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土竜・オブ・ザ・シティ  作者: 九木圭人
スリーカード
71/259

スリーカード28

 先制攻撃、そして発砲許可。

「ッ!」

 その爆発で後続から孤立した前衛に狙いを定めて引き金を引く。錐もみするように後ろにすっ飛んだそいつに驚いて、そのすぐ横の男が身を屈める――次の瞬間には即座に横にスライドした銃口によってその姿勢のまま隣の仲間の後を追った。


 そこから煙の切れ目を縫って団地の方へ。先にそちらに銃を向けていたエリカが、これまた爆発にギリギリで飲み込まれなかった他のスピットファイア構成員を始末したところだ。

「っと」

 サイトの中で、ようやく向こうの反撃が始まった。

 と言ってもこちらを見つけた訳ではない。

「うおああああっ!!!」

 一人のチンピラが、叫びながら銃を空に向け、フルオートで弾をばら撒き続ける。

 まるで奇妙な踊り――銃を乱射しながら、時折くるくる回るように向きを変える。


「……」

 恐怖に駆られたのだろうその男にサイト内の光点を重ね合わせて引き金を引く。

 サイレンサーを通したくぐもった銃声は奴の騒がしいそれに紛れ、僅かな反動だけを俺の肩に残して、乱射魔の頭を吹き飛ばした。


 そしてそれが、生き残りたちの精神を挫いたようだった。


 最初の爆発でおよそ半分を失ったことと、ヤケクソに弾をばら撒いた男の頭が目の前で撃ち抜かれたことが決定的だったのだろう、連中は雪崩を打って、我先にと団地の中に駆け戻っていく。

「……」

 その背中をサイト越しに見守る。

 今は撃たない。俺たちの役目は助けが来るまでここを守る事だ。逃げるのならば逃げればいいし、そうであった方が俺たちも助かる。

 ――だが、当然そんな簡単にはいかなかった。


「ッ!!」

 聞き覚えのある大きな銃声。

 団地の中から響いたそれは、俺にも、当然その隣にいたエリカにも聞こえていた。

 そしてその直後のエリカの報告。

「出入口付近で動きあり」

 言われて銃を向けた瞬間、暗闇の中から空気の抜けるような音が立て続けに響いて、何かが放たれたのが見えた。


「なんだ?」

 緩い放物線を描く複数の弾体。それが空中で炸裂し、辺り一帯を真っ白な霧に包む。

「スモーク!」

 放たれた煙幕がこちらの視界と射界とを遮り、僅かな隙間から明らかにそれまでと異なる訓練された兵士が数名滑り出してくる。


「新手だ!」

「注意して!今までのとは違う!」

 放たれた煙幕は隙間なく、しかし重ならず、そしてその下を進む兵士たちもその事をしっかりと把握しているのか、風が無いが故に散らないでいるその煙幕の下を巧みに移動して遮蔽物まで転がり込む。

「くっ……!」

 そのうちの一人を捕捉し銃を向けた瞬間、そいつと目が合った――同時に銃口も。

 それに気づいた瞬間、俺のすぐ前を音を立てて銃弾が掠めていく。


「見つかったか!」

 慌てて首を竦め、反射的にそちらに打ち返す。

 その一発が合図になったように、一斉に民家の壁がバラバラと音を立てて銃弾に削られていく。

「ちぃっ!」

「やってくれる」

 俺とエリカもそれらに反撃を返す。幸いこちらの方が高所の分地の利はある。

 連中の弾が腹の壁や建材を撃ち、或いは頭上高くを飛び越えていく中で、煙幕の切れ目に見えるマズルファイアめがけて撃ち返していく。

 敵の練度は高い。だが数は先程までの半グレたちよりも少ない。

 精々5~6人しかいないのなら、何とかここで凌ぐこともできる――そう思った矢先、俺たちの視界に強烈な光が飛び込んできた。


「わっ!!」

 思わずエリカが叫ぶ。

「クソッ!投光器か!!」

 俺もまた叫び、その正体を毒づく。団地の出入口にいるもう一人。

 恐らく練度の高い方だろうそいつが、先行した他の兵士から指示された場所に大口径の投光器を向けている――その指示された場所が俺たちの伏せている場所を正確に捕捉した情報であることは言うまでもない。


「いたぞ!!」

「あそこだ!殺せ!!!」

 そして厄介なことに、生き残っていた半グレたちもそれで勢いづいたようだ。

「クソ!眩しいな」

 俺たちの反撃の精度が落ちたことを知って、投光器を囲むように展開した半グレたちが一斉砲火を浴びせてくる。

「くぅっ!」

 一人一人の精度は大したことが無くとも、あれだけの数が揃えば多少の精度などいくらでも補える――それこそ、伏せた状態での射撃すら躊躇する程には。

 そしてそうやってこちらの手を封じているという事は、その間連中は撃たれる心配をせずに移動できるという意味だ。


「潮時だね……!」

「そうだな!」

 答えながら寝返りを打つように仰向けに転がり、ポーチから取り出したスタングレネードを取り出すと、同じ動作で横に避けていたエリカも何かを取り出した。

「フラッシュバン!」

 連中の方を見ずに投げる。

 バン、と炸裂音が響き、それを合図にエリカが取り出していた起爆スイッチがカツンと乾いた音を立てたのが、銃声と怒号の中でも奇妙に聞こえた。

 直後、駐車場は再度爆発に包まれた。レッドラインの残りの分=こうなった時の脱出用が一斉に点火されたのだ。


「よし、脱出する!」

「了解だ」

 俺もエリカも転がって陸屋根の中央辺りまで逃れ、そこから足での移動に切り替える。

「アルファ1よりオールコールサイン。第一次防衛線を放棄!第二次防衛線に後退する!!」

 叫びながら、返答を待たずにロープをとり、ハーネスに繋ぐのももどかしくそのまま壁面を駆け下りるようにして下へ。

 着地と同時にハーネスを外して走り出した俺たちのすぐ後ろをキュンと音を立てて銃弾が掠めていく。


(つづく)

今日はここまで

続きは明日に

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