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星を一緒に見ていたい  作者: 電気の土星
第一章:一番星
25/59

第25話:日が伸びて

「もっと頼ってよ。」

先輩のその言葉はどこか冷たく、突き放すような言葉にも聞こえた。私はまた失敗したのだろうか。

「ごめんなさい。」

ただ謝ることしかできない。

「私、先輩の勉強の邪魔はしたくなくて…」

「なんで謝るの?別に怒ってるわけじゃ…」

「ごめんなさい。変な空気にしちゃって。」

先輩は私を隣に座らせた。

「なにかあった?なんか恵那ちゃん、一人で溜め込みそうだから。」

そういうわけじゃないのに、なんだか泣きそうになってきた。さっき髪を可愛いって言われて、数学もなんとか大丈夫だったという話をして。それだけで満足だったはずなのに、まだ心は先輩を求めている。


「先輩、あのときみたいに頭撫でてほしいです…」


一瞬間ができたが、先輩は何も言わずに優しく私の頭を撫でてくれた。優しくて温かい手。叶うならずっとこの時間が続いてほしい。先輩の手が徐々に下がっていって三つ編みの先端に到達する。

「いつものポニテも可愛いけど、三つ編みも可愛いね。恵那ちゃん可愛いからなんでも似合って羨ましいよ。」

その言葉で私の心臓は一瞬で破裂寸前まで膨れ上がった。心臓がバクバクしているなんて表現が生ぬるく聞こえるくらい。私の心臓は先輩という衝撃に耐えられるようにできていない。多分だけど、漫画とか小説とかの創作物での表現が現実に起きる気がする。そのレベルで私の心臓は鳴り続けている。

「そ、そんな可愛いばっかり言わないでください…私なんて全然…」

とりあえずなんとか言葉を紡いだ。何も言わないとこの状況は良い意味で悪化して行くに違いない。

先輩はいつのまにか先輩の世界に入って星のことを考えている。いや、私が自分の世界に入り込んでいただけで、ようやく意識を取り戻した。というのが正解なのかもしれない。


先輩と一緒に屋上に向かう。久しぶりに先輩と星を見る。最近日が長くなってきているから、星が見え始める時間もそれだけ遅くなってきている。屋上のフェンスから下を見ると、結奈ちゃんが自転車に乗って走っていた。隣にいるのはバスケ部の友達か先輩だろう。

あと10日もすれば6月になる。先輩と出会ってもうすぐ2ヶ月。時間の流れは早い。そのままあっという間に先輩は3年生になって部活を引退してしまう。


(せめて夏までには気持ちを伝えられたらな…)


そんなことを考えているうちに先輩が私の隣に立っていた。

「何見てるの?」

私と同じように下を覗き込んでいる。

「友達がいたので。」

「こないだ言ってたバスケ部の子?」

「はい。その子に髪もやってもらったんです。」

先輩は私のことをじっと見たあと、再び下に視線を戻した。いったいどうしたんだろう。

「なんか、嬉しいことなはずなんだけど、ちょっぴり寂しいや。4月のときは友達がいないって言ってたから心配だったけど、友達ができて、ほんとは喜ぶべきなのに、なんか恵那ちゃんが遠くに行っちゃう気がする。」

私は先輩の言葉を黙って聞いていた。だが居ても立っても居られなくなって先輩の手を握っていた。


「どこにも行かないです。先輩が私のこと嫌いにならない限りは。」


少し恥ずかしかったけれど、そんなこと言ってられない。ただ先輩の目をまっすぐ見つめていた。

「恵那ちゃんはまっすぐで優しいね。ほんと。」

先輩は私の手を少しだけぎゅっと握り返してきた。私の心はすでに決壊して、幸せがものすごい勢いで360度ありとあらゆる方向に放出されている。たぶんこのままでいるのは私には不可能だ。体はまだこのままでいようとするけど、理性がそれを拒んでいる。私は移動する体で先輩から離れた。顔を背けても、首や耳が赤いからたぶん意味はない。私は今日の部活にはほとんど集中できなかった。

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