第34話:触れるとき
ペンギンの小物の目の前で結奈ちゃんと私の手が触れ合う。結奈ちゃんはすぐに手を引いてしまった。
「ご、ごめん…」
「気にしないで。ていうかいつも私の手触ってるじゃん。」
結奈ちゃんは焦ったように手をぶんぶん振る。
「いつもは…その、準備ができてるからいけるだけであって…今回みたいに急に触れるとびっくりしちゃうといいますか…」
別に普段となにが違うのか私にはよくわからない。別に結奈ちゃんと手が触れ合うのは嫌じゃないし、最近は慣れてしまって全く気にならなくなった。
「このペンギン、二人とも可愛いって思ったんだし、これは決定でいいんじゃない?」
そう言ってペンギンを結奈ちゃんに渡した。
「そ、そうだね、喜ぶと思うよ。」
お会計を済ませてお店を出る。ふと足元を見ると視界の端にそわそわしている結奈ちゃんの手が映った。
「結奈ちゃん?そんなにそわそわしてどうしたの?」
「…………」
なにか言っていたが周りの音にかき消されて聞こえなかった。
「結奈ちゃんごめんよく聞こえ―――」
「次どのお店行く??」
私の言葉に結奈ちゃんが勢いよく被せてきた。多分結奈ちゃんも私の反応を見てさっきの言葉が聞こえなかったことを察したのだろう。
「まだ妹さんへのプレゼント探すんでしょ。結奈ちゃんの行きたいとこ行こうよ。」
「うん。ありがとう。」
そう言って結奈ちゃんが歩き出した。だが次の瞬間結奈ちゃんが躓いて転びそうになる。
「危なかった…」
私が咄嗟に手を伸ばしてなんとか転ばずに済んだ。
(結奈ちゃんお腹周り細すぎない…?)
「…な、恵那。」
「あ、ごめん。」
後ろから結奈ちゃんを抱き寄せる姿勢になっていた。結奈ちゃんの耳が赤くなっている。これは流石に私も恥ずかしい。
ゆっくり離れてお互い服の乱れを直す。
「大丈夫?この床つまずきやすいもんね。」
「うん、大丈夫。ありがと…」
まだ結奈ちゃんは顔が赤い。事故とはいえ、結構人がいるところで後ろから抱きついてしまったのだ。申し訳ない。そりゃ恥ずかしいだろう。
「……」
こういうとき何を言えばいいのか私にはわからない。気まずい沈黙が流れている。
(こういうとき結奈ちゃんなら…。あ、そうだ。)
私は結奈ちゃんのほっぺたを優しくつついた。結奈ちゃんが状況を読み込めない顔でこちらを見てくる。
「あ…えっと、普段よくほっぺたつついてくるから…なんかこういうときはそうしたほうが良いのかなって…」
結奈ちゃんは吹き出して笑った。
「恵那ったらほんとそういうとこ可愛い!」
「え?」
「ありがと。私が黙っちゃったから和ませようとしてくれたんでしょ?」
結奈ちゃんは元気よく次のお店の方は歩き出した。
「ほら早く!次のとこ行くよ〜!」
待ってよ〜。と慌てて追いかける。よくわからないがほっぺたをつつくのはうまくいったようだ。
お店を2、3軒回ってプレゼントを揃えた。
「恵那はなにか欲しいものないの?」
「ん〜。本は買いたいかも。」
最近また読書熱が自分の中で高まっている。高校に入ってから生活リズムが少し変わったせいでなかなか時間がなかったが、今の生活に慣れてきてまた本を読むようになった。
「恵那読書好きなの?」
「うん。楽しいよ?いろんなこと知れて。」
「私はあんまり読まないからな〜。」
「読みやすい本貸そうか?誰かと感想言い合うのとかやってみたいし。」
結奈ちゃんの表情が一瞬明るくなる。
「それなら読んでみようかな…」
「じゃあ明日学校で渡すよ。」
そんなことを言いながら歩いているといつのまにか本屋さんに着いていた。行きつけ、というほどではないがよく来る本屋さん。ある程度どこにどんな本があるかは把握している。
「ほら、これとか読みやすいと思うよ。」
私は本屋大賞のところにある本を手に取る。一度読んでみたいと思っていた本だ。一週間もあれば読めるし即決でもいいくらいだ。
「恵那、そろそろ誕生日だったよね?」
「そろそろって言ってもあと半月くらいあるけど。」
結奈ちゃんは私が見ていた本を持ってレジの方へ消えていった。




