目覚めし者の夢11
「二階クリア」
手前の二部屋は目視で確認し、奥の一部屋へと飛び込む。先程こちらを狙って来たバルコニーはこの部屋のものらしい。
部屋の入口に倒れているLD兵を踏み越えたところで、件のバルコニーの方へ。
「「ッ!!」」
同時に動く俺たち。
道路を挟んだ対面の家のバルコニーに再び現れたLD兵。まだこちらを見つけていないそいつに対して、部屋の奥から先制の一発。
「タンゴダウン!」
そいつの倒れたのを確認して、屋内からバルコニーを確認。
分かった事:今のところこの場所を狙撃できる場所に敵はおらず、このバルコニーは隣の二階建てへと通じている。
「ここを抜ける」
「了解」
今度は俺が先頭に立って出る。
トタン屋根の上に伸びている長い木製の足場。バルコニーから連絡橋へ、そしてまたバルコニーへと変わる。
しかし、途中で橋から隣の家の屋根へと飛び降りる。
この辺りは壁も屋根もコンクリート製だ。
そして、バルコニーのある二階部分の窓に、人影が動く姿が見えていた。
後続のエリカが同じコースで俺の横まで来たのを確認し、頭上の開け放たれた窓にフラググレネードを投げ込む。
中からの爆発音。何か大きな質量が転がる音。
バルコニーに戻ると、一体のLD兵がバルコニーの錆びだらけの手すりに、干された布団のような姿で引っかかっていた。
背中側は元がどういう姿だったのか分からないほどの損傷。恐らくフラググレネードの炸裂から逃れようとしてバルコニーに飛び出した瞬間に時間切れとなったのだろう。
そのバルコニーから中へ。恐らく俺が目撃したものだろうもう一体のLD兵が、こちらは正面側を見分けがつかない程――どのLD兵も同じ見た目であることは別として――損壊した状態で倒れている。
この部屋にはこの二体だけ。元々植物でも育てていたのか、いくつかの棚とグレネードの弾殻の被害を受けなかったボロボロの植木鉢がいくつか残っている。
その棚の間にある出入り口から隣の部屋へ。
「ッ!!?」
棚が邪魔で外からのクリアリングが出来なかったそこに足を踏み入れた瞬間、突然左側から現れた手が、プライマリーの銃身を掴んで引き寄せた。
「クソッ!!」
壁にぴたりと張り付くように待機していたのか、或いはたまたまタイミングがあったのか、そのLD兵は俺の銃口を握って引き寄せることで、こちらの動きそのものを封じようとしている。
「ッ!」
咄嗟に右手を揉み合っているプライマリーから離す。
左腕一本と両手。当然結果は分かり切っている。
「放せ!」
その結果と同時に、サイホルスターから引き抜いたセカンダリーを、吐息がかかるぐらいの至近距離にあるそいつの頭に二発叩き込んだ。
「ちっ――」
完全被甲の9mm弾が奴の頭を貫き、人間そっくりな外殻の、人間に似つかわしくない中身を辺りにぶちまけさせる。
動かなくなって、スローモーションのように崩れ落ちていくそのLD兵からプライマリーをもぎ取ると、その背後をエリカが通過していく。
俺たちがもみ合っていたすぐ横、下に降りる階段に差し掛かり、ここからでは見えないその下に向かって三発放つ。
「無力化」
そう告げた彼女を追って下へ。階段の一番下、壁にもたれかかるようにして動かなくなっているLD兵を踏み越えて、ダイニングと言うべきだろう場所に降りる。
「室内クリア」
素早くクリアリングした彼女のすぐ後ろを抜けて、外に通じる扉へ。
僅かに開けて外を確認。突き当りの丁字路はすぐ隣だ。
「進路クリア。出るぞ」
扉からするりと滑り出し、即座に丁字路に置かれたコンクリートブロックの山の後ろへ。
同じくすぐ前のセメント袋の山にエリカが入った所で、右手側前方の建物=今まで中にいた建物の向かい側の屋根の上に二名のLD兵がよじ登って来た。
「右手!屋根の上!」
叫びながら、屋根の稜線を超えた左側の奴に照準。
目の前のコンクリートブロックが乾いた音を立ててはじけ、反撃のマズルファイアの向こうでその射手が屋根から滑り落ちていく。
「ッ!」
仲間がやられたことに気付いたか、右側のもう一体が屋根の頂上を盾にするように後退し、同時に何かを放る。
「「まずいっ!!」」
同時に叫ぶ俺たち。即座にその場に伏せて頭を覆う。
直後の爆発音と、それに続く無数の衝突音。
フラググレネードの空中爆発。破片を最大限ばら撒くための=多少の障害物を無視して敵を加害するためのそれを俺たちの選んだ遮蔽物が遮ってくれたのは、偏に幸運というより他にないだろう。
「このっ――」
直後、エリカが起き上がり効果を確認するべく頭を出した屋根の上に向けて引き金を引いた。
構えと発砲を一瞬で同時に行った故の着弾=着弾点が僅かに奴の下にずれ、そのままフルオートで放たれた銃弾がミシンで縫うように一列に弾痕をなして屋根を駆けあがっていく。
「よし」
そのラインが慌てて頭を引っ込めようとしたもう一体の顔面を縦断し、奴がそのまま後ろに吹き飛ぶ。
これで前方に敵はいなくなった。後は正面に見える件の橋を渡って向こう岸に渡るだけ。
「よし、移動する」
「了解だ」
動き始めた彼女のすぐ後を追い、橋に向かって走り出す。
「ッ!!」
直後左手の扉が開く。
俺とエリカの間の扉。蹴り飛ばしたように外側に大きく開いたそこから出てきたものの正体はここからでは開いたそれで見えない。
「伏せろっ!」
だが、この状況で飛び出してくるのが、味方である可能性は考えなくていい。
叫びながら引き金を引く。
結果として、今回の賭けは成功だった。
奴を挟んだ先にいるエリカを避けるため一歩右に飛び出しながら、左手の壁に向かっての射撃。穴の開いた扉の向こうから宙へ向かってフルオートで弾が打ち上げられていき、やがてそれも止まって一体のLD兵が倒れた。
「助かった。ありがとう」
その扉の向こう、背後の異音と恐らく俺の声に振り向いたのだろうエリカは、襲撃者に対して反射的に銃口を向けていた。
(つづく)
今日はここまで
続きは明日に




