第11話
安藤結は自己紹介した後、エルナと目が合う。
「「アイツ「公安」「MIB」ね」」
2人の間に静かな火花が散った。
(あの公安に『天王寺』の事がバレないようにしなくては)
エルナはそう心に誓った。
ホームルームが終わると案の定、結はクラスメイトに囲まれるのだった。
「エルナさんも綺麗だけど結さんも綺麗~」
「ありがとう」
「結さんモテるでしょ?」
「そんな事ないわ」
にこやかに会話している。
「ふーん、綺麗ねぇ~。よく分からんな小林はどう思う?」
「ハイ?私には人間の美人はよく分からないナイデスね。あっ、地球の変身後のレンジャーピンクは美しいと思いマス」
「ふーん…変わってんな~」
下らない話を小林としていると気になる話題が聞こえてきた。
「私に聞く前に、和泉さんの好みの男性のダイプは?」
「えっ私?ん~強い人?かな…」
バンッ。
俺は立ち上がる。
教室は静まり返った。
「小林」
「ハイ?」
「ちょっと山に籠ってくる」
「ハ?」
それだけ言い残すとダッシュで教室を出る。
学校からテントに戻り、荷造りを済ませると山に向かって駆けていった。
「ねえ小林くん?」
いずみちゃんが小林に話し掛けた。
「ハイ」
「天王寺くん、どこ行ったの?授業はじまっちゃうよ?」
「アー、ナンカ山に用事らしいデス」
「や、やま?やまってあの山?」
「タブン…」
「どうして?」
「ンー………山菜取りデスカネ?」
「あーなるほど!」
そうしてズレた2人は今日も勘違いを深めるのだった。
ドドドドド。
流れる滝の前に立つ1人の漢、天王寺。
「やるぜ!……アババババババ…」
滝に打たれ、精神を鍛える。
その後は木で拳や蹴りを鍛え、岩と俺をロープで結び脚力を鍛える。
他にも枝で懸垂や川で泳ぎ心身共に鍛えていく。
食べるのは山菜や襲ってきた動物、主にイノシシだ。
あれから1週間。
毎日続けていた。
「オラッ!」
ズドンと拳が木に当たり葉が落ちる。
「ふっ、ついに手に入れたぞ『黄金の右』を!!ハハハハハ」
高笑いしているその時だった。
ガサリと音がする。
振り向くとそこには2メートルの熊が居た。
熊は、威嚇するかのように身体を広げる。
「ヤるってのか?この天王寺、熊如き愛の前では無力だと言うことを証明して見せよう。はぁ!」
こちらも構える。
「グオッ!!」
熊が突進してくる。
「来い!!」
熊はこっちに飛び掛かりながら右手を上げた。
「うおらっ!!」
こちらを切り裂こうとする腕を掴むと、柔道の要領で相手の力を利用して背負い投げる。
ドンッ。
背後の木にまるで車がぶつかったかのような衝撃が襲う。
「まだまだ!!」
起き上がる熊の顔面に跳び蹴りを食らわせる。
「グオオッ」
更に背後に回ると首に脚を巻き付ける。
「黄金の右!!それと左も…連打!うおおおおおおお!!」
ドドドドドドド。
頭をマシンガンの如く連続で殴る。
ドタンッ。
重い音を立てて、ついに熊が倒れた。
「ふう、良い汗かいたぜ」
倒れた熊を見て良いことを思い付いた。
「待っててくれよ。いずみちゃん!」
俺はさっそく作業に入るのだった。
次の日の朝、熊の毛皮を被りし1人の漢。
天王寺が学校に帰ってきた。
「これなら間違いなく惚れられるな…ふっ」
校門から堂々と入って行く。
辺りがざわついていたが気にもならなかった。
その光景をエルナは焦った様子で見ていた。
「あ、あのバカ。どう考えてもアイツが宇宙人だと公安の女にバレるわ……なんとしてもあの毛皮は処理しないと!」
エルナは飛ぶように階段を降りていくと天王寺の毛皮を引っ張る。
「な、何すんだ!!」
「いいから渡しなさい!!」
「ふざけるな!!これは大事なもんなんだよ!」
下駄箱の前で、2人は毛皮を取り合う。
「何してるのかしら」
その様子を登校してきた結は見た。
「アレはエルナ?どうしてMIBの彼女があの男に………まさかあの男が宇宙人!?」
そう考えるなり結は走り出した。
そして、背後から抱き付く様に天王寺にチョークスリーパーを狙う。
「くっ今度はなんだ!!」
「大人しくしなさい!!」
しかし、被っている毛皮をエルナが引っ張るせいなのか上手く首を絞められない。
「な、何なんだお前達は!!止めろ!!誤解されるだろ!やめろーーーーー!!」
俺の叫び声が朝の陽気に響き渡るのだった。




