21-勇者
またもや短め+非主人公視点から開始
歓声、歓声、歓声。
200ほどの兵士と仲間達と共に王都住民に盛大に迎え入れられる。
教国や帝国にくらべればその迎えは大きくはない。
それでも大勢の人が、魔王の討伐と兵士やギュンターさんの帰還を喜んでいる。
兵士達はそれに各々応える。魔王を打ち倒し、長い旅を終えた凱旋だけあって本当に嬉しそうだ。
僕達勇者とギュンターさんは王都で用意された馬車にのり、その周囲を兵士達が行進している。
馬車は計4台。1台目は僕とギュンターさん。4人の仲間達は二人づつ、2台の馬車で移動している。そして最後の馬車は・・・・・・捕虜を移送しているものだ。この捕虜の数も2.
この凱旋では、このまま大通りを通って王城まで向かう予定だ。
(ん?)
上流街にさしかかった頃合、兵士とギュンターさんの表情が一瞬変わる。
「どうしたんですか?」
僕は一番近くにいたギュンターさんにその理由を聞いてみた。
「いや、なんでもない」
改めて見てみれば既に表情はいつもどおりだ。
一瞬動揺しただけでショックを受けているわけではないらしい。
兵士達も幾人が疑問を浮かべているようだが、差し迫ったものではない様子だ。
ならばこれ以上の詮索をしてもしょうがない。
僕は再び周囲の人々を見回す。
みんな、大なり小なり喜びをともって迎えてくれている。
そんな中に、一人。
子供がいる。
いや、それはまったくおかしいことではない。
しかしその子供は、喜びとは無縁な、睨みつけるような表情で僕を見ていた。
そして視線が動き、次に子供が見たのはギュンターさんだ。
「息子だよ」
小声でギュンターさんが告げてくる。
そうか、あれが・・・・・・
子供の視線は最後に、捕虜の乗っている馬車を見つめていた。
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(げぇ!こいつは!)
「ギュンター、貴様には聞きたいことがある」
「奇遇だな、私も聞きたいことがある」
ギュンターは出迎え一番のエルゲンの質問を予想していたらしく、飄々と返す。
「長くなりそうだな、座って話そうではないか。ケイトはいるか?」
「はい、ギュンター様」
ギュンターの呼びかけにこたえて、奥からケイトが出てくる。
「茶の準備をしてくれ。エルゲンと話す事がある」
「かしこまりました」
ケイトは茶を淹れに移動し、エルゲンとギュンターは居間へとむかう。
(エルゲン君!悪いけどくれっぐれも君の父親には俺の存在をけどられないようにしてくれよ!)
ケイトが茶を置き、部屋から出て行ってから二人は話はじめた。
「イルマとリムは元気にしているか?」
「そんな事。俺は知るはずがないだろう」
事実として、リムが生まれてからエルゲンはイルマとリムと会っていない。
「くだらない冗談を言っているのならば、俺から聞かせてもらうぞ。ギュンター、お前は人にとり憑く霊体について知っているか?」
「ふむ、いや、わからん」
「よくわからんが、俺に何かがとり憑いている。そいつは俺の脳内に声を送ってきているのだが」
(エルゲンくぅーーーーん!!??)
ギュンターはエルゲンをしばし見つめる。
「なるほど、たしかに頭に妙なものを飼っているようだ」
「取り除くことはできるか?」
(アッーーー!!)
「さて、どうだろうな。試してみなければわからん」
「ならいい、次の質問だ」
「そのまえに私も質問をしたいのだが」
「後にしろ」
「やれやれ、お前は本当、顔と違って可愛げというものが皆無な性格だな」
「今日、貴様と一緒に馬車に乗っていた男。アレはなんだ?あいつらだけではない、他の馬車に乗っていた連中もだ」
「勇者だよ。聞いたことはあるだろう?」
「単語だけはな、なんなんだあれは。妙なものを持っている」
妙なもの、としかいいようがなかった。普通とは違う何か、とにかくあいつらの魔力は普通の形をしていない。
あの勇者の魔力を感じ取ろうとした時、勇者と呼ばれるもの全てに、そして牢屋をそのまま走らせているような、捕虜移送用の馬車に、その何かがあることがわかった。
「今のお前はそれに近いのだがな」
何かある、という意味では確かに近しいのだろう。
「勇者は神の加護を得た、選ばれし戦士、といわれている。表向きはな」
「実際は?」
「その何か、の力を得ているのだろう。私は精霊と呼んでいる。勇者曰く、意思をもって自分たちに力を貸してくれる存在らしい。それ以外は私もわからん」
「逆に言えば、精霊の力を得たものが勇者と呼ばれるとうわけか」
「その通りだ」
「実力のほどは?」
「単純な戦闘能力で言えば下位勇者のうち数人より私が上といったところか。あの5人は全て実力だけで言えば私より強いぞ」
「あの5人以外にも勇者がいるのか?」
「ああ、全部で28人。その大多数はセイベルタール教国で分かれているがな。勇者は基本的に教国の所属だ。その例外が、勇者の中でも最も優れた、彼ら5人だ」
28人。
多いと感じてしまうのは前世の観念のせいだろう。
元いた世界では勇者というのは、物語の主人公のような、特別な人間だ。
だがこの世界ではあくまで精霊の力を得たものの総称。と考えれば一概に異様に多いともいえない。
そしてその実力はギュンターを凌ぐという。そのギュンターは、恐らくエルゲンよりも実力が上、となるとエルゲンは実力だけは勇者に劣っていることは確実か。
「次だ、あの後ろの馬車。檻をそのままひかせたようなアレに女が乗っていたが、あれはなんだ?」
「捕虜だ。詳しいことは、光の勇者――私の隣にいた勇者に聞くといい。しばらくは王城にいるらしいからな」
「ずいぶんもったいぶるではないか、ギュンター」
「奴が当事者だからな。私より実りのある話が聞けるだろう」
「ふん、いいだろう。とりあえずはここまでだ」
エルゲンは席をたち、そのまま居間から出ようとする。
「まてまて、私の質問にも答えてもらおう」
「手短に話せ」
「どうも上流街と貴族街の町並みが変わっているじゃないか。廃墟になっている所もあった。勇者達は気づかなくても、ここに住んでいた私は気づく。私がいない間に何があった?」
「キングレオン王にでも聞け」
今度こそエルゲンは居間を出た。




