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私をあなたの番(運命)にして下さい  作者: ゆきもも


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㊴カーマインの野望

「エディ!こっちよ、早く」


「リリアン様、危ないので私より先に行かないで下さい!」

「だって2人とも遅いんだもの…日が暮れちゃうわ」


2人。そう、今回の旅にはもう1人が()()()着いて来る事になってしまったのだ。

エディはリリアンと2人きりだと思ってたので不快な顔を隠そうともせずその1人に向ける。

しかも見目も良い所が更に気にくわない…。

まぁ、リリアン様は人を見た目で好きになる様なお方ではないが。


「レイフ様、もっと早く歩けませんか?このようにノロノロと歩かれてはそのうちリリアン様を見失ってしまいそうです…」


「すまない、だが自分のペースで歩きたいんだ」

「あなたのペースなど知りません。私はリリアン様に合わせるのみなので」

「…そうか、わかった。少しペースを上げよう…」

「お願いします。もしついて来れないのならレイフ様は先程のドリスタン領の城にお戻りになられて下さいね、リリアン様と私の足手まといになりますので」

レイフは言い返しそうになったがグッと堪え口を噤んだ。


何なんだこの2人は…

レイフは心の中でため息をつく。

この2人が獣人王国へと訪問する事が決まりそれをある情報筋から耳にし頼み込んで同行させてもらったのだ。

無理矢理連れて来てもらった手前、強く物を言えないレイフは先程から文句も言わず黙々と彼らの後をついて行ってたのだが…。


レイフはエイルリスの兄である。

ある夜、舞台を見に行った妹が時間になっても帰宅せず大騒ぎになった。

しかし、見つかったのは崖から落ち無惨な姿になった馬車のみであった。

御者も侍女も妹のエイルリスの姿もそこにはなかったのだ。

それから何の知らせも安否情報もなく私達一家は奈落の底に落とされたような日々を送っていた。

どんな些細な情報でも欲しかった…だがどんなに手を尽くしても行き先も何もかもわからないままだった。


だが、ある日家の門の側に1通の手紙が置いてあった。

手紙を置いていった人物を見た者はいなく不可解ではあったが差出人を見て手が震えた…

その手紙の主はなんとずっと探し求めていた妹のエイルリスからだったのだ。

手紙の内容は馬車の事故にあい崖下に転落。侍女のネリスが守ってくれたため大怪我をしたが命は助かったと…そして秘密裏に帝国へと来ていた獣人族に保護され王国で手厚い治療を受け現在はほぼ回復しているらしい。


レイフはいつの間にか手紙を握る手に力を込めすぎたのか紙がくしゃくしゃになっていた。手紙の内容に最悪な事が書いてあったらと不安だったからだ…。エイルリスの回復を知り安堵し力が抜ける。

まさかエイルリスが獣人王国に保護されているなんて、国からそんな連絡は一切来ていないぞ…いったいどういう事だ。

この手紙も国を通さず直接ここに届けられていた様だ..。レイフはわずかだが帝国への不信感を初めて感じる。レイフだけでなくそれは両親も同じであった。

手紙の筆跡は間違いなくエイルリスの物だ、兄の自分が間違えるはずはない。


国は何故だか信用出来ない…


何とか獣人王国へ行ける手段はないかと必死で探している時にリリアンとエディの王国行きを耳にした。

この機会を逃してなるものかと同行を懇願した…が、リリアンはともかく、エディの説得に大変な労力を使うはめになったのだ。


レイフの事をあからさまに敵とみなしてきたのだから。

ようやく叶った獣人王国への同行、この期間内に絶対にエイルリスを探しだし連れて帰らねば…そう両親を説得し王国行きの許可を貰い送り出してもらったのだ。


待ってろ、エイルリス…ルリス。必ず兄がお前を無事にブランシェット伯爵家へと連れ帰ってやるからな。


「ちょっとー、早速遅れてますよー、もう置いていきますからね~」

1人心の中で決意していれば遠くからエディの声が聞こえた。

「すまない!待ってくれ!」

レイフはエイルリスを見つけるまでの辛抱と走ってエディとリリアンを追いかけた。



***



1人地下へと拘束されていたカーマインは酷く後悔していた。もう少し慎重に動いていれば…。

己の印からの解放に浮かれ過ぎたな。


カーマインには幼い頃に強制的につけられた魔法の印があった。その印のせいで獣人の力は封じ込められ、ある人物には絶対服従しなければならなく…それはカーマインにとってとてつもない屈辱の人生であった。

どんなに魔法のレベルを上げてもその印は解除する事が出来ず、服従せざるを得ないのならばと、密かに裏である計画を立てていたがそれにも長い年月が必要だった。だがあの女によって印が解除され俺は人間の魔法と獣人の能力2つを使える様に。あいつにも従う必要もなくなった…。


そう思い早急に動き過ぎたのだ。


カーマインの真の目的は獣人王国と帝国の滅亡。

双方の血を持つカーマインだがどちらの国も幼いカーマインを守ってはくれなかった。

獣人王国からはまがい物と排除され帝国からは使い勝手の良い傀儡にされ…そんな2つの国が心の底から憎くて憎くて仕方なかった…

いつか滅ぼしてやる…そう復讐の炎を燃やし今まで行き長らえて来た。


だが、ここにきて趣が変わってしまう。


自分が獣人と人間のハーフだとバレた上に種族までが判明してしまった。これでは何をやってももう自分に疑惑の目が向けられてしまうだけだ。

今まで何年もかけて裏でやってきた事が無駄になるのか?獣人族を捕まえ帝国に奴隷として売り捌き両国の関係を悪化させる計画だったのに...。

帝国には獣人は非倫理的で本能のままに行動するだけの獣であり下等な生き物だと広め、獣人王国にも同胞を拉致し奴隷に落とすという人間残虐さを伝え、人間に激しい憎しみを抱く様に仕向けてきた。


後数年すれば両国間の亀裂は決定的な物となり戦争が起こり混乱の渦へと入っていくはずだった……それを印が解除された解放感からかつい気が急いでしまった。また一から計画を練り直さねばならない、だが俺には魔法と獣人の能力があるきっとすぐに何か良い方法が見つかるさ。


いつか俺の様なハーフを沢山作り上げて最強の国を作りその頂点に立ってやる。全ての生き物が俺の下に這いつくばるんだ…。


カーマインはその夢の国を思い浮かべて恍惚の表情で笑う。


誰にも排除されない、誰からも敬われるそんな俺の、俺だけの居場所をつくり上げるんだ…。





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