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星を一緒に見ていたい  作者: 電気の土星
第一章:一番星
30/59

第30話:縮まる距離

私はいつもより30分家を早く出た。先輩との約束のため。昨日の電話で私は思わず会いたいと口走ってしまった。勢いだけではなく本心も混ざっていたが、発言そのものはほとんど勢いだった。

校門を抜けて駐輪場に向かうと、私が普段自転車を止めているところの近くに先輩が立っている。

「おはようございます。お待たせしてすみません。」

「おはよう。全然待ってないから大丈夫だよ。」

私はいつものところに自転車を止めて先輩の方を向いた。

「恵那ちゃん、昨日電話急に切ったのはごめんね。」

「い、いえ。私こそ急にすみませんでした。」

先輩は優しい表情で首を左右に振った。

「恵那ちゃんの言葉から逃げたくなかった。だから今こうして対面で話してる。」

先輩はまっすぐ私の目を見つめてくる。

「それに嬉しかった。会いたいって言ってくれて。」

その一言で抱えていた不安が全部吹き飛んだ。ずっと先輩に嫌われたとか考えてあんまり眠れなかったから。

「だからさ、今ここで、一瞬でいいからぎゅってしてほしい。」

そう言って先輩は両腕を広げた。私が動揺していると目線で「誰か来る前に早く。」と可愛くせかしてくる。もうどうにでもなれっという気持ちで先輩に抱きついた。一瞬。でもその一瞬が私の人生には大きく残る。一生残るだろう一瞬が今手の中に存在していた。先輩から静かに離れて先輩の顔を見るとどこか満たされたような、でも少し恥ずかしそうな表情を浮かべている。


「じゃあ私そろそろ教室行くね。今日も一日頑張って。」

そう言うと先輩は私を置いて教室へ向かって行った。私はしばらくぼーっと駐輪場で立っていることしかできなかった。しばらくするとだんだん登校してくる人が増えてきた。同じクラスの人にも声をかけられる。結奈ちゃんも向こうから自転車で走ってくるのが見えた。

「あ、恵那!おはよう。ちょっと待ってて。すぐ自転車置いてくるから!」

私がそこで待っていると結奈ちゃんが走ってやってきた。

「おまたせ〜。教室行ったらまた髪やらせてね。」

いつも通りの約束をして教室に入る。

「今日はどうする?」

そう言いながら既に私の髪を櫛で梳いている。

「恵那ってほんとに髪綺麗だよね〜。ケアとか大変でしょ?」

確かに少し大変だけど結奈ちゃんの夢のため、そして先輩に褒めてもらうために頑張っている。それに髪型を変えるのも楽しくて好きだ。

「今日は後ろでロープ編みみたいにしてほしいな。」

「おっけ〜。最近いろいろ言ってくれて嬉しいよ〜。練習になるし、妹からも好評だから。」

しばらくすると結奈ちゃんが完成した姿を見せてくれた。

「じゃ〜ん!イメージ通りにできたかな?」

「うん。ばっちり。ありがとう。」

「明後日遊びに行くときも私に髪セットさせてくれる?」

「うん。もちろん。明後日は結奈ちゃんの好きにしていいよ。」

結奈ちゃんは嬉しそうに笑った。おそらく相当楽しみなのだろう。


休み時間になると結奈ちゃんはいつも私の指とか手、たまにほっぺたをつんつんしてくる。すごく優しい強さだから私も全く気にならない。いろんな話をしながら自然につつかれている。

「恵那〜。私終業式の2日前の日曜に試合なんだよね。」

「そうなの?頑張って。応援行けるなら行くよ。」

「ほんと?」

結奈ちゃんは私の方に身を乗り出してきた。急に距離が近くなってびっくりしたが、すぐに気にならなくなった。

どうやら初スタメンらしい。結奈ちゃんは相当気合いが入っている。私が応援に行くともっとやる気が出るらしい。

「また詳しい時間とか教えてよ。」

「うん!かっこいいとこ見せるからね!」

そう言うと結奈ちゃんはお昼ごはんのパンを買いに購買へ走っていった。

「財布忘れてるじゃん。」

私は結奈ちゃんの財布を持って後を追いかける。追いついたところは購買の入り口だった。

「結奈ちゃん、財布机に置きっぱなしだった。」

「え?ほんとだ。ありがとう!」

結奈ちゃんはほんとうにすぐ笑う。なんだか猫のおもちゃの鈴入りボールを転がしているみたいだ。

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