結奈ちゃんはなぜか目を合わせてくれない。
「じゃあ、また明日ね。ありがとう。」
「うん。また明日。」
駅前で別れてそれぞれの家へ自転車で走り出した。




