20-ギュンターの帰還
区切りの関係上ちょっと短めです
切羽詰ってるわけではないのだが、一刻も早く離れたほうがよい。
そう考えていた俺は、王都らしき場所までだとりつける距離になってから、すぐに此処を離れた。
王都に入れば、少しぐらいはとり憑ける人間もいるだろう。
(なんだあれ?)
霊体になったからは、魔力に対して非常に敏感になった。
それでわかるのだが、上、王城近くに非常に強力な魔力をもった人間がいる。
強力なのは魔力の大きさではない、いや魔力も十分すぎるほどに大きいのだが。俺が気になったこ事を・・・・・・感覚的に言えば太さだ。
俺からは魔力は管を通って流れているようにみえる。その管が異様太い。
こうして魔力を見れるようになったのはごく最近だから、それが何を意味しているかはわからん。
元来、俺は好奇心旺盛だ。人間がたんまりいるここは活動がしやすいし、ちょっと向かっても構わないだろう。
そうしてたどり着いた先は、貴族のものと思われる屋敷。
(この魔力の持ち主はぼんぼんか。どれどれ・・・・・・うお)
その魔力の持ち主は、かわいらしい天使の顔をしたような男の子だった。
まだ幼い子供がすぅすぅと眠っている。
(いける、な)
一応断っておく、別に怪しい意味ではない。
憑けるのだ、この子供には。
その条件は俺自身にもわからない。だができることは感覚的にわかる。
(これも何かの縁って奴だな)
俺はすっと、その子供に入っていった。
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夢を見た。何をみていたのかはほとんど忘れている。
ただその夢にギュンターが出てきたということはたしかだ。
(別に父恋しいわけでもあるまいに)
なんでそんな夢をみたのか、エルゲンは疑問に思いながらも起き上がって今日を始めていく。
(ヘイ!ボーイ!グッドモォーーニーング!!)
「やかまわしいわ!」
突然脳内に男の大声が響いた。
起き上がりということもあってかなりの破壊力だ。
(おっふん。可愛い顔して中々激しい性格なのね)
「貴様、何者だ」
周囲を見回しても人影はおらず、そももそも声は自分自身から響いてくるかのようだった。
(おっと、冷静。ザ・クールボーイ。俺のことはアー君って呼んでくれ)
「名前ではない。貴様の素性を教えろと言っている」
(実は俺はわけあって体が死んじゃった幽霊なわけよ。そしてこれから俺の無念を晴らすべくクールボーイの旅が始まるのであった)
コンコン
ノック、そして聞こえてきたのはケイトの声だ。
「エルゲン様?声がこちらまで響いてきましたが何か問題でもありましたでしょうか?」
「いや、なんでもない。仕事に戻れ」
「はい、もしも何かありましたらなんなりとお申し付けください」
(うひ、メイドにゃんにゃんって奴ですね。子供くせになんていやらしい奴なんだ)
エルゲンは集中し、体の魔力の流れを感じ取る。
何かが、いる。
実感としてそれがわかる。恐らくはこのふざけた男の幽霊だ。
どうすれば排除できるか。
おそらく魔法的な処置が必要だろう。
根拠はある。一つはこの男が魔力で感知できたこと。
エルゲンは元の世界における幽霊の存在を信じていない。それがこの世界で存在した。ならばそれには少なからず元の世界には存在しない魔法の力が関わっておかしくない。これが二つ目だ。
だが、ここまでだ。
魔法、魔力がこいつの存在の鍵だとはわかっても、それをどうにかする術がない。
今もこいつがいそうな場所に魔力を集中させてみるが、まったく効果がないようだ。
(まさか俺を消そうとしてる!?そのぶっとい魔力で俺を昇天させようとしてるんだな!?)
書斎には幽霊などについて書かれた本はなかった。
そもそも、この世界に幽霊がいることを始めて知った。
この世界においても幽霊とは非日常の存在なのだろうか?
とにかく調べる必要がある。
(ちょっとー。がん無視ですか~?アー君かなしー。いや本当に俺の話を聞いてくれよ)
「なんだ。ふざけた事を抜かすような以後耳はかさんぞ」
不愉快だが今は一つでもこいつを排除する手がかりがほしいところだ。
(お前は俺を軽視しているかもしれないが俺はすごいんだぞ。剣とか魔法とか使えるし)
「そうか、俺も剣も魔法も使える」
剣はまだまだ練習段階だが。
(じゃあ俺は未来予知できるぅ!近いうちにいたいけな二人の少女が拉致監禁されて晒し者にされちゃう。さぁ君も彼女達を助けてうっはうはハーレムだ)
「最初にふざけた事を言ったら――」
(いや、まじまじ。二人の少女が拉致監禁って話はまじだぜ。早ければ今日にでも王都に来るぜ)
王都に来る、妙な言い方だ。
何か知っているのは間違いないか。
「で、お前は結局何を言いたい」
(俺をこのままにしておけば役に立つぜ!だから仲良くしようよぉ)
「そのふざけた言動をやめれば貴様を使うことを考えてやらんでもない」
コンコン
またもやノック、そして声をかけてきたのはリジェンダだ。
「エルゲン様、入ってもいいでしょうか?」
「構わん」
扉を開いてリジェンダが入ってくる。一人だ。
「おはようございます。エルゲン様」
「何の用だ」
(おいおいおいおい、クールボーイ。挨拶はしっかりしようぜ。お・は・よ・う・ご・ざ・い・ま・すー!それにしてもかわい子ちゃんだなおい)
「今日はギュンター様が勇者達と一緒に凱旋されるみたいなので、一緒に向かえに行きませんか?」
「そういえば今日だったか」
しばらく前に、王国に魔王討伐の知らせがとどいた。またアーガネルト公爵家にはそれとは別にギュンター健在の知らせも届いている。
魔王討伐に向かった兵や勇者の多くは途中にある国々に帰り、規模は縮小しているが。まさに人類を救った英雄達と、それをささえた王国の兵士が王都へ帰還する。
それが今日だ。そのため彼らを迎え入れる準備が”空の偵察者”の傷跡が残る貴族街でもされていた。それでもいくつかは廃墟が残り、傷跡が伺えてしまうのだが。
復興するには被害が大きく、時間が少なすぎた。
さて、エルゲンとしては実はあまり乗り気ではなかった。
ギュンターが帰ってくるならきたでいいのだが、それをわざわざパレードを見る客のように有象無象と一緒に迎えるというのは時間の無駄だろう。
(その一行に例の少女もいるぞ)
脳内の声が真面目にささやく。
「ふむ、いいだろう。着替えをしてから食堂へ向かう。既にしているとは思うがケイトに食事の仕度をするように伝えておけ」
「わかりました」
心なしかリジェンダはうれしそうだ。
さて、謎の声の言っている事は嘘か真か。
確かめるとしよう。




