若き冒険者14
彼女を追うように俺も中へ。突入直後の彼女の背中をカバーするように背後に銃と目を向けクリアリング。
一瞬で終わり=敵が存在しないことを確認して進行方向にそれらを戻すと、エリカが入口と対面にある壁際の柱に向かいながら進行方向に向かって数発発砲しているところだった。
「タンゴダウン!」
同時にエリカの宣言。彼女がそのまま柱の陰に入ったのを合図に、俺も入口側の壁際の柱のカバーに入り進行方向を確認。
「ッ!!」
即座に頭を引っ込める。
都市計画課の奥。デスク二つを向かい合わせた島が二列並行で伸びているそこに陣取ったLD兵たちの反撃がまさに始まる瞬間に遭遇していた。
「くっ!」
直前まで俺の目の前だった柱が銃声と共に爆ぜる。
見えただけで敵は三人。それぞれが遮蔽物を用いている上にこの弾幕が止むまでは迂闊に反撃など出来ない。
それに行きついた時、ゴトンという耳障りな音が銃声に混じって耳に入った。
「ッ!!」
音の主はすぐ近くにいた。
俺の足元にゴロゴロと転がって来るそれ=ピンを抜いたフラググレネード。
「クソッ!!」
唯一父親に感謝した瞬間かもしれない。足元に転がって来た楕円形のそれを咄嗟に部屋の一番後ろに蹴り飛ばせたことは。
「ちぃっ!」
耳を掠めていく銃弾に慌てて柱の陰に戻り、同時に部屋の一番後ろで爆発音。
そしてそれが、連中の弾幕が止むのとほぼ同時=反撃開始の号砲。
「ッ!」
再度柱から銃身とサイトを出して向こうを狙う。
体を最適な角度に傾け、見える範囲で敵を探す――必要もなかった。キャビネットとデスクの間。目の前のデスクをカバーにしながらリロード中のLD兵の姿をサイトに捉え、光点が重なると同時に引き金を引く。
エリカも同様に――こちらは立ち位置の関係上左手にプライマリーをスイッチして――銃撃を浴びせている。
「「タンゴダウン」」
宣言は同時。直後に数発向こうから発砲されるが、誰もいない空間を銃弾が飛んでいくだけだ。
「……」
もう少しだけ体を露出させる。奥の部屋の右半分がこれで確認できるようになった。
そこには撃って来たはずの敵は見えない。
「敵兵一名が扉から後退している」
宣言し、それを追うようにエリカが銃撃する。
一発、二発――そこで彼女の銃口が降り、代わりに俺が前進。
二つの並行した島の間、エリカが始末したのだろうLD兵が横たわる。
飛び越えついでにそいつの頭に一発。仕留め損なった可能性が無いとも限らない。
幸い、そいつに関しては徒労に終わった。
「ッ!!待って!!」
エリカが叫び、同時に自らの足元へ発砲。
彼女がいる場所は、俺が撃ったLD兵のいた場所だ。
「……よし、無力化」
小さくため息をつきながらそう言って俺の方を見る。
「フラグ持っていた。自爆しようとした」
今回は彼女に助けられた。
もう一体も保険に一発撃ち込み、それから廊下へ。部屋を出てすぐに上に登る階段。これまでと違い廊下がそのまま階段に繋がっている。
「ここから四階へ――」
一歩目を踏み出した瞬間、その一番上、バリケード代わりに横倒しになったロッカーの後ろからLD兵が一体顔を出した。
「いたぞ!」
叫び、そして撃つ。こちらに向けられた奴の銃が、階段を一度バウンドして滑り落ちてくる。
――そして、その後を追うようにピンが抜けたフラググレネードも、また。
「グレネード!!」
叫び、それから踵を返して走り出す俺たち。
今しがた抜けた都市計画課目指して走り、その扉の前で背後の爆発音を聞きヘッドスライディング。
爆発後にやって意味があるのかは分からないが、俺もエリカも恐らく本能がそうさせ、そして幸い傷を負わなかった。
「無事か……?」
「うん。なんとかね」
お互いにそれを確かめ合ってから、舞い上がった土埃に少しむせる。
爆発自体はそれほど近かった訳ではないが、長年放置された埃はこれだけの動きでもしっかり舞い上がっていた。
「さて……」
今度こそ階段に足をかけて登り始める。
LD兵が現れた場所はゴールではなく踊り場だった。180度折り返して更に上に伸びるその階段を同じように登っていく。
「アルファ1よりCP。旧市庁舎三階で階段を発見。四階に向かっていますオーバー」
「CPよりアルファ1。対象の少年はその階段を登り切った先の突き当りにある会議室に立て籠もっている。慎重に行動せよオーバー」
「アルファ1了解。アウト」
階段を登り切った先に、三階と同じような広さの廊下。
先程までと異なるのは、今度は途中で折れ曲がらず真っすぐにゴール=例の少年が立て籠もっているという会議室が見えているという事。
「コンタクト!」
そしてその手前、廊下に並べられたロッカーやコンテナの後ろにいたLD兵四体が、追いついた敵部隊に感づいて振り返り応戦したこと。
「ッ!」
階段の一番上から数段前で身を伏せ、その高低差を盾にとって反撃する。
自分の足元より遠く、しかも距離のある相手を狙い撃つのは至難の業だ。俺より遥か前に奴らの弾が着弾し、既に経年劣化でボロボロだと思われるタイルを砕くだけに終わっている。
「くぅっ……」
こちらからも連中のマズルファイアを目印に撃ち返すが、積み上げられた即席バリケードは、その後ろに入られると正確な位置が全く分からなくなる。そこにいると思った場所に撃ち込んでも、そのすぐ近くの別の場所から再度撃たれる。
「なら……ッ」
残っているフラググレネードに手をかける。
――どうせ少年は立て籠もっている。つまり、廊下なら使っても問題はあるまい。
(つづく)
今日はここまで
続きは明日に




