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私をあなたの番(運命)にして下さい  作者: ゆきもも


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㊵それぞれの想い

その夜エイルリスはなかなか寝付けずベッドの上で悶々と考えていた。


何故かあれからリオンの態度が突然余所余所しくなった気がするのだ…。

何かあったのか話し合いにも参加させてもらえなかったし。リオンも表面上は優しく変わっていないように見えるが明らかに目を合わせようとしない。

やはり、前とは違う気がする。


少し前まではあからさまともいえるくらい好意を見せていたのに…それは私の気のせいだったの?それとも嫌われてしまったのかしら…。

別に、それならそれでいいわ。私はまだ恋愛感情とまでは……いってなかったし。そうよ、獣人と人間なんて障害だらけじゃない、これ以上進まなくて良かったのよ。


無理矢理にでもそう思おうとしたがどうしても心が苦しくて仕方なかった。すぐに変わってしまう様な気持ちで相手を振り回す男なんてこっちから願い下げよ!


リオンなんて…リオンなんて。


自分では気が付かないうちに既にエイルリスの心に深くアラリオンが存在していた。簡単に気持ちを切り替えるには遅かった事をエイルリスは自覚する。


まだ彼の気持ちははっきりしてないけど、本人に聞くなんてどうしても怖くて出来なかった...。

このままもっと離れていってしまったらどうすれば良いの。

いつの間にかこんなにも好きになっていたなんて…。

しかし人の気持ち程どうにもならない物はない、とにかく今は待つしかない。リオンがどう決意するか、でももし、今度リオンが自分の正直な気持ちを伝えてくれたならば私はそれを素直に受け入れよう。


エイルリスはどんなに辛い結果になろうともしっかりリオンの気持ちを受け止める覚悟をして眠りについた。



***


アラリオンはベッドに横になりながら窓から見える月を眺めていた。


どこからか香ってくるあの甘い甘い匂い。


途切れる事なく...いや段々とこちらへと近付いて来てるのだ。朝よりももっと、昼よりももっと、匂いが濃くなっている。

この芳しい香りの主にもうすぐ会えるのか?

会ったらどうなるんだ…離れていてもこんなに体が熱く感じるのに。顔を見てしまえば………。


この抗えない感情とは別にルリスへの気持ちはまだ間違いなく俺の中にある。

ルリスを愛おしという気持ちと番かもしれない相手への本能からくる抗えない激しい感情。

まさかこんな事になるなんて、やっと人生を共にしたいという女性と巡り合えたと思っていたのに。


アンリ、何故俺にあんな物を飲ませた?それさえなければルリス1人を永遠に愛せたはずなのに…いや…本当にそうなのか?番ではない彼女を?

番と出逢える事は獣人にとって最大の喜びだ。

一生出逢えない獣人だって沢山いる中、アラリオンの番は確かに近くに存在する。それがどれだけの奇跡か、アラリオンだってわかってた、だが…。

俺は一時的な気持ちで彼女(ルリス)を振り回したのか?最低だな…。


アラリオンはこれからどうしたら良いのかわからなくなり拳を強く握りしめた。


俺の番…

俺のルリス…


自分がどちらを選ぶのか、当人のアラリオンでさえもうわからなくなっていた。



***


あの話し合いが終わりフィオはいったん自分が療養していた部屋へと戻る事になった。

すぐにでも甘い匂いの元へと走り出したい気持ちを必死で抑え落ち着かせる。今会えばきっと感情のまま暴走してしまいそうだったからだ。会ってしまえばもう離れられないだろう…同じ家の中にいて向こうから何の接触もないという事はもしかしたら俺の番?は獣人ではないのかもしれない。


となると…今この村に来ているという人間なのか?


フィオはその事でも慎重になっていた。

人間と獣人では茨の道どころではない未来しか待っていないのだ。それに人間ならばこの番の感情など持ち合わせてないだろし、気持ち悪がられるだけじゃないか?


…もし番に拒絶などされたら…生きていけるのだろうか。

フィオは拒絶された時の事を想像し身震いする。

そもそもいずれ自国へと帰国すると思うし、当然会うことすら不可能になる。ならばこのまま会わない方がお互いの為なんじゃないか…?

そうやって色々な事を考えてしまいフィオは恐ろしくて会いに行くなんて事はとても出来そうになかった。会って顔を見てしまえば離れることを考えただけで気が狂いそうになってしまう。


とにかく同じ家にいるのは番の存在を感じすぎて苦しい、明日自分の家に戻れるよう相談してみよう。

フィオは甘い香りを絶ち切るような頭から布団をかぶり強引に目を閉じた。



***



アンリは監禁された部屋の隅で膝を抱え丸くなっていた。本当なら拘束されるはずがジュノーの強い反対で免れたため手足は自由となっている。

とはいえ、両隣にオリオンとジュノーの部屋があり、部屋の前には獣兵が2人立って監視されていた。

当然といえば当然なのだが、今まで皆から笑顔で接してもらい、常に褒めて持て囃されていた身からすれば天と地の差があった。

自業自得なのだがアンリには何がそんなに悪かったのか全くわからなかった。


強い者が下を従わせる、それの何がいけないのか?

弱い個体が強き者に逆らう事事態がおかしいのでは?


だが、自分の父が来るとなれば話しは違う。

この王国で()()()は王国とほぼ同等の権利を持っていた。国の国とのやり取りなどはさすがに国王が出るが、自分の領地の者や身内などが起こした事件などはその領主の采配で処罰を決められる、最悪処刑もその範疇だ。

裁判も領主の元簡易的な物で終わってしまう場合もある。しかし、それだけの権力を持てるということは同時にとてつもなく重い責任と重圧が伴うのだ。

アンリの父もその重圧を耐えうる程の強い精神力と肉体的な強さを持ち合わせていた。

自分の子であろうと一切の情けもなく、何事も粛々と容赦なくこなす父だ...今回のアンリの処罰も父親の感情など微塵も期待出来ないだろう。


アンリは父の鋭い眼光を思い出し体の震えが止まらなくなる。

父はどんな処罰を下すのだろう…まさか、処刑などはないだろうけど。あの父の事だ、甘い処罰ではないはずだ。


怖い怖い…、リオ…私を助けてよ。

私にはリオだけなのに。


アンリは絶対にないだろうアラリオンの助けを信じ、1人恐怖にうち震えまんじりともせずに夜を過ごした。



***



「ジュノー、アンリを拘束するなとは甘過ぎるんじゃないか?」

オリオンがそう言われジュノーは何も言えず押し黙った。

「おい、お前…まさかアンリに…」

「違う!アンリの事は大切な妹としか思ってない!!」

「そうか…なら良いんだが」

「勝手な妄想はやめてくれ、兄上」

「…すまない、だがもしアンリに特別な気持ちがあるならこれから辛い局面に立ち向かう事になると思ってな…」

「アンリの、お父上ですか…?」

「あぁ、彼は身内であろうと容赦はしない。アンリの今回やった事はお前達が思う以上に厳しい裁きとなるだろう」

「いや、それでも自分の娘ですよ…?それにまだ死者が出ていないわけですし」

「同胞へと牙を向ける、それがこの国でどれだけの重罪かまだわかっていないのか?」

「確かに同胞へ危害を加えるなどあってはならないと思いますが…現にネリスに危害を加えた者は大したお咎めも無かったですよね?」

「あれは本当に例外中の例外だ。被害にあったネリスの懇願もあったし、更にエイルリス嬢からの申し出も大きかった」

「エイルリス嬢の?」

「彼女は自分にも勝手に部屋を抜け出した非があると、奴への軽減を頼んで来たんだ。後は…我らが父上の寛大さもあるがな。しかし、東の()()()はそうはいかないぞ」


「───まさか、処刑など…ありませんよね?」


「さぁな、それは俺にはわからない。とにかく明日の夜には此方へ到着するだろう、その時わかる事だ。じゃあ、俺は寝るぞ、お前もしっかり休んでおけよ」

そう言ってオリオンは部屋から出ていった。


ジュノーは先程オリオンが言っていた言葉を反芻しながらその場から動けなかった。

アンリが、処刑…まさか、いや、そんなわけ…。


ジュノーは違うと自分に言い聞かせながらも悪い予感が胸の中に渦巻き眠れない夜を過ごすのだった。




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