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私をあなたの番(運命)にして下さい  作者: ゆきもも


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㊶あなたの気持ちはもう…

皆それぞれの想いを抱いている中、いつもと変わらない朝を迎える。


「おはよう‥ございます」

エイルリスが1階へと降りてくれば既にオリオン、ジュノー、アラリオンが朝食を取っていた。


「おはよう、エイルリス嬢。食事はテーブルの上の物を適当に食べてくれ。後、申し訳ないがスープは自分で向こうの鍋からよそってもらえるか?」

「おはようございます、オリオン様。わかりました」

テーブルには沢山のパンとミルクに村の畑で収穫されたトマトなどが所狭しと並んでいた。

スープを取りに行こうと振り向けばアラリオンとバチッと目が合ってしまう。


「‥‥!お、はよう。ルリス」

「おはよう、リオン」


やっぱり気のせいじゃない。こんなに急に態度が変わるなんて‥‥‥、すごく気まずいわ。

私はスープをよそうとアラリオンと顔が合わないようジュノーを挟んで座った。

一昨日まではあんなに優しかったのに、何故なの。

エイルリスが深く落ち込みうつ向いていると、オリオンが口を開いた。


「エイルリス嬢にも伝えとくが、今日の夕刻過ぎに東の守り人、ザカライアス殿が此方へ到着する予定だ」

「ザカライアス様ですか‥?」

「そうだ、ザカライアス殿はアンリの父親でもあるが今日はそのアンリへの裁定を下す為に来る」

「アンリさんのお父上なんですか‥そのお父様が裁定を?」


どんな方なのかはわからないが自分の娘を処罰しないといけないなんて。アンリさんはそんな重大な何かを犯したの?


「あの、私はまだ詳しくアンリさんの事情を聞いていないので、何と言って良いのか...」

「なんだ、アラリオンから聞いてないのか?とうに伝わってるかと思ってたぞ?」


う……。一番触れてほしくない所を……。


エイルリスは今アラリオンがどんな表情をしているのか怖くて見る事が出来なかった。

うんざりした顔や迷惑そうな顔をしているのを見てしまえば心臓が凍りつきそうだったからだ。

何かを察したのかオリオンはそれ以上は聞いてこなかったのでホッとする。


「村人が襲われた事は知っているな?その犯人がアンリだった。動機も喋らず、反省もしてない点から処罰は厳しい物となるだろう」

「アンリさんが犯人!?それは本当なのですか?」

「襲われた本人の証言と、その被害者とアンリが話してる現場で自白とも捉えられる言葉をジュノーが聞いている」

「そうなんですか…。アンリさんが何故、あんなに村のために尽くしてくれていたのに」

「仕方がない、たとえそうであってもアンリがやった事は到底許せる範囲のものではない」


確かに村の人を襲うなんて、しかも二人とも一時は意識不明だったはず。もしかしたら亡くなっていた可能性だってあるのだ、謝罪だけで済む話しではない。


それにしても、いつもよく喋るジュノーは先程から一言も言葉を発しない。

不思議に思いチラリと横を見ればジュノーは今にも倒れそうなくらい青い顔をしてうつ向いていた。

ジュノー様も何かあったのかしら…。

その時突然ガタンッッと音を立ててアラリオンが立ち上がった。

「何だアラリオン‥急に、驚かせるな」

「外に───」

どうしたのかしら、外に何か…


「すみませんー!どなたかいらっしゃいますか?」


玄関の方から女性の、とても溌剌とした可愛らしい声が聞こえてきた。

なぜだかエイルリスはその声を聞きとてつもない不安感に襲われる。


だめ、だめ…この声の主に会ってはいけない。


自分の奥底から聞こえてくる警告が煩いくらいに頭に響き渡る。

「俺が…俺が、行きます」

何か吸い寄せられるようにアラリオンがフラフラとだが真っ直ぐに声のする方へと歩きだした。


「リオン待って!!」

エイルリスは咄嗟に引き止めた。

だが、アラリオンはエイルリスの声に一瞬反応したものの足を止めず玄関へ向かう。

お願い、行かないで!リオン!!こっちを向いて!私の顔を見て…。

エイルリスは最後の願いとばかりにアラリオンを必死で見つめたが、アラリオンは一度もエイルリスを見る事はなく行ってしまった。


リオン──。

あの時のリオンはどこへ行ってしまったの?

あんなに私を温かい目で見つめてくれたじゃない…優しく声をかけてくれたじゃない、どうして突然変わってしまったの?

するとオリオンがエイルリスを支える様に横に立ちエイルリス以上に辛そうな顔をする。


「エイルリス嬢、愚弟が大変申し訳ない事をした。己の習性を理解せずに貴方を傷付ける最低な行為をしたのだ。謝って済むことではない、だが本当にすまない」

「何をいってるのです?なぜオリオン様が私に謝るのです?やめて下さい、余計に惨めになりますから」

エイルリスはそんな謝罪など聞きたくはなかった。

苦しくて苦しくてどうにかなりそうになった時…


「何なのあなた!私に近寄らないで!!!」

「貴様ぁ!リリアン様から離れろ!」


と、困惑した女性の声と男性の怒鳴り声が聞こえてきた。しかしエイルリスの閉ざされた心にはもう何も響くことはなかった。



***



「──それで、君達はこの村に調査に来たというわけか?」

「そうなんです!で、早速ですがカーマイン団長はどちらに?」

リリアンが身をのりだしオリオンに迫ると、アラリオンはそれを見て体が強張った。が、ぐっと堪える。


「彼は今地下へと監禁している。いくら帝国の人間だからと言って簡単に会わせるわけにはいかない」

「そんな!私達は彼に会いに来たのです!少しでも良いので話をさせてもらえませんか?」

「今すぐには無理だ、とにかく国王からの采配が決まってからだな。それまではそなた達の滞在を認めよう」


「何を!偉そうに……!!」


「エディ!やめなさい。オリオン様のご指示に従うのよ。私達はこの国では余所者なの、この国のしきたりや法律を尊重し礼儀をわきまえるべきです」

「はっ、リリアン様!申し訳ありませんでした」

「ほう?そちらの令嬢はずいぶん話のわかる方だな、礼儀もあるし見目も美しい。うん、気に入ったぞ」

「あ、あ兄上!!…彼女…、リリアン殿にそのような軽口はお止めくださいっ!」

「──何だアラリオン、お前には関係ないことだ。黙ってろ」

「兄上、関係なくありません!この方は、俺の…つが」

「黙れ。お前のような者に何も言う資格はない。下がれ、彼女の前に顔を見せるな」

「なっ、そんな!!お願いします、どうか彼女の側にいさせて下さいっ」


「は??ちょ…!なんなの?あなた?気持ち悪…いい加減迷惑なんですけどっ!」

リリアンが顔をしかめアラリオンに言う。

「全くもってその通りです、この不快な男をリリアン様の目の届く範囲に連れてこないでくれませんか?」


「オリオン様、今また見知らぬ者が…」

皆で話し合っていると獣兵がオリオンに告げに来る。


「なんだと?誰だ?」

「また人間なんですが、そちらの二人の連れと言っております…」

「は?私達の連れ??私はエディと二人で来た…──あ」

「そうですよね?リリアン様と二人で来たはず…──あ」



「君達っ…酷いじゃないか…。いくら私の足が遅いからといって本当に置いていくなんて」


「ごめんなさいっ!レイフ様!すっかり忘れてたましたわ!」

「リリアン様が謝る事ないですよっ、レイフ様が遅いのが悪いんですから」

「くっっっ!エディ殿!そ、それより、ルリス…エイルリスはどちらに」

「ん?君はエイルリス嬢の知り合いか?」

オリオンが不思議そうに見る。

「ええ、私はエイルリスの兄のレイフ・ブランシェットと申します。この度は妹を保護し怪我の治療をして頂いたとお聞きしました。兄として心より感謝申し上げます」

レイフは帝国の最上級の礼を取りオリオンへと頭を下げる。

「そうか!エイルリス嬢の兄上とは、いや此方こそ彼女のには大変世話になっている。彼女はこの村の恩人でもある、俺からも礼を言わせてくれ」

オリオンもレイフに頭を下げた。

「それで妹…エイルリスは?」

「あ、ああ…彼女は」



***



エイルリスは部屋で1人ベッドに腰掛けぼおっ、としていた。

リオンが本当に好きなのはあの女性なのね。

あの女性を見つめる目、とても愛おしそうでたまらないって顔をしてた…私なんかもう目の端でさえ映ってない感じだったわ。

もう二度と前のような優しい眼差しを私には向けてくれないのね。

あなたを(リオンを)失ってから気付くなんて、こんなに好きになってしまってたなんて。

エイルリスの瞳からポタポタと涙が零れる。


コンコン。


ノックが聞こえたがエイルリスはなんの反応もしない。

今は誰とも話したくなかった。


コンコン。


「あの、すみませんが今は誰とも話したくないんです…後にしてもらえませんか…?」

「──ルリス、どうか無事な姿を兄に見せてはくれないか?お前の顔を…」


「!!!」

その声を聞いたエイルリスはドアまで走っていき勢いよくドアを開けた。

「お兄様っっ!」

ドアを開ければそこには懐かしい兄の顔があった。

「ルリス、ずっとずっと心配していた。会いたかった…」

「お兄様、私も、私も会いたかった、です」

そう言うと2人はお互いの温もりを確かめあうかのように強く抱き締めあった。





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