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土竜・オブ・ザ・シティ  作者: 九木圭人
若き冒険者
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若き冒険者12

「なんで奴に拘る?」

 今度はこちらから切り出した。

 任務を達成したい。しなければならない――その気持ちは俺にも分かる。

 だが、帰って来た答えはその類ではなかった。


「……家族が依頼しているから」

「家族?」

 そのありふれた言葉の意味が分からず、オウム返しにする。

「大事なものなんでしょ?……家出しても、死ぬ前に会いたいぐらい」

「ああ……」

「だから、やっぱり会わせなきゃって……そう思ったからさ」

「……成程」

 彼女にとって家族というものがどういうものなのか、それはよく分からない。

 だが、少なくとも俺よりはそれを大切に思っているという事だけは分かった。


 それきり会話を切り上げて、俺たちは旧市庁舎の石垣部分を登っていく。

 建物に対して横切るように伸びる坂を登り切った先には、コンクリートバリアが並べられ、その後ろに錆びついた汎用機関銃が一丁設置された、即席の機関銃陣地。

 そしてその奥には、恐らくそれらが設置された時からずっとそのままなのだろう、来庁者か職員の車両が数台だけ残された駐車場。そしてその向こうに旧市庁舎の建物が、一層の床と地面とを繋ぐようにしてそびえ立っている。

 実際には繋いでいるというよりも貫通していて、ここからでは見えない三階、四階部分が一層に突き出している。奴が逃げ込んだのはその一層の向こう側だ。


「CPよりアルファ、そちらとは反対側から無人機部隊が、一層側から市民ホールのとは別のLD兵部隊が侵入している。中での戦闘に注意せよ」

「了解」

「また内部に侵入後、少年を発見した場合かそれ以上の作戦継続が不可能と判断した場合は合図を送れ。救出チームを一層に派遣する」

「アルファ1了解。アウト」

 今更止まることは出来ない。それにどの道、後ろに下がっても退路は断たれているのだ。

 ならば前に進み、一層に出て救出チームに拾われた方がまだ助かる目があるというものだ。


 駐車場を抜けて数段の階段を登り、日本の市役所なんかとほとんど変わらない入口の自動ドア――もっとも、こちらは根こそぎ破壊されているが――をくぐれば、中は広々としたフロアだった。

 恐らく先程の機銃陣地と同様にここでの戦闘を想定していたのか、或いはここを指揮所として活用していたのか、入口を入ってすぐ土嚢やコンテナで構成された即席のバリケードが広がり、本来なら受付以外は何もない広々としたそのフロアの真ん中にも物資と、いくつもの長机を繋げた臨時のスペースが設けられ、それらを挟んだ反対側にはこちら側と同様の即席バリケードの姿があった。


「待って」

 エリカが俺を制する。

 その理由は俺にも見えた。

 その反対側のバリケードを越えてフロアの中心に向かうニュートロフィルの一団と、その上空をカバーしている武装クアッドコプターが二機。

「まだ気づいていないか……」

「でも時間の問題だね」

 俺たちは手近なバリケードに身を隠してそれに目を向ける。

「私が左のクアッドコプターをやる」

「了解。なら俺が右だ」

 共通見解:先に潰すべきは空を飛べる武装クアッドコプター。

 登坂能力と物量が厄介なニュートロフィルだが、こいつらは接近するまで攻撃手段を持たない。

 対してクアッドコプターは飛行能力がある上、その胴体に提げられているのはアサルトライフルだ。

 再装填機能まではないとはいえ、こちらの上空を占位してのトップアタックを仕掛けられる=地を這うしかない俺たちを一方的に狩れるこいつらを真っ先に排除するべきだ。

 幸い、その機首に搭載されたカメラにはまだ俺たちは映っていない。


「「……」」

 バリケードの隙間からそっと銃口をその航空戦力に向ける。

 装甲化はされていない。一発撃ち込めばそれでいい。

 少しだけ息を吸い、口からゆっくりと吐いて、その途中で上下の歯の間に舌を差し込んで止める。

 ドットサイトの中の振動が静止。光点とクアッドコプターの中心が一致。


「ッ!」

 同時に、こちらに向けられた機首カメラが、サイト越しに目が合う。

 そしてこれも同時=二発の銃声と、こちらを見たクアッドコプターの墜落。

「タンゴダウン」

「タンゴダウン」

 二機同時の撃墜に成功。

 しかしそれは同時に、こちらの位置を残りのニュートロフィルたちに教える事ともなる。


「来るぞ!」

 即座に銃口を床へ。殺到するニュートロフィルの先頭の個体にも弾丸を撃ち込んで止め、マズルジャンプを利用してその後続にも狙いを定め引き金を引く。

 俺の隣でも同様の対処。サイトの中で、隣に撃たれた個体が慣性で地面を滑り、別個体の進路を妨害する姿が映る。

 勿論そんなチャンスを逃す手はない。つまり、進路をふさがれて一瞬動きが止まった別のニュートロフィルの隙を逃す手は。

「タンゴダウン」

 そいつに一発。

 放たれた銃弾が奴の背中を貫いて、ピン止めするように床にめり込む。

 その個体が、ここに乗り込んだ最後の一体だったようだ。


「よし、前進しよう」

 エリカがそう言ってひらりとバリケードを飛び越える。

 彼女に続いてフロアの中へ。本来なら市民を案内していたのだろう受付を素通りし、奥に位置するエレベーターホールも抜ける。電気が断たれて久しいそこの先、足があれば上に行ける階段へ。


「階段クリア」

 エリカの言葉に従って彼女に続く。

 途中で折り返す構造の為、正直あまり長居したくはない。

「え……」

 その想いが通じた訳ではないだろうが、俺たちは二階で階段を離れることになった。


「アルファ1よりCP。階段の崩落を確認しました。別ルートで移動しますオーバー」

 言いながら、彼女はすぐ近くの案内板に目を動かす。どうやらもう一か所階段があるようだが、少し距離がある。


(つづく)

今日はここまで

続きは明日に

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