第31話:3人での昼休み
結局結奈ちゃんがパンを買いに行くのに着いていった。結奈ちゃんはいつも焼きそばパンと白あんぱん、アップルパイを買って、あと1つその日の気分で買っている。白あんぱんを一口貰ったことがあるけど、思っていたより美味しかった。
「恵那、私が買うジュース当ててみてよ。」
自販機の前に立った結奈ちゃんが私の方を見て言った。自販機は4台。その中でラインナップが被っているのは水と缶コーヒーくらいで、あとはそれぞれの自販機にしかないものばかりだ。ジュースはいつも違うものを買っているからほんとうにわからない。
「これ?」
私は左から3番目の自販機の乳酸菌系飲料を指差した。
「あたり〜。」
結奈ちゃんはその飲み物を買った。私が好きな飲み物を指差しただけなのに、正解してしまった。
「行こ。」
そう言うと結奈ちゃんは手を差し出してきた。
「え?」
私は何を意味するのかわからず差し出された手を見ている。
「人多いから、はぐれないように。」
私は結奈ちゃんの手を取った。私より大きい手。それでも指は細くて、柔らかい。
「恵那、今日のお弁当なに?」
結奈ちゃんは別の方向を見たまま聞いてくる。
「今日は鯖の塩焼きと、コールスローサラダと卵焼き。」
「毎朝作ってるんだっけ。すごいよね。」
「鯖の塩焼きは昨日の残りだから。朝は卵焼きとサラダだけだよ。」
階段に差し掛かったところで結奈ちゃんは手を離してきた。ちょっと恥ずかしがっているのが手に取るようにわかる。
「結奈ちゃん、もしかして照れてる?」
私はちょっとだけ意地悪してみたくなった。普段はそんなことしたいとも思わないけれど、今の結奈ちゃんにはなぜかやってみたい。
「別にそんなことないもん…」
少しだけ耳が赤くなっている。本人は髪で隠そうとしているが、短い髪だとそうも行かない。
廊下で先輩とすれ違う。
「恵那ちゃん、結奈ちゃん。購買にでも行ってたの?」
「はい。先輩はどうしたんですか?」
「私はちょっと先生に手伝い頼まれて職員室に行ってた。二人とも今からご飯?」
結奈ちゃんが私の制服の裾をきゅっと握っている。この二人そんなに仲悪かったっけ。
「はい。先輩も今からですか?」
「うん。良ければ三人で食べない?」
私はちらっと結奈ちゃんの方を見た。結奈ちゃんはどちらでもいいという顔をしている。
「じゃあ一緒に食べましょう。先輩の教室行きますね。私お弁当取ってきます。」
そう言うと一旦先輩と別れて自分の教室に向かう。お弁当を持って結奈ちゃんと一緒に先輩の教室へ向かった。
廊下を歩いているときに結奈ちゃんに話しかける。
「結奈ちゃんどうしたの?元気ない?」
「い、いやー…なんか紗凪さんの前だとちょっと緊張しちゃって…」
「そう?優しくて話やすい人だと思うけど。あ、結奈ちゃんが落ち着かないならご飯無理して先輩と食べなくても…」
「いや、恵那と食べたいから大丈夫。それに紗凪さんとも仲良くしたいし。」
私はそう?と返事をして先輩の教室に入った。窓側の席で日の光を浴びながら座っている。神秘的な雰囲気を纏っていて、なんだかとても眩しい。
「先輩。お待たせしました。」
結奈ちゃんはさっきからずっと私の制服の裾を握っている。やっぱり断って結奈ちゃんと二人で食べた方が良かっただろうか。
「恵那ちゃん、結奈ちゃんと近くない?」
結奈ちゃんは私の隣にぴったりとくっついてパンを食べている。
「なんか緊張してるらしくて。」
先輩は意外そうな顔をした。そのあとすぐに表情を直して結奈ちゃんに話しかける。
「結奈ちゃん、私も白あんぱん好きなんだ。美味しいよね。」
「え、あ、はい。美味しいです。なんか紗凪さんが食べてるイメージ沸かないですね。」
結奈ちゃんがそう言ったときだった。後ろから声をかけられる。
「あれ、山本さんじゃん。紗凪と知り合いなの?」
「真夏先輩!お疲れ様です。」
私は状況が飲み込めず混乱している。紗凪先輩の方を見るが、紗凪先輩は紗凪先輩でよくわかっていないようだ。
紗凪先輩が口を開いた。
「結奈ちゃんバスケ部だったの?」
「はい。真夏先輩にはいつもお世話になってます。」
「紗凪、私にだって慕ってくれる後輩はいるんだからね?」しばらく結奈ちゃんとその先輩が話しているのを見ながらお弁当を食べていたが、先輩はそっとおかずを私にくれた。卵焼き。先輩は小声で「自分で焼いたから食べて。」と言っている。
卵焼きを食べた。ものすごく美味しかった。




