第15話
日曜日の朝、俺はいずみちゃんの家の前にいた。
この前楓ちゃんに助けて貰ったお礼に何か出来ないかとしつこく聞いていたら、日曜日に隣の家のおばさんが引っ越していく手伝いをするとの事。
俺も参加させて貰うことにした。
小林はもちろんネカフェで特撮を見ているので不参加だ。
「すみません天王寺さん」
楓ちゃんが謝ってくる。
「何言ってんだよ妹さん。この天王寺の筋肉この為に存在しているのです」
俺は無駄にキレのあるボディビルポーズを決めた。
「わっ、カッコいい天王寺くん! 頼りになる~!」
いずみちゃんが拍手してくれる。
幸せだ…。
こんな至福の展開があっていいのだろうか。
最近変なのに絡まれ続けたご褒美なんですね神様。
「いやー、まったく楓ちゃん良いのを連れて来てくれたもんだよ!」
バチンと俺の背中を叩きながら隣のおばさんが来る。
「いいお婿さん見つけたじゃないかい!」
「でしょ~、楓は見る目あるんだから」
いずみちゃんが自慢気に言う。
あ、そうなんですね神様。
これは地獄なんですね神様。
「あ、いえ天王寺さんは…」
楓ちゃんが何かを言いかける。
「さあ、早速運んでおくれ。兄ちゃん」
しかし、おばさんに遮られる。
おばさんはバチンと再び背中を叩くと家へと入って行くのだった。
「……行くか」
俺もトボトボとおばさんに付いていく。
「天王寺くん!後で差し入れ持っていくね!」
いずみちゃんがそう言って手を振る。
「任せてください!!」
家の中へと走り込むのだった。
家は2階建てなので結構な量の荷物だ。
知り合いに借りて、トラック3台と幌付きの軽トラ1台で運ぶ予定とのこと。
俺は重い荷物を優先して運んでいた。
時間はあっという間だった。
休憩には楓ちゃんが飲み物とお菓子を持って来てくれたし、お昼にはいずみちゃん…と楓ちゃん…ついでにおばさんの作ってくれた料理を食べることが出来た。
夕方頃にはほとんど作業が終わるのだった。
俺は最後の荷物を軽トラの幌の中へと運んでいた。
「あ、天王寺くん居た!」
いずみちゃんが天使のような笑顔で現れる。
「お、おう。なんかようか?いずみちゃん」
「天王寺くん終わったらここで待っててね。サプライズがあるから!」
「お、おうよ!」
いずみちゃんはそう言うと家に入って行った。
「なんだろうな~サプライズって」
期待に胸を膨らませるのだった。
ーーーその頃いずみちゃんは。
台所にいる楓に声をかけるところだった。
「ねぇ楓、天王寺くんに声かけといたから夕食に誘いなさいよ」
「えっ!?姉さん私は別に天王寺さんの事は…」
「ふふん、お姉ちゃんにはお見通しです。それに今日のお礼にも良いでしょ?」
「それは……そうかも…」
「決まり!いってらっしゃい、楓!」
背中を押されて楓は玄関を出ていく。
そして、その後をこっそりと付いていくのであった。
「天王寺さん!……あれ?居ない?」
「えっ!?」
いずみちゃんも玄関から出て探すが何処にも見つからない。
「え~天王寺くん待っててって言ったのに~」
プンプンと怒る。
「しょうがないよ姉さん。天王寺さん用事あったのかも…」
「もうっ、天王寺くんったら!」
2人は家に戻っていくのだった。
ーーーその頃天王寺は。
ガタゴトと揺れる軽トラの荷台に体育座りしていた。
「アレ?車動いてね…?」
最初は車の位置を動かしているだけかと思っていたが。
幌の隙間から、見覚えのない景色が勢いよく後ろへ流れていく。
「アレ?なんか高速乗ったよ…」
ゴーゴーと吹き荒れる高速道路の風切り音の中、俺は静かに目を閉じた。
サプライズとは何ですか…。
ねえ、俺はどこに行くんですか…。




