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土竜・オブ・ザ・シティ  作者: 九木圭人
若き冒険者
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若き冒険者13

「了解アルファ1。LD兵が数名、そちらの一階に侵入しようとしている。注意しろアウト」

 先程の無人機に通報されたのか、厄介なのがやって来る。

 そして更に厄介なことに、もう一つの階段に向かうためにはそのLD兵が侵入しようとしている一階のフロアは二階部分が吹き抜けになっていて、目指すもう一つの階段へはその吹き抜けをぐるりと囲むキャットウォークを抜ける必要があるという事。


「下の警戒を厳に」

「了解」

 廊下を抜けてキャットウォークに出た瞬間、それが意味を成した。

「コンタクト!」

 エリカが宣言と同時に銃口を下に向けて射撃開始。

 俺もそれに続こうとして銃を構え、即座に引っ込む。

 一階のフロアに展開した敵部隊はこちらが数で劣ることを知ってか、猛烈な反撃を加えてくる。

「なら……」

 銃弾で猛烈に削られていく手すりから体を離し、腰のグレネードポーチに手を伸ばす。

「フラグアウト」

 宣言してピンを抜き下へ。

 放り投げる必要はない。ただ落とせばいい。


「ッ!」

 一瞬止む銃声。直後に響く炸裂音。

「よし!」

 銃撃が再開される前に再度顔を出して下を確認する。どうやら今の投下で一体仕留めていたようだ。

 そしてもう助からないと判断したか、他のLD兵も自らの身を隠す方を優先している。

 見えているのは三体。そのうちの一体が俺に気付いて銃を向ける。

「ッ!!」

 一瞬の交錯。奴よりも俺の方が僅かに早かった。

「タンゴダウン」

 直後もう一人が俺を狙おうとして、別方向からの銃撃に頭をのけ反らせてその場に仰向けに倒れる。

「ナイスキル」

 すぐ横の相棒に隙を晒したのが運の尽き。

 そして既に数の優位を失っている最後の一体は、どこかに増援を呼ぼうとしているのだろう。長机とコンテナの後ろに隠れようと移動したところでその足を撃ち抜かれて転がった。


「……させるか」

 奴の手が無線機に伸びる。

 それを済んでのところで阻止できたのは大きかった――自画自賛だが、あながち間違いでもないだろう。

 ようやく無事を確認してキャットウォークをぐるりと回る。

 入って来た時と同様の廊下に入り込み、そのすぐ先にある階段を再度登る。


「またかよ……」

「歩かされるね」

 まるで各駅停車。こっちの階段は三階に登り切った所で封鎖されている。

「アルファ1よりCP。こちらの階段は三階より上が封鎖されています」

「了解だアルファ1。もう一つの方の階段は通れるはずだ。またそちらに戻れ。その階でLD兵と遭遇する可能性がある。十分に警戒して進め」

 そう言えば、あのライフル魔は四階にいる。つまり、もう一つの方の階段は生きているはずだ。


「アルファ1了解」

 階段を出てすぐに現れたのは、日本のオフィスと変わらないような内装の廊下だった。

 ここが一層と地続きの階だからだろう、一定距離で設けられた窓からは光が差し込み、電気の供給のないこの場所でもある程度の明るさを維持している。

「階段は向こうみたい」

 エリカが指したのは今の階段から見て左手側、L字に曲がった廊下の向こう。

「気を付けて、音がした」

 その廊下の手前で、声を殺してエリカが囁いた。

 答える代わりに足を慎重に下ろす。マットの敷かれた床ではあるが、それでも足音はゼロにはならない。


「……」

 そして差し掛かったL字コーナー。エリカが無言でケーブルを取り出す。

 通常扉の向こうを確認するための内視鏡のようなそれは、こういうコーナーでも効果を発揮する。

「……前方にバリケード。敵影確認できず。バリケード手前右手に室内への入口。開扉状態」

「了解」

 内視鏡が引っ込む。代わりに俺が出て前方をクリアリング。

 彼女の報告通り廊下の数m奥には事務机やコンテナを積み上げたバリケードが形成されていて、向こうの様子はそれより上=俺の首より上の高さしか見えない。

 そのすぐ横、まるで抜け道のようにぽっかり開いている――というより取り払われている――横引きの扉。そのすぐ上に表示板=都市計画課。

 野放図に広がり続け、遂には本来の町全体を覆ってしまった第一層。そこから直接アクセスできるようになった階に置かれている都市計画課――ひどい皮肉だ。


「……!」

 そちらに向いていた視界の隅に一瞬見えた影=バリケードの向こう側の動き。

 反射的に振り向き、銃口を同時に指向。

「コンタクト!」

 そして叫び、同時に発砲。

 同じようにこちらを見たLD兵が、バリケードの隙間から銃口を突き出してきていた。

 その銃口から逃れるように、都市計画課とは反対の壁に飛びながら銃弾をばら撒く。奴の巨大なマズルファイアがバリケードから噴火のように立ち昇り、それが数発続いた後に消えた。

「タンゴダウン!」

 同時に奴の頭が後ろに大きくのけ反り、後ろ向きに倒れた。

 即座に駆け寄ってくるエリカ。銃声は恐らくこの階全体に響いている。ならば長居は不要だ――現にいくつもの足音がバリケードの向こうから近づいてくる。


 きっと彼女もそれを聞いているのだろう、何も言わずに都市計画課の入口前に移動。

 俺も彼女に倣い、バリケードに近い側で、そちらに背を向ける形で入口横に着く。

 こうすることで見えるのは入口よりバリケードから離れている室内=突入後の進行方向に目を向けた場合背中を晒す場所。

 幸いここから見る限り何もないが、念には念を入れるべきだろう。スタングレネードを取り出して向かい合ったエリカに見せると、彼女も同じものを取り出している。

 本当はフラググレネードを投げ込んでもいいのだろうが、万が一捜索対象の少年がいた場合それでは困る。


 一瞬の目配せ。ピンを抜き、一拍置いてから俺が見えている方向にそれを放る。

 それから更に一拍置いてエリカが続く――進行方向へ。

 直後、立て続けに炸裂する閃光。そして爆発音。

 ほとんど連続しているそれらのうち二回目を合図に、エリカが室内に滑り込む。


(つづく)

今日はここまで

続きは明日に

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