↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
土竜・オブ・ザ・シティ  作者: 九木圭人
目覚めし者の夢
84/259

目覚めし者の夢10

 連中が近づいてくるのは音で分かる。既に先程まで俺たちがいた辺りまで来ている。

 スタングレネードからピンを抜き、手の中で三秒カウント。いじられた脳は、この状況でもその時間を正確な間隔で刻んだ。

「ッ!」

 そしてそれを放つ。

 大きな動きではなく、最小限の動作と飛距離。入って来た連中の足元へワンバウンドで到達するぐらいの。

 そしてそのワンバウンドの直後に起爆するようにしたカウントは、俺の脳に仕込まれた戦闘技術とメンタル制御の正確さを物語っていた。


「ッ!!」

 響き渡る爆音と、辺りを満たす閃光。

 それを合図に、エリカが壁ごしに点射。ばら撒くのではなく一発ずつ正確に。

「タンゴダウン!」

 彼女が叫んで飛び出すのに倣って俺も続く。

 飛び出した先にあったのは形勢逆転だ。

 ついさっきまで俺たちを追い詰めていたはずのLD兵が床に伏せ、エリカが正確に一体ずつに留めの一発をくれながら飛び越えていく。


「ッ!」

 その銃声に混じって不意に背後から音。

 反射的に振り向いた先に、このバラックに入り込もうとするLD兵が二人。

「コンタクト!!」

 叫びながら、その二体のうち近い方に二発立て続けに撃ち込む。

 軽い衝撃がストック越しに肩の内側を叩き、そのショックが残っているうちに銃を左側にやや傾斜させ、その動作で僅かに左にズレた銃口が、ポイントマンがやられたことで一瞬足を止めたもう一体に向いたことを確かめつつ更に三発。

「タンゴダウン」

 こちらも宣言しながら即座に振り返ると、俺の輪郭を避けて撃とうとしていたエリカが銃をローレディに戻して踵を返す。


「CPよりアルファ、入り口側が封鎖され、出口側のゲートに敵増援が接近している。予定のルートは使用不可能だ。その正面のバラックを抜けて一区画先まで前進。突き当りで右折し、水路にかかる橋を渡って向こう側の区画へ渡れ。簡易宿泊所の裏手から下水道跡に入れアウト」

 どうやら後退は出来ないようだ。

 加えて出口もないとなれば、言われた通りに別ルートでの脱出を目指すより他にない。

 ――と、即座に思考から反応に切り替え。


「左手道路上に敵!」

 叫びながらそちらに射撃を浴びせ、同時に足を止めず正面のバラックへ。

 バラック内は先程よりも広いが、かと言って隠れる場所や立て籠もれるようなものがある訳ではない。

「正面!!」

 突入と同時にエリカが叫び、そのバラックの反対側の入口から現れたLD兵に銃撃を浴びせていく。

 そのままこのバラックも通り抜けると、今度は一直線の道が目の前に伸びていた。

 この区画の中では広い通りだろう、車二台がすれ違える広さの道路が真っすぐと奥へと伸びていて、突き当りの二階建てに至るまでのその道の左右には今抜けてきたのと同じようなバラックが立ち並んでいる。


 誰もいないはずがない。

 だが、ここを抜ける以外に目的地に向かう事は出来ず、そして目的地に辿り着かなければいずれ包囲される。

 なら、やる以外に選択肢はない。


「ここを抜けるよ!」

「了解だ」

 バラックを飛び出して散開。一番手前左側のブロック塀にエリカが、道を挟んで反対側の同じようなブロック塀には俺が身を隠す。

 直後、その身を隠したブロック塀の角が乾いた音を立てて爆ぜる。一発、そしてその後複数連続して。


「ッ!」

 そちらに目をやった時に見えた、エリカが隠れているブロック塀のある二階建ての家――ここではそういう扱いになるのだろうバラックの張り出したバルコニーのような場所にLD兵が一人、こちらをその銃口と共に見下ろしている。

 と、それを見上げた視界の隅、頭を出そうとしたエリカが同じようなブロック塀への着弾で慌てて引っ込める。

 再度こちらの着弾。塀から頭を出さずに左手に銃をスイッチして反撃を実施するが、如何せんそれだけで当てるのには随分と距離がある。


「タンゴダウン!」

 エリカが叫び、それから自らの正面前方にあるバルコニーへと銃撃を浴びせると、その上にいたLD兵が慌てて引っ込む。

 直後、彼女のハンドシグナル=こちらに来て、建物の中を抜けろ。

「ッ!!」

 敵が引っ込んでいる今しかチャンスはない。

 彼女の方へと道路を横切ると、数m先の地面が水柱のような土煙を上げた。


「ここから入れる。中の方が敵の目を誤魔化せるはず」

 俺を迎え、即座に踵を返してブロック塀の切れ目に足をかけながら、彼女はそう言って中へ飛び込む。

 それに続くと、恐らくこの辺はかつての――あくまで周囲と比べて――高級住宅地だったのだろう。ささやかながら庭、というかスペースがあり、ボロボロに朽ち果てたエアコンの室外機が放置されている。

「ッ!」

 不意に、その室外機のすぐ上の窓からLD兵が姿をのぞかせ、俺と目が――そしてその後には互いの銃口があった。


「くぅっ!!」

 ガラスの砕け散る音が銃声にかき消される。

「タンゴダウン」

 生き残ったのは俺だった。だが、今のでこちらの位置がバレた可能性はある。何にせよすぐに移動するべきだ。


 恐らくLD兵が出入りに使っていたのだろう、開け放たれた扉から室内へと滑り込む俺たち。

 元々何に使っていたのか分からない十畳ばかりの空間が広がり、左手には階段。前方右手に道路に面した出入口と、正面にもう一部屋かトイレにでも通じているのだろう扉。

「敵だ!」

 僅かに開いたその扉に、叫びながら半分近くになったマガジンの中身を全てぶちまける。

 薄い木製のドアが千切れ飛び、壁に押し付けられるように崩れ落ちていくLD兵の姿が見えた。

 奴の手から、俺たちに対して今しがた自分がされたようにするべく向けられていた銃が滑り落ちて扉の残骸に埋もれていく。


「マガジンを替える」

「ナイスキル」

 これで一階はクリア。エリカを先頭に二階に続くL字の廊下を登る。

 角を曲がってすぐ、彼女は身を伏せ、同時に腰から取り出したものを投げつける。

「フラグアウト!」

 宣言、そして一拍遅れの爆発音。

 それとほぼ同時に階段の一番上から銃口だけを出しての射撃。


「よし、ダウン」

 彼女の声が銃声と交代して、再び俺たちは階段を駆け上がった。

 登り切った突き当りにある開け放たれた部屋、そしてその手前右側にあるこちらも開け放たれた部屋。

 そのどちらにもLD兵が転がり、左手の扉からも飛び出して来た一体が廊下に伏せていた。


(つづく)

投稿遅くなりまして申し訳ございません。

今日はここまで

続きはいつもの時間帯に

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。