【第一章 最初のスペルを選んでみよう! 】 ー 2/3
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フリルやレースついたドレスに着替え、短い髪型を整え、朝食を済ませた後、ニーナは待機していた馬車までエスコートしてくれた。一昨日のように、なぜコールくんも来ないのかと尋ねてみたが、ニーナはただ奇妙な視線を向けてきた。彼女の顔は、『当たり前でしょう?』と語っているようだった。
代わりに、彼女は「お足元にお気をつけくださいませ、エレイン様。」それから、小声で「領主様と奥様はもう中におられますよ。気をつけろ、悪魔ちゃん。儀式まで、二人に頑張ってね。」
「悪魔じゃないよ!」
「はい。は~い。いったらしゃい、お嬢様。」
馬車の中で、私は「ぐっ」という声を押し殺した。両親のどちらのせいか、空気は緊張で張り詰めていた。二人はどちらも口を開かず、私の方を見ようともしなかった。母はうつろな、どこか遠くを見つめるような目つきで窓の外を眺めていた。父の顔は、大きく広げた新聞の陰にすっかり隠れていた。馬車は動き出したが、誰も一言も発しなかった。
魔法の大聖堂がそれほど遠くなくてよかった。
こんな冷たい空気に我慢出来ないので、いつも通りに両親に温かい笑みを向け、二人を褒めよう。
「おはようございます。お母様の化粧が素敵ですね。お父様、靴がピカピカしてますね。」
「フムフム」とお父様がぶつぶつ言った。
お母様からの反応はなかった。
ああ、もう一度!
私は一人娘としての力を強めた。
「お母様、世界で一番綺麗ですね。大きくなったら、お母様みたいになりたいな~。」
反応ない。
陶器のような彼女の顔は......。
いつものように、またやってみよう。
「お母様、今日のー。」
「チッ。」
あら、今日の限界速い! あれ? ちょっと待って。エレイン1.0様、一体、この家族はどうなってしまっているの? 前世には親がいなかったけれど、さすがにこれは普通じゃない。今世での記憶によれば......。まさか、この冷徹な母親は、一度も娘のことを見てこなかったというのか⁈
エレイン1.0様はあんなに可愛くていい子なのに⁈
あ~、なるほど。前世のこと、ドキュメンタリーで見たかも。
「愛着障害」や「育児不安」かな?
待って、待って。 何でキツネさんから難しそうな言葉が浮かび上がっているの? 私のお母様が素敵、綺麗、完璧、天才、優雅......。素晴らしい母のことを考えるだけで、胸が高鳴った。それに対して、また難しい言葉が浮かんできた。『防衛機制としての理想化だよ』。ちょっと待って、何それ⁈ 私のお母様は......。ウチのお母様は......。二つの魂の戦ってるせい、釘を打たれたような痛みが脳を襲った。
「痛っ」って、馬車の中で頭を抱えながら叫んだ。
流石に両親はどちらも私の状態について尋ねなかった。しかし。お母様に見上げた同時に、彼女の目はひるみました。⁈ 気のせい? 彼女は私を見ていたばかりでしょうか? もっと早く目を上げていれば……。キツネさん、手伝ってください! このような冷たい母親の目......。 別の釘がこめかみに当った。そうか、前世の母も子供を捨てたタイプだ。
私は再び頭を掴んだが、今度は騒がしい馬車の中で女性のささやき声が聞こえた。
「噓。闇が......。」
もう一度私は顔を上げましたが、また彼女は私の視線を避けようとした。
酷いよ、お母様! この可愛いな娘に見てください!
「ん~、何? 闇?」と父は新聞の後ろから尋ねた。
「違います。旦那様。槍って。窓から、道端で槍を見かけました。。闇じゃない。」
いやいや、お母様。その嘘は簡単すぎじゃないの? 絶対に闇と言ったよ!
「フムフム、そうか。それは危ないな~。」
効いた‼ この夫婦がヤバイ.....。
父は新聞をたたんで次のページを開きました。動きのおかげで、【あの件】以来初めて彼の顔を垣間見ることができた......。
ええええええええええええ⁈
この臭い爺はどうして私の美しくて若い母親と結婚したのでしょうか? 今世では、両親をただ大人だと思っていたが......。この年齢ガップは怪しくないの? 急に前世から、「見合結婚」、「政略結婚」、「仮面夫婦」という難しい言葉が浮かび上がった。素敵な母親をもう一度じっと見つめた。どう見ても今世のエレインの年齢からして、この自由がない母親が前世の亡くなった私と同じぐらいはずだ.....。
じゃじゃ、前世の私、どうすれば同年代の美しい女性の視線を集めることが出来るか⁈
ん~、その言い方が......。
本能的に、八歳に貰った魔法空間という魔法を使って、結構前に屋敷の庭からの花を摘んだ。これだけ? 本当に? ん、じゃ......。私は温かい笑顔を浮かべて手を握った。
「お母様はプレゼントですよ。」
彼女も手を差し出したが、目は馬車の窓から離れなかった。
「まっ、ありがとう。」
この女性が一体!!
これほど強大な相手を前にして、身をキツネに委ねた。高速で走る馬車の中で立ち上がった。馬車の天井は大人が立つには低すぎるかもだが、エレインとしてはまったく問題ない。花をお母様の手に渡す代わりに、彼女の髪に花を挿し、茎を耳の後ろに押し込んだ。私にはこの変な家族の状況が理解できないかもしれないが、任せてください、エレイン1.0様。ウチは大人だったんだよ。
お母様はまだ振り向かなかった。
「終わった? 席に戻って。」と冷ややかに言った。
「ぐっ。」
私、エレイン・ハミルトン、バージョン2.0、この戦いには絶対に負けない!
歯を食いしばりながら、顔を覆ってマスク代わりにするために、手を上げ始めたが......。
あまりにもはっきりと近くで顔を見たので、凍りつきた。うわ、そのサファイアのような瞳。そのルビー色の髪。先間違ったな~。この女性は世界一綺麗わけではない。前世もこんな美しい人を見たことがない。もしかして......。前世のと私の顔はスッキリ似ているし、会ったことない母の顔とこの女は......。前世の孤児院では先生たちがいつも、ウチを預けていった女性はヨーロッパ系だと言われていたけれど……。
馬車の窓から差し込んだ光が揺らめき、彼女の肌の上で、まさにそのように踊っていた。花に押されて、彼女の赤い髪が耳の後ろから少しだけ顔を出し、日差しを浴びてきらめいた。思わず手を伸ばし、柔らかい髪のひと房を本来あるべき場所へと戻した。そうか。これまで問うていなかった疑問が、ついにふと心に浮かんだ。両親のうち、どちらが本来の王位継承者か? この美しい女性だろうか?
お母様は振り向かなかったが、急に横目で私をじっと見つめた。
私はいつものような明るい笑顔を向けるのではなく、まっすぐに彼女の目を見つめ返した。
「ママがプリンセスね。」
彼女は目を見開き、頬を赤らめた。オドオドに私に手を伸ばし、短いひと房 を指に巻き付けた。えええええええええええええ⁈ 私に触れるどころか、一度も私の方を見ようともしなかったのに⁈ 早い! 早い過ぎるだよ! 息ができない!
「エレイン。」
「は、はい!」
「どうして男の子みたいな髪型? またニーナちゃんにいじめられてる?」
ニーナがエレイン1.0様をいじめたの? どいうこと? そして、ニーナ.....ちゃん?
あれこれ深く考える前に、口が勝手に動き出した。
「ち、違います。自分で切りました! もし、お母様は気に入ったでしょうか? 可愛いですね。」
「うん。好き。」
「ありがとう! ママが、ひっ⁉」
その瞬間、馬車が道の岩に乗り上げ、私は母の方へと前方に放り出された。私は微笑みを浮かべ、運命を受け入れて目を閉じた。神様、ありがとうございます。「孤児のキツネ」として30年、「キャサリン」として10年を過ごし、母の腕の中に飛び込もうとしているなんて信じられない。もう限界なんです。ごめんね、二人とも。使命を続けられないな~。
母のしっかりとした手のひらが私の胸を打ち、倒れ込むのを止めた。
パッと目を見開くと、母の顔がすぐ近くまで身を乗り出していた。
まあ、この近さは悪くないな~。母も同じように返してくれることを期待して、私は愛情を込めて母の目を見つめた。しかし、これほど近くに、母の目の中に小さな黒い点が浮かんでいるのが見えた。何それ⁈ パラサイト? 病気?
明らかに戸惑っている私の顔を見て、母はにやりと笑った。
「やっぱり、闇を見た。」
傍にいつも上の空で聞いてるお父様は、「闇?」
「違います、旦那様。槍と申し上げたのですよ。道で槍を踏んでしまったようです。」
「フムフム、この王国はじりじりと貧しくなりますね。エレインの儀式の後、王様と話をしなければならないです。」
「おっしゃる通りです。エレインちゃん、お席にお戻りなさい。危ない。」
ちゃん⁉ 何で急に付けたの⁉
前世の私が恥ずかしさのあまり死にたかったけど、代わりに温かい笑みを浮かべ、酔いで足元がおぼつかないまま席へと戻った。私は興奮しすぎて、母の行動を疑う余裕がなかった。正直にハイな状態が長く続いたので、馬車に乗って王室の方々に挨拶する場面はあっという間に過ぎ去ってしまった。攻略対象の王子と会うのさえ、そのシャボン玉を割ることはなかった。幸いなことに、他の王子たちはいない。
大聖堂の控え室にて、家族に見守られる中、私は王国の王子と肩を並べて立っていた。こんなに近くの「攻略対象」と立ってるのについては、考えないように努めた。彼がいつから攻撃するかの不安が漏れ出しそうになるたびに、私はただ、母のことを考えるようにしていた。特に「エレインちゃん」と呼ぶことについて考えながら。
若い魔術師たちが車椅子に乗った老人を部屋の中へと押し入れた。
彼は静かに話した。
「始めましょうか。右手を挙げてください。」
私たちはすぐに従った。
「 イー・エクス・ピー‼」彼はしわの寄った手を上げ、叫んだ。
ん~、それって、英語の文字じゃない? E・Ⅹ・Pじゃない? その意味が何であれ、彼の瞳は光の魔法で輝きを放った。
「この数字か。なるほど、なるほど。流石、王族の血。昨年いらしたにもかかわらず、お二人ともすでに新たな限界に達していますね。通過を許可されています。」
次に若い魔術師が説明を始めた。
「昨年と同様、ルールは単純です。まず、あなた方の家族が新しい魔導書を一つ選んであげます。次に教会が二冊目を選びます。最後に聖域の文書館へ入り、自分に反応する本を選んでください。本が光れば、それは貴方の魔法のタイプや能力に適合している証です。言うまでもないが、自分に合わない本を持ち出すことは禁じられています。戻ってきた後、運命が結末を決めさせます。同意しますか?」
「はい!」
同時にロンドン王子は「もちろん。」と言った。
鐘が鳴り、家族たちに選定を始めるよう合図が送られた。彼らが立ち去って間もなく、再び鐘の音が響き、教会の魔術師たちも退室していった。やがて、私とロンドン様だけが残された。彼と二人きりになるのは、もしかすると初めてかもしれない。
ロンドン・ロード。第六の王子様。箱で描いてあるけど、ゲームで人気じゃなさそう。
十一歳。風の魔法。銀色の髪と銀色の瞳。線なくてスクエア型の眼鏡。常に兄弟たちに囲まれている。エレイン1.0様は、この少年が大人っぽ過ぎる。確かに、顔だけからして、将来は冷静で打算的なタイプになる気がする。正直に、彼はかつて前世で知っていた美術商を彷彿とさせる。いつか黒幕になるかな~。何しろ、イギリスの都市の名を持っているので。
「そんな変な顔で私を見るな」と、ロンドン様は眼鏡を直しながら言った。
「ごめん! いや、すみません、ロンドン。」
「いつから、ロンドンって?」
彼と同時に驚いてまばたきをした。確かにエレイン1.0様はいつも「ロード様」。
ちょっと怖いから。
同じく彼は私のことを「ハミルトン」と呼ぶようにする。
頭上で鐘が鳴った。
私たち、一緒に指定された扉を通り抜け、こぢんまりとした円形の前室に入った。扉を通り抜ける瞬間、冷たい魔力が肌をかすめるのを感じた。そのドアが魔法の扉かな? 目の前にあるアーチをくぐると、そこには薄暗く埃っぽい図書室が広がっており、光を放つ魔法の書物で満たされていた。やっぱり、8歳や9歳になった時と全く同じだね。でも、もしこれがそのゲームのことの一部だとしたら......。
「......駆け引きがあるはず。」と呟いた。
隣のロンドン様は「もちろんあるさ。だが、お前のような子には見当もつかないだろうね。あまり深く考えて、自分を疲れさせないことだね、エレイン・ちゃん。」
「あの、その呼び方は.....。」
「お~? もし、今は『エレイン・くん』と呼ぶべきかな? その髪型なんて。」
彼に温かい笑みを向けて、避けました。
「ロード王子様、頭がいいですね。欲しい呪文を対象にするつもりですか?」
銀髪の王子は眼鏡を押し上げると、見下ろすような視線を向けた。
「欲しいのって? 馬鹿なことを言うな。俺は最初に目についたものを選ぶだけだ。親たちは強力なものを選ぶだろうし、魔術師連中は効率的なものを選ぶはずだ。それに比べれば、俺か君が何を選ぼうと、取るに足らないことさ。」
「はい、はい。さすが、ロード王子様ですね。」
「またあのくだらない笑みか......。」
「え? どういう意味ですか?」
彼はただ首を振り、前へ歩き出した。
視界の隅で、何かがきらりと光るのが目に入った。右側には別のアーチがあり、その先にはもう一つ、小規模な図書室があった。中には、光る本がいっぱいあるそう。あれ? この扉が見たことないはず。
「えっと、ロード様? こちらは、新しい部屋?」
クールな王子は、私が指差したほうをちらりと振り返った。
「ハミルトンさん、それが普通の壁ですよ。」
「いや~、どう見ても......。」
彼は私を置いて歩き続けた。
私はため息をつき、彼についてメインの図書室へ向かい始めたが、背筋に悪寒が走った。瞬時に、額に汗が滲み出した。一歩も動けないの⁉ この恐怖は......。エレイン1.0様が決して味わったことのないものだ。これは、前世の? どうした、キツネさん⁉ 敵? 危険? 隠し攻略対象? 一つの答えが浮かび上がった。
「気を付けて。何かあったら、逃げられないよ。」
出口? ない? いや、大丈夫ですよ。本を選んで魔法で次の部屋に移動します。そして、ここに入って来たのドアも......。前世の自分を安心させるために、振り返った。
「ない⁈ 怖い、怖い、こわ......。えっ? 壁に何かが留められている?」
壁に貼られた紙の日本語を読んだ。
【コレクターズ・エディション取集アイテム: 攻略本 pg. 187】
マジで! ゲームアイテムは誰の目にも留まる場所に隠されている⁈
ページの下には、金属製のプレートが貼られており、【これを貼った者へ、この魔法を消して剥がしてくれ! 全然面白くないぞ! ——第十五の魔術師トム・ブラック】 と記されていた。
再び鐘の音が響き渡った。
図書館の方に目をやって、ちょうど王子の姿が消えていくところだった。
完全に一人。
「じゃ、このページは......えっと、『インパクト・レボリューション:スキルツリー左』。」
文章の代わりに、巨大な図の左半分とおぼしきものが描かれていた。タイトル通り、木の葉のような無数の丸が散らばり、それらをつなぐ何十本もの線が交錯していた。それぞれの「葉」は赤、青、黄、緑、紫、白、黒のいずれかで、その内側には鍵のシンボルが描かれている。正直なところ、前世のゲームがこれほど複雑になり得るとは知らなかった。これが、本当にロマンス系かな~。
深く考えながら、ただ壁から取り外し、手に持ったページを回転した。実はこれを見たことがある! この世界で! これは子供でも教わるような、魔法の図じゃない? 私の記憶では、この図書館の呪文も同じような順序で並べられていると思う。本のタイトルは誰にも読めないとはいえ、魔術師や大人たちが呪文を選ぶためにそれを使っている、ということはあり得るだろうか? 先、ロンドン様が言ったことのは、そういうこと?
「でも......。なんか......。」
ページを掲げ、図書館の書架と位置を合わせた。私が見たことのない「右半部分」の存在を示唆する一枝があった。ロンドン王子には見えなかったアーチに向かって、私の足は自然と動き出した。あのページによれば、右側は小さな図書室に対応しているはずなのだ!
右側の図書室に入って、私の目は興奮で輝き出した。
「フフフ、つまり、ここは隠された宝物庫! こんな発掘が懐かしい~。おそらく、こうした本の一冊に大金を払う人がいるでしょうね。私の魔法空間の中にいくつかな~。」
エレイン1.0様がまた、私の魂を掴むのを感じた。
【ダメですよ、エレインちゃん。】
「あ、はは、ごめん、ごめん。悪い冗談。と、とりあえず、ここで少し見てて、広い部屋に戻りましょうか。十歳の私がここで何か選んだりすると、目立ってしまいそうね。」
一番近くにある光る本に歩み寄り、タイトルを読もうとそれを少し傾けてみた。
また鐘が鳴り、大きな声が私を叱った。
「ハミルトンお嬢様。早く何か選んでください。」
驚いて飛び上がると、本が棚から滑り落ち、私の頭に当たって地面に落ちた。棚に戻すために拾ったが.....。5回目にその鐘が鳴り、その本と瞬間移動してしまった。
読んでくれてありがとうございます。
もし分かりにくいところがあったら、ぜひ教えてください!
これは、第一章の2/3!




