17-王位
18話前書きでもあるように、本来描写すべきことがすっぽりと抜けています。
(中断した式のこと、レイナの処遇の決定、事後処理など)
王国編終了後に追加予定です。
バン!バン!
「いやー!強いのはわかってたけど本当に強いな!」
シェイルがエルゲンの背中を叩く。
「気安く触れるな屑が。というか、今度は何の集まりだ」
アーガネルト屋敷にはシェイルとザン、トワイラ。それからエドヴィンの弟であるヴォイド王子、計4名が押しかけてきた。
ちなみに彼らは決闘前日にも押しかけている。その時は決闘をするエルゲンが心配だからという理由で遊びにきていた。
今、彼らとエルゲンがいる部屋にはリジェンダとフィリア、それから表向き俺の交際相手で実質的に使用人のレイナもいる。
「いやー!エルゲンが魔物をぶっとばしたって聞いて遊びにきたんだよ」
豪快に笑いながらシェイルが言う。
「帰れ」
「エルゲン様は照れておいでになっています。あまり気分を悪くしないでください」
とっさにフィリアがフォローにまわる。
「照れていない。その反抗的な口、引き裂いてやろうか」
「気にしてないさ、エルゲンの口の悪さは”顔合わせ”の時から知っているからな」
やはりシェイルはかっかと笑いとばす。
そんな姉の後ろからひょいっとザンが出ててくる。
「魔物の討伐・・・・・・話、聞きたい」
と同時にリジェンダも物凄い勢いで同意をする。
「私も聞きたいです!」
「ん、たしかエルゲンが空飛んで魔法使ってぶっとばしたんじゃないのかよ」
たしかに見も蓋もなく言えばシェイルの言うとおりではあった。
「ん・・・・・・一度目は倒せなかった、空から撃ったら倒せた・・・・・・上が弱点。・・・・・・どうしてわかったの?」
ボソボソと、しかし目は爛々と輝いている。
「お前は脳まで筋肉な姉とは違って最低限は使える頭を持っているようだな」
「あっはっは!そう褒めるなって」
「褒めてない。・・・・・・まずあの魔物の構造は生物としてはおかしかった」
「なるほど、確かに言われてみればそうだな」
すぐそれが理解できるあたり、この馬鹿共の中ではトワイラは賢いようだ。
「どちらかという人が生み出した兵器・・・・・・戦争用の道具の用に思えた。故に人を殺すことに特化身体構造をしていると予想した」
「予想って・・・・・・もしかしたら違うって可能性もあるんじゃね?」
そのシェイルの疑問は、たしかにエルゲンも最初は持っていた。
だが、エルゲンは自身のの考えが最初の魔法を撃った時点で正しいと確信していた。
「俺の魔法を食らっても最初は耐えていた。下からの一撃だ。あの魔法は簡単に防げるものではない」
何せ現代の戦艦を打倒できうる火力だ。
「そんな装甲を全周囲に張り巡らせているというのは、例え魔物だとしてもありえない。聞いた話、魔物は個人で倒すのは不可能であっても兵士を集めて討伐した事例はあるようだからな」
そんな装甲を張り巡らせて浮いているのは物理的にまずおかしい。
魔法の力で無理矢理浮かせてるとしても、あきらかに聞いた魔物の限界を超えている。
それに、それは兵器として賢い構造ではない。
「他にも根拠はいくつかあるが、そこは自分で考えろ。さて、俺は一撃入れた時点で弱点があること自体は確信した。ではそれがどこか?奴が戦争の道具だとすれば、人間が考えるような合理的な位置に弱点がある。それはどこか、考えればすぐに上面だと感づくだろう?」
エルゲンはシェイルに視線を送った。
「いやー・・・・・・あー・・・・・・なんでだ?」
やはり馬鹿であった。
「その、上のほうには攻撃が届かないから、ですか?」
遠慮気味に答えたのはリジェンダ。
人間、問いの回答があまりにも簡単すぎると不安になるらしい。
「そのとおりだ」
「んー、よくわからん!」
「おおー・・・・・・」
「言われてみれば確かにな」
「そうですね、そうですね・・・・・・」
シェイル、ザン、トワイラ、リジェンダがそれぞれ反応する。
リジェンダは何やら考えこんでいるようだ。
一方でヴォイド、レイナから声はあがらない。
一応フィリアは声を出さないだけで、こちらの話を聞いてないわけではないようだ。
だがヴォイドはおどおどしているだけ、レイナも黙っているだけで聞いているのかいないのかわからない。
「あとは、弱点を魔法で打ち抜いたら思いの他脆く、即死だったようだな。そういうわけで話は終わりだ」
エルゲンの言葉には言外に、だから帰れという意思が込められていた。
「その、エルゲン様。せっかくのお友達ですからもっと親交を深めてみたらいかがでしょう」
まったをかけたのは来訪者側ではなくフィリアだった。
「何故そんなことをしなければならない」
やはり反抗的だ。一応俺はこいつの命を救ったので使用人の中では俺に使える動機は大きいはずなのだが。
「それがエルゲン様のためにもなります」
「下らん」
こいつは友がどうとかそういう事を口にする手合いだったか。
そんな会話を遮ったのはトワイラだ。
「フィリアさんだっけ、悪いけどこれから本題もある。エルゲンやそっちのヴォイド王子にも関係する話だ」
トワイラはごく真面目な様子だ。
こいつは頭も回る人間のようだし、無駄な事ではないだろう。
エルゲンはおとなしく続きを促す。
「なんだ?」
「エドヴィンが死んだ今、有力な王位継承者はいなくなった。その事で直に貴族たちに動きがあるはずだ」
「第二のエドヴィンを仕立て上げたいということか」
有力な継承者であり自身に味方する者を王位につかせたい。
そのためにエドヴィンにひっついていた多くの貴族は、新しい寄生先を探すことになると。
「エルゲンに関係ある事、その意味はわかってるだろ?君はエドヴィンやその取り巻きから対抗馬と見られていた」
「エドヴィンがなくなった今、俺が最有力だということか」
「そういうことだ。エルゲンの意思に関わらず、色々な貴族が押しかけてくるだろう。君を害そうとする奴もでてくるかもしれない」
「面倒な事だ」
トワイラもだるそうにしている、いや元からか。
だがその表情は一層暗い。
「あの、トワイラさん。押しかけるのはともかく、なんでエルゲン様を害する人がでるのでしょうか?」
そこでリジェンダが割り込む。
「いくらエルゲンが有力だと言っても他を取り込みたいって奴もいる、というのもあるんだけど・・・・・・。エルゲンを取り込むなんて確実に無理だろうからね。貴族は自分を優位にしてほしいんだ、エルゲンが王になってもそれができないなら意味はない。エルゲンを知れば確実にできないとわかるだろうしな」
つまり、王位レースはエルゲンの有利であり、勝ち馬に貴族は乗りたい。
しかしエルゲンについたところで貴族に有益な事などない。
いずれエルゲンに味方する貴族などなくなるだろう。
「人間。自分が多数派で相手が少数派だと変に強気になる。だからエルゲンは危な、くもないだろうけど、面倒には巻き込まれるだろうってことだ」
「ありがとうございます」
リジェンダは礼を言うがその表情はやや暗かった。
無視してエルゲンは話を進める。
「もし俺を取り込めないとわかったとき、次に貴族がたかるのは誰だと思う?」
「それが彼だ」
トワイラの視線の先には、先ほどからおどおどしっぱなし、と思いきやフィリアになだめられたようで幾分落ち着いた様子のヴォイドがいた。
「は、っはひ・・・!?」
だが今の会話でまた落ち着きがなくなる。
「お前ではないのか?」
トワイラに問う。
エルゲンにとっては予想外だった。てっきりトワイラだと思っていたのだ。
「私は公の場で既に王位を継承しないと宣言してる。なりたくてもなれない。ああ、エルゲンがそれをするってのはできない。私の時、正確には私とシェイルはその時にエドヴィンが王位継承するのがほとんど確定だったからこそできたんだ」
だからシェイルと自分は一番ありえない。ヴォイドに次ぐのがザン、そしてエルゲンもすっかり忘却している妹のリム。レイナはエルゲンのものになったのでほぼ除外、と話を続けた。
「っち、王位が不定の時に宣言されていなくなくなられては困るということか。まぁいい、で。これにどう対処する?」
「一つは、私達の内々で王位を決めてしまう。これは前提条件みたいなもので、次が重要だ」
トワイラは前置きをして。
「私達、4つの家で友好を深める事」




