第7話
ある休日の朝、天王寺はある決断を実行した。
呼吸を整えると小林のテントに入る。
「うわ~ん、コバエもん(小林)告白が上手くいかないよ~なんとかしてよ~」
「朝は朝でも、ワタシはゴゴアサじゃなくてニチアサ派なんデスけど、朝の意味もちょっと違いマスし…」
バッサリいかれたが、ここで引き下がるわけにはいかない。
「そこはいいだろ!頼むよ~何か不思議な道具出してよ~」
「……もう、しょうがナイなァ天王寺クンは〜〜」
小林は口に手を突っ込むと、ヌルリと口からベルトを取り出した。
「\ラッキードライバー〜!/ これを使うと3分間だけ幸運になれるのデス」
「ノリノリで出してくれたけど、結局特撮の変身ベルトじゃねえか!!」
「要らナイ?」
「……要ります」
腰に巻き付ける。
ちょっとゴテゴテしているベルトだ。
「あれ?意外としっくりくるな」
「フフ、コレで天王寺も沼に…」
「おっと、小林これどうやって使うんだ?」
「簡単です、ポーズを取るのデス。こう!」
腕で円を描くとポーズを決める。
「……えっ、マジで!?」
「イエス!」
うおおおおおおお。
恥ずかしい。
いや、愛の前には些末なこと。
いくぞ。
「こうっ……かっ!」
パチパチパチ。
「イエス!」
小林が感動していた。
「…しかし、天王寺……今から3分で大丈夫デス?」
「あっ!!」
いかん。
俺は全力で街へと駆け出すのだった。
「まずはいずみちゃんに会って……いや待て、手ぶらは駄目だ。よし、ケーキを買おう!」
ケーキ屋に向かって走ると、店に入る。
『おめでとうごさいまーす!』
パフパフとラッパが鳴る。
「はい?」
「お客様でちょうど1000人目なんです。こちらのケーキセットをタダでプレゼントです!」
「ホント!?」
「はい!何か他にもお買いになられますか?」
「また今度!!」
「ありがとうございましたー!」
店員の言葉を背に店を出る。
「あと2分か…よし、いずみちゃんを探すぞ!」
街を走る。
「どこだ?……おかしいな、ラッキーなら会えそうなものなのに…」
「お兄さん宝くじ買ってかない?」
「うっ、今はそれどころじゃないんだっ!」
宝くじ売り場を通り過ぎる。
「何でだ!ヤバイあと1分だ!」
全力で街を走る。
「うおおおおおお!!」
あと5秒、4、3、2、1。
0秒。
「あ、会えないだと!!」
ど、どういうことなんだ。
俺は幸運だったはずなのに。
もしかしてこのベルトどこか壊れているのか。
いや、しかしケーキは手に入ったし…。
「あれ?天王寺くん?」
その声は…いずみちゃんだ。
時間は過ぎたが不幸になったわけでは無い。
これはチャンスだ。
「あのいずみちゃん!コレを…」
「あっ!!天王寺くんそのベルト…」
「えっ……」
し、しまった。
ベルトは小林に貰ったヤツのままだ。
「し、失礼しました!!」
俺は走って逃げるのだった。
ーーー天王寺が走り去った後。
「あれ?姉さんどうしたの?」
買い物を終えた楓が声を掛ける。
「あ、うん天王寺くんがカッコいいベルトしてたからどこで買ったのか教えて貰おうかと思ったんだけど逃げられちゃった」
「へ~、天王寺さんオシャレなんだね」
「うん、格好良かったよ~。ヒーローって感じ!」
「ふふ、姉さん帰ろう」
「うん!」
2人は並んで帰るのだった。
「コバエもん~何故かいずみちゃんに会えなかったんだよ~」
「フム、おかしいデスね?何て考えていたんデスか?」
「え?そりゃ告白して成功することだけど…」
「アー、なるほど……ソレは……おそらく……せ…い…こう…しないカラ会わせ……ゴホンゴホン…なかったのカナ~」
「なに?」
「イヤ、…故障デスね。スイマセン、久しぶりに使ったノデ」
「なんだよそれ」
小林はこの事は決して口にするまいと心に誓うのだった。




