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星を一緒に見ていたい  作者: 電気の土星
第一章:一番星
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第29話:風が誘う想い

部屋に戻って私は先輩に電話をかけた。なぜだか無性に声が聞きたくなった。先輩は出てくれるだろうか。2回コールが鳴ったところで先輩に繋がった。

「もしもし?恵那ちゃん?どうしたの?」

「夜遅くにすみません。ちょっと先輩と話がしたくなって。」

「なんだそういうことか〜。急に電話してくるからなにかあったのか心配しちゃった。」

私のいきなりの電話にもちゃんと応えてくれるところとか、さりげなく心配してくれるところとか、そういうところも大好きだ。

「水族館までどうやって行く?自転車だとちょっと遠くない?」

「電車にしますか?」

たしかに自転車だとちょっとしんどい距離にある。別に行けないことはないがかなりよいしょがいる距離だ。

「そうだね。電車で行こうか。水族館が海沿いだから電車の窓からも海が見えると思うよ。」

私はさっそく時間を調べ始めた。ちょうど良さそうな時間は9時55分発と10時15分発がある。

「9時55分と10時15分だったらどっちがいいですか?」

「早い方にしようか。なるべく長い時間一緒にいたいし。もちろん恵那ちゃんが嫌じゃなければだけど。」

先輩の一言で私の気持ちは簡単に揺さぶられる。なるべく長い時間一緒にいたいなんて言われたら私はもう無理だ。耐えられない。なんとか気持ちを抑えて返事をしようとするが、確実に隠し切ることなんてできない。

「私も先輩と一緒にいたいです。」

必死に声を絞り出した。たぶん幸せオーラが溢れ出ていたと思う。

「なんか嬉しいよ。出会ったときより素直に思ってること伝えてくれて。」

私は急に恥ずかしくなった。先輩の前以外でもそうなっているのだろうか。結奈ちゃんの前では割と自然になれるようになってきたし、少しずつだけどクラスの人と結奈ちゃんを挟んで話すことも増えてきた。

「風が気持ちいいね。今日は。」

「先輩今家にいないんですか?」

「ベランダだよ。星見てたの。」

こんなときに私の家の構造を恨むことになるとは。私の部屋にベランダはない。優の部屋にはあるから、今この瞬間ほど優と部屋を変えたいと思ったことはない。私はちょっと待っててと先輩に伝えて一階へ降り、庭へ出た。


「お待たせしました。」

庭で空を見上げる。

「星、綺麗ですね。」

「うん。すっごい綺麗。」

しばらく夜風に吹かれて星を見ていた。電話の向こうから小さく先輩の鼻歌が聞こえてくる。

「先輩、私今すぐ先輩に会いたいです。」

私はそう呟くと一気に恥ずかしくなって電話を切りたくなった。庭の中心で一人でうずくまっている。こんな姿を家族に見られるのはまずい。先輩の反応を確かめたいが、確かめる余裕なんて今はない。急いで自分の部屋に戻って扉を強く閉めた。

「恵那ちゃん大丈夫?なんかすごい音したけど。」

「はぁ、はぁ、扉の、音なので…大丈夫、です。」

部屋に戻るため階段を登る途中、明らかに動揺している先輩の声が聞こえていた。もしかしたら、なんて思ってしまう。私は顔が真っ赤だけど先輩はどうだろう。同じならすごく嬉しいし、そうでなくても先輩は真っ正面から受け止めてくれるだろう。

「先輩、さっきの聞こえてましたか?会いたいって言ったの。」

少しだけ沈黙が流れる。実際は15秒にも満たない時間だったけど、私には3分くらいに長く感じた。

電話の向こうで先輩が呼吸する音が聞こえてくる。

「恵那ちゃん、明日の朝早く学校来てくれる?駐輪場で待ってるから。」

先輩がそう言い終わると、おやすみと言って電話を切られた。おやすみなさいと返す間すらなかった。

「どうしよう…嫌われたかな…。」

マイナスな考えが頭の中を駆け巡る。大丈夫だとわかっていても、少し冷たくされると簡単に傷つく。私は時間とともに変わりすぎてしまったのかもしれない。とりあえず明日の朝の約束のために早く寝た。

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