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悪党転生  作者: えこーと
1 王国編
12/26

12-決闘前

仕事のほうが忙しく、日がかなり開いてしまいました

あと数日は忙しいので次話も遅くなります

「こんな子供に決闘だって!ふざけるのもいい加減にしなよ!」


 エドヴィンに掴みかかる勢いのシェイルを横目に、エルゲンはリジェンダにささやく。


「あの宝石を取れば決闘が成立するのか?」


「えっ。はい。そうですが・・・・・・」


 元の世界で言えば手袋を投げる行為に相当するらしい。


「ならばリジェンダ。その宝石を取れ」


「えっ!私がですが!?」


「さっさとしろ」


「はい!」


 慌てて、しかしどこか、いいのかなぁ・・・・・・とためらいつつリジェンダは宝石を拾う。


「リジェンダ殿・・・・・・?」


 オーグス男爵を始めとして視線が彼女に集中する。


「えっと・・・・・・あっ!」


 エルゲンは焦る彼女からその宝石を奪いとった。


「エルゲン様!」


「おいおい」


「あっ・・・・・・」


 オーグス男爵と、トワイラそれからザンは俺の意図に気づいたらしい。

 男爵はエルゲンを静止しようとし、トワイラとザンは僅かに驚く。


「その決闘、受けよう」


「なっ!」


 一歩遅れてシェイルが驚きに目を見開き、エドヴィンはにやぁと唇を釣り上げる。

 ……当人である二人を除けばリジェンダが一番驚いていないな。


 バタンッ


 近くから何かが倒れる音がした。

 目を向けてみれば王、キングレオンが泡を吹いて倒れていた。

 大方、止めようとして間に合わず、しかし会話内容はしっかり理解してしまったのだろう。


「王!」


 オーグス男爵は慌てて介抱に向かう。


「おほんっ、んで、お前。俺が勝ったらその娘をもらう。いいな?」


 父親の卒倒という思わぬトラブルが入りつつも、エドヴィンは冷静に続ける。


「それはいいが、俺が勝ったら誰をくれるきだ?」


「ん、それは。何、じゃなくて誰か。え~っと。そうだな、あいつをやる。おい、お前!こっちにこいよ」


 意外な事にエドヴィンは素直に敗北した場合の対価を提示してきた。

 そうして指さされた当人は一瞬の困惑のあと、こちらに向かってきた。

 エドヴィンの側まで来ると、その少女が礼儀正しく自己紹介をする。


「初めまして、エルゲン様。私はレイナ=グランバルトです」


 見た目はリジェンダより少し下だろうか。

 その格好はあきらかに貴族だ。

 そもそもグランバルト、エルゲンの記憶がたしかならばキングレオンと同じ生だ。


「そういうわけだ。いいだろぉ?レイナ」


 やたらねっとりとした声でエドヴィンはレイナに聞く。


「……はい」


 少し置いて、彼女はそう答える。

 シェイルはその光景に、ついに怒り心頭といった様子だ。


「ふざけんなよ!あんた!」


「うっ!?」


「姉さん。抑えて抑えて」


 その迫力にエドヴィンはたじろいだが。何故かザンがシェイルを止める。


「……っふん!どうせ手続きとかはこっちでやっておくぞ、お前みたいなお子様にはできないだろうからな。日時は明後日にしておく」


「詳細なルールは?」


「基本の決闘法に基づいてやるに決まってるだろ?おっとお子様にはわからないかな?その娘にでも聞けよ。場所はおそらく王城の訓練場あたりだろう、詳細は明日手紙でくるはずだ」


 なるほど、決闘に関する一連のやりとりは法律で制定されているらしい。

 エルゲンが納得したのを感じとると、エドヴィンは”顔合わせ”の会場全体に対して宣言をする。


「お前らも聞いたな!俺はこいつに決闘を挑んで、こいつもそれを了承した!賭けるのはこいつはそこの女の子。俺はこいつだ」


 周囲を見てみれば、会場にいるほとんどの人間がこちらに目をやっていた。

 まぁ、目立っただろうしな。このやりとりは。


「それじゃな……逃げるなよ」


 周囲の視線も解さずにエドヴィンは去っていく。

 無言でそれを見送り、その姿が消えた時、シェイルが飛びかかってきた。


「お、おい、坊主。大丈夫かよ?」


「まずは、決闘のルールを調べねばな」


 それを聞いているのかいないのか。エルゲンは冷静にすべきことを言う。

 そしてシェイルに向かって尋ねる。

 彼女が一番武闘派っぽかったからだ。


「それで、どうなんだ?決闘のルールは?」


 が、彼女は急に勢いをなくし。


「え~それは、タイマンで勝負すんじゃねえの?」


「その子ならともかく、お前も知らなかったのかよ……」


 トワイラが呆れる。


「あはははは~……」


 ごまかし笑いをするシェイル。

 ためいきをついてからトワイラは話始めた。


「ああ、一応自己紹介しておく、私はトワイラ=ヒドゥラム。一応ヒドゥラム家の一人娘だ。ヒドゥラム家の立場はアーガネルト家とそう違いないよ。よろしく」


 エルゲンは反応を見せず、目で続きを促す。

 自己紹介などをする気はさらさらなかった。


「やれやれ……。決闘のルールは基本的になんでもありなんだよ。実剣だろうが魔法だろうが、魔法の道具だろうがなんでもアリ。でも他人に手伝わせたり、罠をはるのはダメ。あくまで1対1の戦いだ。でも相手を殺すのは大丈夫だ。死んでも自己責任、死にたくなければそもそも決闘するなってことだな」


 トワイラ、ついでにザンもひっそりとエルゲンの様子を見る。

 死ぬ、殺しがあり、そういったことで動揺していないか、たしかめているのだ。

 もちろんエルゲンにそんな動揺がなかった。

 そして、トワイラだけはさらにリジェンダの様子を見た。

 彼女もあまり動揺していないようだった。


「場所は、あいつが言ったとおり王城の訓練場が妥当だろうな、決闘が正式にはじまることになれば書状の一つからそれを確認するといい。これはあいつが言ったとおりだな。本当に明後日になるかはわからないが決闘をするのは確定だろうな、宝石の儀礼によって行われる決闘は王でも止められない。その事実を知る証人もこれだけいるしな。賭けも法律で認められている・・・・・・ただ今回の場合、賭けの対象が対象だけに認められない可能性はあるけど、本人の同意もあるからどちらかといえば認められる可能性の方が高い」


 こんなところか、とトワイラは一息つく。

 フェルトは何故か目を点にしてぼーっとしていた。もしかして理解できてないのだろうか。

 トワイラは話を続ける。


「ま、みたところ勝機はありそうだな。だがあいつ、何をしてくるかわからないから気をつけろよ」


「ふん、いかに小細工をしようが、あんな凡愚に俺が負ける道理はない」


「自信はすごいな・・・・・・。ま、お前よりは・・・・・・」


 トワイラはレイナを見る。彼女はレイナがエドヴィンの妹だと知っていた。

 当然、その身分は王女である。

 そんな彼女が、賭けの対象になることを頷いたというところが引っかかったのだ。


「あの女が気になるのか?あの凡愚などよりはよほど面白い」


 その引っかかりはエルゲンも察していた。


「面白いとは・・・思わないけどな」


 どちらかと言えばトワイラは嫌な感じがしていた。


----------


”顔合わせ”はそうして決闘関係のトラブルがあったものの、その以後は何事もなく終了した。

 そのトラブルで王が卒倒してしまったので問題がなかったわけではないのだが。

 そしてアーガネルト屋敷の接客の間。そこに当の王が来訪し――またもエルゲンに頭を垂れていた。


「どうか命だけは!」


「あいかわらず頭の軽い奴だ。その様子だと決闘が行われるのは決定のようだな。まぁいい、事故が起きた場合は知らんができる限り殺さないようにはしよう、これで貸し一つだ」


 実はもともとエドヴィンを殺すつもりはなかったのだが。


「ありがとうございます!ありがとうございます!」


 不様に這い蹲る姿は、とてもこの国の王とは思えない。

 だが、前回も、今も、この姿勢のおかげですんなりとエルゲンに要求を飲ませている。

 もちろん、前提としてエルゲンにそこまで悪い話ではないのだが、それにしたってエルゲンの性格を鑑みればこの王は上手くやっていると言えるだろう。


「ああ、せっかくだ。いくつか確認したい事がある」


「なんなりと!」


 まるでエルゲンの忠臣か何かのように応えるキングレオン。

 一方のエルゲンは、それに気分をよくもせず、悪くもせず、淡々と質問する。


「まず一つ、賭けは有効と判断されたのか?」


「は、はい。当事者は全て承諾しているのと、エドヴィンに肩入れする一派の働きかけがありまして」


 一筋の汗を垂らしつつ、王は続ける。

 エドヴィンに肩入れする一派。

 エルゲンもさすがにエドヴィンが時期国王の最有力候補であり、そのエドウィンに媚へつらう貴族がいることは知っていた。正確には昨日知った。

 しかしそうした連中が手を貸しているというのは疑問点だ。


「も、もちろんレイナの事もどうか悪いように・・・・・・」


「そのレイナとやらにはあまり興味はない。よって、今は連れ去る気もない」


「はは!」


「では次。決闘は頻繁に行われるのか?」


「いえ。やはり命に関わる事にもなりますから、前回行われたのは12年前ですね」


「ふむ」


 本番といこうか。


「次だ。貴様の息子は何故俺に決闘を挑んだのだと思う?貴様の考えを言ってみろ」


 エルゲンはただの女ほしさでエドウィンがこんな決闘をふっかけたとは思っていなかった。

 理由は、そこれこそ多数ある。

 まずリジェンダがそこまでしてほしがられるような女性とかと言われると疑問である事。

 たしかに見てくればそうわるくないが、最悪、命を落とす決闘をしてまでほしがるものだろうか?

 次に取り巻き達がそれを止めようとしなかった、どころか王を妨害するという協力まで行っていたことだ。

 本質的に取り巻きどもはエドヴィンの味方というわけではない。エドヴィンが王になったとき、甘い蜜を吸えるように顔を覚えさせたいだけ。そのためにはエドヴィンには確実に王になってもらいたいはずだ。それがエドヴィンにとって悪く言われるような行為を補助しているのは妙であった。

 他にも色々理由はあるし、ではエドヴィンがどうしてエルゲンに決闘を挑んできたのか、その理由もいくつか予想はできる。


「お、恐らく貴方の王位継承権を恐れての事だと思います」


 王の言葉は俺の予想と一致している。

 だが諸手を挙げて真実だと言える解ではなかった。

 例えばこんな疑問がある。


「だが妙だな?こんな5歳児を狙うとは、むしろバドゥランの女のほうがライバルになりそうなものではないか?」


「シェイル令嬢はあまり統治向きの性格をしておりませんし、腕がたつので復讐も怖いでしょうから。本人も王位に興味はないと言ってますし」


「俺も王位になど興味はないのだがな」


「元々、王位継承権がないものが王位を継承することはなくても、第1候補以外が王位につくことは多いのです。かく言う私もそうでした」


 だからエドヴィンとやらはエルゲンを恐れているのだろうか?

 というか、この王が第1候補でない事が若干以外であった。尤も、第1候補っぽいというのは完全に外見から来る先入観であったが。


「その時の王位継承の第1候補は、腹違いの兄であるギュンター、つまりは貴方の父でした」


「なるほどな」


 面倒なことだ。どうも視点を変えれば俺のほうこそ正統な血筋だとも言える。


「さらにギュンターは今、大魔導師として国民からの人気も高く、此度の遠征が成功すればその人気もさらに上がるかと」


 遠征か、そういえば俺はギュンターが何をしているのかまだ知らないな、そう遠くないうちに決着がつくらしいのだが。


「ギュンターの遠征とは、一体何をしている?」


「魔王の討伐です。ギュンターはその下準備と勇者達のサポート、場合によっては戦闘にも参加するでしょう」


 ギュンターの奴、何をしているかと思えば魔王討伐とはな。

 エルゲンは勇者の事は知らないが魔王の事は知っている。東の大陸に住む魔族の王だ。

 今エルゲンがいる王国は西の大陸。この世界は人族がすむ西の大陸と、魔族が住む東の大陸で別れている。

 ギュンターは勇者共と一緒に、東の大陸に攻め入っているのだろう。

 そしてギュンターがそれを成功させてしまえば魔王討伐に貢献した英雄か、ただでさえ奴は人気であるらしいし、血筋としても王として問題ない。


「俺に決闘を挑んできたのは、俺を完全に屈服させて今後の反抗の芽を潰す、といったところか」


「はい、恐らくは」


「お前は落ち着いているな。ギュンターはお前にとっても脅威になりそうなものだが」


「それは――」


「いい、大体の事情は予想できる」


 そもそも、最初の時点でギュンターが王の第一候補なのに、結局この男が王の座にある。そのギュンターも不当な扱いをされてないことを見るに、どうせギュンターのほうからこいつに王位を譲る、あるいは押し付けたのだろう。


「ともかく、決闘でやる事は変わらん。あの七光りに身の程をわきまえさせるだけだ」


 決闘の真意について話したが、結局の所エルゲンがやることは変わりなかった。


「今回は命は奪わないでやろう。だが今後も身の程をわきまえない行動をとるのならば、死ぬ事になるぞ?」


「それは・・・・・・承知しております」


「せいぜい抑えてみせることだな」


 そうしなければ、俺が手をだすまでもなく命を落とす事になるだろう。


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