第33話:贈り物
日曜日。私はすっかり元気になった。結奈ちゃんと遊びに行くために休日にしては早く起きた。朝ごはんを食べて顔を洗って歯を磨く。髪は結奈ちゃんにやってもらうから、櫛で梳くだけにした。白のTシャツにオーバーオールを着て自転車に乗る。待ち合わせの駅までは15分もしないくらいの距離だ。
私が駅に着いたときには結奈ちゃんが既に到着していた。
「おはよう。待たせちゃった?」
「ううん、私も今来たとこ。ほらそこのベンチに座って?髪セットしてあげるから。」
私は結奈ちゃんが指差したベンチに座る。結奈ちゃんはいつも通り丁寧に髪を櫛で梳いてから髪を触り始める。
「今日は結奈ちゃんの1番好きな髪型にしてよ。」
「じゃあ……ハーフアップにしよっか。あれ、私の中で1番うまくできたから。」
「うん。お願い。」
結奈ちゃんはテンポ良く私の髪型を作っていく。家でこっそりやってみたけど、自分ではうまくできなかったから結奈ちゃんはすごく上手なのだろう。
そんなことを考えていたらハーフアップが完成していた。
「できたよ。今日もばっちり。可愛い。」
「ありがとう。じゃあ行こっか。」
駅の中に入り改札を通る。今日は近くのホールでアーティストのライブがあるらしいから人がいつもより多い。
「人いっぱいだね。」
「うん。恵那、ちゃんと付いてきてよ?」
わかっているけど、何度も私と結奈ちゃんの間の隙間を人が通って分断されそうになる。なんとか人混みを抜けてエスカレーターを登りホームに出る。
ホームの椅子に座って電車を待つ。結奈ちゃんがスマホで行きたいお店を見せてくれた。私がよく見ようとして顔を近づけたら結奈ちゃんが顔を離すのはよくわからないけど。
「雑貨屋さんも結構あるんだね。最後にそのショッピングモール行ったのだいぶ前だから結構変わってる。」
「うん。妹の誕生日プレゼント買いたいからいっぱい選択肢あってありがたいよ。」
「妹さん誕生日近いの?」
「来週の水曜日なんだ。」
優は誕生日には毎年私が作ったご飯を食べたいと言うからなにかプレゼントをあげたことはない。私が中2で優が小6のときプレゼントをあげようとしたけど、私のご飯が良いと断られた。お父さんとお母さんからはプレゼントを貰っているから、少し遠慮しているのだろうか。
そんなことを考えていると電車が来た。電車はそこそこ混んでいる。空いている席を見つけたが一人分のスペースしかない。
「結奈ちゃん座りなよ。私立ってるから。」
「大丈夫だよ。恵那座りな?」
私が座ることになった。結奈ちゃんは背が高いから、座って下から見上げるとかなり高く見える。
3駅進んだところで隣が空いた。そこに結奈ちゃんが座る。混んでいるから仕方がないけれど、お互いの肩が触れ合う。全然気が付かなかったけれど、今日の結奈ちゃんはなんだか少し良い匂いがする。結奈ちゃんは私と顔を合わせてくれない。最近ずっと体が触れ合う距離にいると目が合わない。別に嫌われているわけではなさそうなのに。
「着いたよ。行こ。」
立ち上がった結奈ちゃんに手を引かれて電車を降りた。駅の改札を抜けて少し歩くと目的のショッピングモールに到着した。まずは結奈ちゃんの妹への誕生日プレゼントを探すことになった。
「恵那は弟がいるんだっけ。どんな子なの?」
「優は明るくてスポーツ好きだよ。あとみんなのまとめ役って感じ。」
「しっかりしてるんだね。」
少し歩くと雑貨屋さんが見えてきた。可愛い小物からよくわからないものまで種類が豊富だ。これは悩む。
「好きな動物とかあるの?」
「うさぎとペンギンが好きだから、そのどっちかの雑貨あげると喜ぶと思う。」
うさぎとペンギン、どちらも可愛い動物の代名詞のような生き物だ。私は注意深くうさぎとペンギンを探す。
「あ、このペンギン可愛い。」
結奈ちゃんと同じものを同じタイミングで見つけた。二人の伸ばした手がペンギンの目の前で不意に触れ合う。




