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風の国のお伽話(改稿版)  作者: 花時雨
第八章 争乱

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202/218

第百九十四話 留学

王国歴224年5月初


 この日の朝、王孫クレベール・ヴィンティア王子殿下は寝耳に水の出来事を知って慌てて身支度をしていた。思いも寄らぬことで聞いた時には呆気に取られ、その後には噴気に駆られた。手が震え、それまで着ていた軽装を脱ぎ礼装に変えて整えるのに思わぬ時間が掛かったほどだった。


 そこに国王のお召しが掛かり、その執務室に呼ばれた。

 王子自身、すぐにでも国王に尋ねたい、いや、問い質したいことがあって面会の許可を得ようとしていたところだったこともあり、お召しを告げた侍従をそのまま置き去りにする勢いで廊下を王族らしからぬ速足で急ぎ、息を乱しながら執務室に着いた。

 扉の脇に立っていた近衛兵はクレベールの顔を見ると、用件を聞くまでもなく扉を開いて王子を通した。

 自分が直ちに来るのは予期されていたのだろう。そうすると、話の行方は自分の思うようにはならないかも知れない。そんな悲観が頭を(かす)めたが、引き返すわけには行かない。クレベールは覚悟を決めて前に突き進んだ。



「クレベール、来たか」


 部屋に入るとすぐに国王の声が掛かった。その隣に置かれた椅子には王妃が座っている。やはり自分はすぐさまに来ると思われていたのだ。

 クレベールは答えず、国王の机の前まで足早に進み、背を伸ばして立って目の前の祖父の目を捕らえた。

 国王も王妃も極めて真面目な顔で、クレベールが部屋に入った時からずっとその姿を見詰めている。

 王子は国王に返事をした。朝の挨拶もせず、声は硬い。


「陛下、妃殿下、お召しにより参上しました。ですが、御用件の前にお伺いしたいことが」

「お前の父母のことか」

「はい。王族籍から外されるとは、どういうことなのでしょうか」


 クレベール王子は語気を強めて一歩前に出た。


 国王夫妻は前日の夜遅くにその第二王子でクレベールの父であるフェブラー王子と母であるその側室のところを秘密裏に訪れ、二人の神職籍への移籍を申し渡していた。クレベール王子が自分の父母の異動を知らされたのは一夜が明けてから、父を朝の見舞いに訪れた時のことだった。

 自分の知らないうちにという無念が、普段なら冷静なクレベール王子を突き動かして国王の眼を正面から見据えさせたのだ。


 だが国王はその視線を避けず真っ直ぐに見返して冷静に答えた。


「どうもこうもない。フェブラーは、もう重い政務を執れるほどには心身が回復する見込みが持てないと侍医が言っておる。それ故、王族から放って治療に専念させて、せめて国のことを神に祈れるように王族籍から神職籍に移す。本人も承知したので今日の午後に正式に命を下す。お前の母はフェブラーにどこまでも付いて行きたいと言うので、貴族籍から神職籍に移るのを許した。それだけのことだ」

「ですが……」


 父の容態と母の思いはクレベール王子もかねてから知っていた。

 それだけにその事実を平然と突き付けられると、激しい憤りもその形を無くし、言うべき言葉が失われていく。


 声が出なくなったクレベールに国王は畳み掛けた。


「ですが、何だ? フェブラーは前からそれを望んでおった。それはお前も知っておろうが。お前の母も、フェブラーとお前の両方を心配しておったが、お前ももう自立できると思い切ったのだ」

「そうかも知れませんが、私は母が心配です」

「母の何が心配なのだ? フェブラーはもう王族ではなくなる。あれの正妃が、フェブラー自身ではなく自分が王族の正妃であることに拘っていたことはお前も察しておったろう?」

「それは、……はい」

「正妃の王族籍は外さぬ。つまり、王子の妃としての身分はそのままだ。もう、あれがお前の母をどうこうする理由は何一つ無いのだ、安心せよ」

「ですが、母が私の母であることは変わりがありません」

「だから何だというのだ」


 国王は眉根に僅かに皺を寄せた。目の前の王子が煮え切らぬと見て取ったのだ。


「クレベール、はっきり言おう。お前は頭が良い。だが、それを活かして王族としてどれほどに働いたのだ? スタイリスを支える振りをし、母に危害を及ぼされぬように(へりくだ)るだけだったではないか。些事を別にすれば、お前が真に働いたのはピオニル子爵への監察団を副使として正使スタイリスの陰から巧みに導き、成功させた事だけだ。お前の母への想いは知っておる。だがそれに(かま)けることをお前の母が望んでおると思うか? そんな訳はない。お前の母は、お前を大切にしておる。だがそれは、お前をいつまでも我がものとして囲いたいからではない。お前が自立して王族としての務めを果たし活躍して欲しい、お前自身の道を歩んで欲しいと望んでおるからだ。そうは思わぬか?」

「……」


 無言となって俯くクレベールを見て、国王はさらに強く何かを言おうとしたが、王妃が国王の袖を引いた。国王が王妃の顔を見ると、王妃は哀しそうに微笑みながら顔を小さく横に振った。

 この孫は聡く、理を良く(わきま)える。賢者と貴族諸侯から目されてはいる。それでも、人は人、ましてやまだまだ若者なのだ。いくら祖父の説くことが正しいと承知していても、すぐには心が受け入れられぬほどに母親を大切に思っているのだ。

 王妃がその思いを目に込めると国王はそれに頷き、王子に向き直った。


 少しの時を置き、(ようや)くクレベールが顔を上げるのを見て、国王は声を和らげた。自分の言葉が孫の耳に響き、腑に落ちて心に沁み透っていけるように、ゆっくりと、静かに、一言一言を確かめながら諭した。


「クレベール、母を思うのは尊いことだ。その側におりたいという気持ちもわかる。だが、寄り添うことと寄り掛かることは全く違う。自分の足で立たぬことを許される訳とはならないのだ。それは別のことと悟れ。お前の母がフェブラーと共に教会に行くことを選んだのはそのため、お前を自立させるためでもあるのだ。母の想いに応えよ」


 王子は黙って聞いていたが、やがて顔を伏せ、小さな声で呟くように返事をした。


「……陛下、わかりました」

「教会にはスタイリスの手も届かぬ。お前の母は安全だ。安心せよ」

「はい、有難うございます」

「では、王孫クレベール・ヴィンティア、今日其の方を呼んだ理由を告げる」


 国王が言葉を改めると、クレベール王子は引き締めた顔をきっぱりと上げて姿勢を正した。


「陛下、承ります」


 王子の声に力が戻ったことを聞き取ると、国王は頷いてから命を告げた。


「フルローズ国に留学せよ」

「フルローズ国へ?」


 王子は片眉を上げると目を軽く宙に泳がせた。既に心は切り替わり、思考を巡らせ始めているのだろう。すぐに視線を国王に戻すと冷静な声で言った。


「少し前まであの国からクリーゲブルグ辺境伯領に、(しき)りに不法侵入が発生していたと聞いています。侵攻準備の探索ではないかと懸念しておりました」

「さすがだな。その通りだ。あの国の第二王子の手の者であろう。今、彼の国との和平が揺らぎかねん状況にある。クリーゲブルグは言うまでもなく油断せんだろうし、ユークリウスの所に近衛を一部移したのが奇貨となり、仮に奇襲を受けても容易く破られはせんだろう」

「はい。ですが、そもそもは戦を仕掛けさせないことが肝要かと考えます」

「うむ。その通りだ。だが、このままでは(まず)い。どうすべきと考える?」

「そうですね。あの国の、特に平和を望む者たちとの繋がりを太くすることが肝要かと。情報を得ると共に、こちら側には侵攻の意志を持たないこと、しかし侵攻を許すつもりも無いことを理解させるべきと考えます。そうすれば和平派に力を与えることができますし、意思の疎通が容易になれば、突発的な衝突が生じてもそれが拡大せぬように迅速に交渉することもできるでしょう。……陛下、そのために私を?」


 考えを煮詰め真剣な表情で問い返すクレベール王子を、国王は満足そうに眺めた。

 この頭の切れる孫は、その先にあるものにももう既に行き当っているだろう。そう思いながらも王子が決意をより強く固めるのを手助けするために、力強く頷きを返した。


「うむ。お前は理解が早くて助かる。慣れぬ地での役割だ、なまじな者ではやれん。こちらが本気であることを示すためにも王族を送る必要があると考えた。勿論、貴族の子弟を何人か共に行かせる。それらを手足として使え。できるな?」

「ですが、スタイリス殿下は? 私が先に役を授かるのは僭越になります。殿下の周囲に戸惑いを引き起こすのではありませんか?」

「勘違いするな。役ではない、形の上ではあくまで留学だ。手当は当然出すが、役料でもない。どうだ?」

「そういうことであれば、承りました」

「良し。留学であるのだから、彼の国の風土、人物、文化等、見聞も広めて種々学んで来い。その知識と経験はお前がこれからやりたいことの力になるだろう」

「私がこれから?」

「うむ。いずれは、この国の芯木となる誰かの役に立ちたいのであろう?」

「陛下。……お見通しとは、畏れ入りました」


 王子は素直にそう言うと国王に頭を垂れた。それを見て、国王はさも愉快そうに笑った。


「そうか。はっはっは。お前たちは儂のことを老いたと思っておるかもしれんがな。確かに老いたりとはいえ、いや老いたればこそ、未だ若い者たちの考えがわかることもあるのだ。お前にもそのうちわかるだろう。誰もが通る道だからな。その時には既に亡き儂の代わりに若者を導いてくれ」

「陛下、そのようなことを」

「まあ良い。フルローズの国王とは既に話は付いている。巧くやってくれ」

「はい」

「それから、耳を貸せ」

「はっ」


 いきなりの秘事に緊張が走る。クレベールが体を固くして国王に近付き頭を寄せると、国王は右の眉を二度上げ下げしてにやりと笑うと王子の耳に囁いた。


「(あの国の第二王子には可愛がっている末娘がおる。事が穏便に進めば、それがお前の妻になる。第二王子の相手をするときは、そのつもりでな)」

「(……)」


 王子の眼が驚きで開く。国王は囁きを続けた。


「(安心せよ、心も姿も嫋やかな、群を抜き出た美人と誉れ高い)」

「陛下、そのような」


 クレベールが体を起こして当惑した声を出すと、国王はまた愉快そうに笑った。


「はっはっは。準備が出来次第知らせよ。謁見室にて正式に命を下すので、その足で出立せよ。仔細は宰相、外相と相談せよ」

「承知しました」

「うむ、下がって良い」



 国王に頭を下げてその御前を去ったクレベールは直ちに宰相と外相の所に向かい、留学の手筈やなすべきこと等を話し合った。

 外相の部屋を出た後、王子は暫く廊下で(たたず)んでいたが、やがて意を決したように顔を上げると、すたすたと歩き始めた。

 従者が慌ててその後を追いながら尋ねた。


「殿下、どちらへ?」

「王族方に挨拶回りだ。先ずはメリエンネ殿下のお見舞いに行く。急いで先触れを頼む」


-----------------------------


 メリエンネの部屋の扉が開き、控室から侍女のドロテアが入ってくると急ぎ足で主の所に寄った。


「姫様」

「ドロテア、どうしたの?」

「東宮局から使いが参りました。クレベール殿下が御面会をお望みとの知らせです」

「クレベール殿下が? 何かしら」

「わかりません。お急ぎの御様子ですが、お気が進まれなければ日を改めていただいても良いと思いますが」


 腹心の侍女の声には驚きと懸念の色が混じっている。これまで、王女にとって従弟に当たるスタイリス、クレベールの両王子が王女の見舞いに来たことは無いのだ。それが(あらかじ)め日も定めずにいきなり会いたいと言ってくるとは只事とは思えない。だが、無下に断る理由も無い。メリエンネは訪問を受けることにした。


「いえ、構いません。ドロテア、準備が出来次第、お通しして」



 クレベール王子は程無く部屋に現れた。

 長幼の順はあれど、彼はメリエンネ王女と同じく王孫である。メリエンネは迎えるために車椅子から立ち上がろうとした。ドロテアが支えようとしたがクレベールは急いで「どうぞそのままで」と声を掛け、メリエンネは申し訳なさそうに腰を落ち着け直してから挨拶をした。


「クレベール殿下、御機嫌麗しう」

「メリエンネ殿下におかれましても、御機嫌麗しう。お元気そうなお顔をお近くで拝見できて、とても嬉しく思います」

「どうぞ殿下もお掛けください」

「いえ、すぐに済むことですので、このまま」

「そうですか」


 メリエンネは立ったままでいるクレベール王子の顔を見上げた。

 この王子は常に真顔で無表情だ。自分がまだ元気だった子供の頃から変わらない。いつも隣にいたスタイリス王子が喜怒哀楽の全てを顔に曝け出していたのとは対照的だったことを憶えている。今日は珍しく兄に伴わずに一人で何をしに来たのだろうか。

 メリエンネは訝しく思いながらも、当たり障りのない話を始めてみた。


「こうして親しくお話しするのは随分と久し振りのような気がいたしますわね」

「ええ、互いに十歳にもならぬ子供の時以来でしょうか。あの頃もでしたが、最早お顔も真っ直ぐ見られぬほどにお美しい」

「御冗談を」

「冗談を言ったつもりはありません」

「それは有難うございます」


 表情を崩さずにお世辞を述べてみせるクレベール王子に、メリエンネはくすりと笑った。

 クレベールは真顔のまま、感慨深げに言った。


「閣議の傍聴に参加されるぐらいにお元気になられて、本当に良かった。何度もお体のことを伺いながら、一度のお見舞いにも参上できず、申し訳ない事でした」

「いいえ。殿下がお一人で他の王族と会うなど、お兄上のお耳に入ったらご立腹になられたでしょうから」

「御存じでしたか」


 それまで無表情だったクレベールが首を傾け、微かに苦笑を洩らしながら応じた。

 メリエンネも微笑みを返す。


「ええ、お噂は少しばかり。それで本日の御用向きは?」

「実は、フルローズ国に留学のため、お別れの挨拶に参りました」

「まあ。それは知りませんでした」

「今日、国王陛下から命じられたばかりです。近日中に発表され次第、出立することになります」

「急ですこと」

「国王陛下の御意志です。余計な邪魔が入らぬようにでしょう」

「陛下が」

「暫くはこの国には戻らないでしょう。場合によってはそのまま、彼の地のままにということもありえます」

「もしかして、彼の国で御婚姻を?」

「はい、恐らくは。覚悟しております」

「お覚悟、ですか……」


 メリエンネはまた無表情に戻ったクレベールの顔を小首を傾げて暫く見詰めた後に、おずおずと尋ねた。


「立ち入ったことをお伺いします」

「どうぞ、なんなりと」

「殿下はそれでよろしいのですか?」

「と、言われますと?」

「心に想い定めた方はおられないのですか?」


 その問いに、クレベールは片方の口角を上げて、きっぱりと答えた。


「いいえ。私に近寄る令嬢方は、皆、スタイリス殿下が目当てでしょうから」

「まあ……」

「仮にいたとしても、王族の婚姻は全て国王陛下がお決めになるもの。意味がありません」


 感情が無いかのように淡々と、それでもどこか何かを諦めたかのように。冷静な王子の声を聞いて、メリエンネはどうしても言わずにはおれなかった。


「でも、御自分のお気持ちを陛下に訴えることはできるのでは」

「ユークリウス殿下のように?」

「……」


 メリエンネが視線を逸らすと、クレベールは微かに顔を緩めた。


「つい先程、宰相に伺ったばかりです。内々とのことでしたが殿下も御存じなのですね」

「……」


 メリエンネは無言のまま、相手の真意を探ろうとするかのように彼の顔を見た。

 クレベールはその視線を気にせずに話を続けた。


「彼は国王陛下に婚約を認めろと直訴したそうですね」

「そうらしいとのお噂ですわね」


 曖昧な応えが返ってくると、クレベールは顔を大きく崩して「ふっ」と笑い声を零した。心の内を曝け出したその表情にメリエンネが驚いていると、少し哀しそうにも聞こえる声で語り出した。


「仮に心秘かに想い人がいたとして、私にはその人に自分の心を告げてその愛を勝ち取りそのまま陛下の所へ駆け込む、彼のような勇気はありません」

「そうなのですか」

「はい。彼と私とでは、人としてのあり方が違うのでしょう。比べるべくもありません。常にスタイリス殿下の顔色を窺っていた私には、ユークリウス殿下のようにありたいと思っても、真似は到底できません。私は幼い頃から何にも挑戦しなかった。ただじっとその場に(とど)まり、耐えて待つだけだった。目指さない者に、届く地平は無い。それだけのことだと思います。彼は何があっても顔を上げて歩き続ける人だ。そうお思いになりませんか?」

「ユークリウス殿下は、そうですわね」

「それに国王陛下がいつも言われているように、王族の身は国に捧げるためにある、そうではありませんか?」

「……」

「今回の御沙汰は、国王陛下が私の幸福をも考えてくださったものと心得ています。喜んで彼の国に赴く所存です。ですが、殿下におかれては、お心に適う御処遇を陛下が下されることを心よりお祈り致します」


 王女の美しい顔に優しい眼差しを注ぎながら、決意を冷静な声で響かせる。

 メリエンネは王子を無表情で見返して別れを告げた。


「ありがとうございます。御留学とはいえ、陛下は何かの重要な任務を命じられたものとお察しいたします。御成功をお祈りいたしております。どうか、お元気で」

「有難うございます。メリエンネ殿下も、どうぞお元気で」


 クレベールもすっと無表情に戻ると淡々と応じ、頭を下げて王女の部屋を辞した。廊下に出ると大きく息を吸って吐く。そしてもう後ろを振り返ることなく歩き始めると、従う供の者に命じた。


「後は王弟殿下、マルガレータ殿下、マレーネ殿下か。面会を求めてくれ」

「承知しました」

「思えば、兄以外の王族方ともっと交流を図っておけば良かったかもしれんな。そうすれば、世界がもう少しは開けて、違う人生、ユークリウス殿下のような人生があったかもしれん」

「殿下。差し出がましうございますが……」


 従者が密やかに何かを言おうとしたが、王子はぴしりと遮った。


「言うな。もう思い残すことは無い」


 それを聞いて従者も口調を明るく切り替えた。


「はい、殿下。フルローズ国で新しい人生が殿下を待っておりましょう」

「うむ。今度は悔いの無いように生きたいものだ。国のため、自分のためにもな」


 そう応じると、足を速めて廊下を去って行った。



 一方で、部屋に残されたメリエンネ王女は車椅子の背に(もた)れ掛かり、暗い表情でクレベール王子の言葉を反芻していた。


「王族の婚姻はすべて国王陛下がお決めになるもの……。王族の身は国に捧げるためにある……」

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