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土竜・オブ・ザ・シティ  作者: 九木圭人
若き冒険者
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若き冒険者15

「フラグアウト!」

 叫んで大きく山なりに放る。

 ここから二番目に近いバリケードの裏へ消えるグレネードの軌道。

 そしてそこから飛び出す一体のLD兵。

「いた!」

 エリカが叫び、同時に発砲。

「タンゴダウン!」

 グレネードにあぶり出されたそのLD兵が奇妙なステップを踏みながら倒れるのは俺にも見えた。

 直後、その姿を隠すように爆発したフラググレネードが粉塵を巻き上げる。


 同時に敵の射撃が中断。ならこの機を逃す手はない。

「移動する」

 宣言し、それまで守ってくれた数段を駆け上がって一番近くのコンテナへと滑り込む。この廊下の左右にある部屋はすでに封鎖されているという事をその時初めて知った。

 これはいい。窓もないそれらの部屋が封鎖されていれば、横から撃たれる心配はない。

「ッ!」

 それに気づいた直後、正面からの銃撃がコンテナの上を掠めていく。

「ちぃっ!」

 コンテナの左横から顔を出す。数m奥のバリケードの向こうにLD兵が一人。

 咄嗟に銃を左手にスイッチ。その場に伏せて銃を出すと、そいつのいた方向に向けて引き金を引く。

 と、今度は別方向からの銃撃。場所はこのコンテナの正面。

 しかしそれはすぐに止む。

 恐らく射手は俺を撃つのに集中して身を晒したのだろう。先に俺を撃っていたLD兵がこちらに弾をばら撒きながら、そのもう一体の方へ合流しようとしている。

 そしてそのLD兵を狙撃した張本人=エリカはその隙を逃さず、俺のいるのとは廊下の中央を挟んで反対のバリケードに身を隠す。その手には先程俺が放ったのと同じもの。


「フラグアウト」

 彼女の手を離れたフラググレネード。

 飛んでいくのは、今撃たれたLD兵と、それを助けに向かったLD兵とがいるだろうバリケードの裏。

「……」

 今度は誰も出てこなかった。

 バン、と炸裂音だけが響き、それきりだ。


「ッ!!」

 代わりに現れたのは、廊下の一番奥に陣取ってこちらにフルオートで撃ちかけてくる最後のLD兵。奴が持っているのは一般兵の持つそれと異なるMG3機関銃だ。

 ベルト給弾で弾を吐き続けるそれを土嚢とロッカーとを積み上げたバリケード上にバイポッドで設置し、凄まじい勢いで銃弾をばら撒き続けている。


「……ッ!!」

 俺たちはその場に伏せる。7.62mm×51弾に対して、ここにあるバリケードは脆弱過ぎる。

 幸い、奴の弾は俺たちに当たるように打てばここに届く以前に別の遮蔽物に当たる。

 だが同時に、こちらからも狙いにくい場所を奴が陣取ったのもまた事実だった。こちらから奴を狙い撃とうとすると、確実に体を晒す=反対に撃たれる危険を冒すことになる。


「「……」」

 エリカと一瞬だけ目が合う。同時に彼女のハンドシグナル=前進する。援護せよ。

 即座に了承。残弾はまだ十分。フルオートに変えてそのタイミング=奴の銃撃が途切れる瞬間を待って、カバー付きの手鏡を出し、その手元についた伸縮式のバーを伸ばす。所謂自撮り棒に近い構造のこれは、現代の技術でも簡単に作れるだろう。使い方も勿論シンプルだ。これの反射で敵の位置を探ればいい。

 響き渡る轟音が途切れ、敵の頭が遮蔽物の向こうに隠れる。ベルトの弾が切れたのか、或いは何らかのトラブルか。


「よし!」

 だがどちらでもいい。自撮り棒の鏡を手放して、フルオートの指切りで奴に数発ずつ撃ち込む。

「……ッ!!」

 当たることはない。だが、射撃を再開しようとしたそいつの頭を再度下げさせて土嚢の下に伏せさせるだけの効果はあった――そして、エリカが奴に見られることなく射線の通る位置まで移動する時間を稼ぐことも、また。

「マガジンを替える」

 インカムに宣言して、先程まで彼女のいた隣の遮蔽物に飛び込む。

 直後こちらの弾が尽きたと気付いた相手が横薙ぎにするような銃撃を開始。壁が爆ぜ、床がめくれ上がり、撃ち込まれた遮蔽物がボロボロになって崩れていくのが、移動時に拾った手鏡でよく分かる。


 そして奴の目が俺のいそうな場所に注がれている=より近く、そして射角の外にいるエリカから外れているのも、また。


「フラッシュバン!」

 それを認識した時、恐らく奴の意識の外からのその宣言。

 そして迸る閃光が、MGのすぐ上で炸裂した。

「!!?」

 そして続く複数の銃声――ただし5.56mm×45の。

「タンゴダウン」

 そしてインカムに入る声。

 頭を上げた俺に振り向いて手を振るエリカ。


「ナイスキル」

 彼女の下に向かう。まだシュウシュウと音を立てて陽炎に包まれているMGの後ろで、それを操っていたLD兵が大の字に倒れていた。

 そちらから視線をその奥=目指す会議室の扉に向ける。


「いよいよだね」

「ご対面だ」

 固く閉ざされたその扉の向こうに例の少年がいる。銃声が止んだこと、扉の前で声がしていることから籠城中の少年が先手をとろうとする可能性を考え扉の前には立たない。

「CPよりアルファ」

 さて扉の向こうはどうなっているか――その答えは尋ねるより先にやって来た。

「ドローンで扉の向こうを確認した。その扉は塞がれている上、扉にはトラップが仕掛けられている可能性がある。部屋の後ろ側の壁が劣化しているのが確認できる。右手に移動してそこを爆破して突入せよオーバー」

 少年も流石に扉を開けて出迎えてはくれないという事か。


(つづく)

今日はここまで

続きは明日に

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