【第三章 知恵を高めてみよう!】- 3/3
来てくれてありがとうございます! よろしくお願いします!
このエピソードは、特に9番目(休憩2)とよく繋がります。記憶を呼び起こしたいなら、そこへ行ってみてください!
抱擁がいつまでも続いていると、その先生が私たちの注意を引こうと咳払いをした。
「調べたいこと、たくさんありますが、家族にこの素敵なニュースを伝えたほうがいいですよ。二人のお母様とも、いつもの場所にいらっしゃるはずです。」
私は「え? いつも?」と聞いたけど、再び第19王女が私の手を掴み、強引に連れ去った。「ちょっっ! ひっ!」
ドアのところで、私は肩越しに教卓の方をちらりと見た。視界が元通りになっていたので、そこに広げられたままになっていた攻略本のページが、はっきりと見て取れた。先生は気づいていないようだった。それどころか、彼女は姿を現したクスコ様が立っていた床のあたりに、しゃがみ込んだのだ。もしかすると、彼女が王女から切り離した何かが、まだそこに残っているのか? もし前世の私でそれを持っていたら、うわ、とても便利だね!
そこから、クスコ様は別の扉の前へと連れて行った。でも今回、そこでは二人の使用人が待ち構えている。彼らは彼女の姿を見て呆気にとられ、口をあんぐりと開けた。だが、彼女は説明などせず、そのまま扉を押し開けて中へと進んだ。中に、薄暗い小さな廊下で、私の靴は柔らかな赤いカーペットに沈み込んだ。
近くのアーチ道から、女性の声と誰かの泣き声が漂ってきた。
「......まさか、ずっとこんな噓⁈ それで、あたしに相談に来たわけ?……何と言えばいいか……まあ、もちろん君とエレインなら、それにニーナちゃんも、是非ここに身を隠してもいいわよ。でも、その道が......。」
「分かってるよ! でも、もう我慢できない。」とお母様は声を強張らせて答えた。
あれ? 私? ニーナも? ここで隠す⁈ そして、何を我慢できないの? この前、ニーナにも似たようなことを言っていなかったか? あっちは、何の話? また「情報収集」をするのは正直あまり気が進まないが、この話は絶対に聞いておきたい。
私はクスコ様の掴む力に抗って、身を引いた。
「ちょっと待って、クスコ様」と囁いたが、彼女は待たなかった。
私たちは角を曲がった。自分の母は、見知らぬ綺麗な女性の隣のソファに座り、その人の手を握りながら泣いている。ここで何が起きているんだ? 私は入り口に立ち尽くし、驚きで凍りついたまま、クスコ様の手を振りほどいた。彼女が『ママ』のような声を上げ、その二人の大人の目を引いた。
その女性は衝撃のあまり、飛び上がるようにして立ち上がった。
「クちゃん!! ど、ど、どっ」
小さな王女は母親に飛びついて首に腕を回し、母親をあやうく転ばせそうになった。
私の母は涙ぐんだ目をぬぐい、ぎこちない動作で立ち上がった。泣いているのを隠そうとしていて、どうやら私がそこにいることに全く気づいていないようだ。母が泣いているのを見るのが怖くて、クスコ様と彼女の母親との再会の場面を完全に見逃してしまった。同じように、その女性も私に気づいていないようだった。
「あの~、ママ。私もいますけど......。」
突然、母の視線がレーザーのように私に突き刺さった。
「は⁈ 一体どうやってここに来たの? それに、なんでクスコちゃんと一緒にいるの?……待って待って、あれはクスコちゃんだ! 姿が見えるか!」
母は目元を拭おうと、さらに懸命に手を動かした。
どう考えても、母はこの家の事情を実によく知っているようだ。
彼女は続けた。
「私の馬車にこっそり忍び込んだの?」
「違います。えっと、ニーナは、目を治してもらうために、クスコ様の教師に会わせようとここに連れてきてくれた。お母様は? なぜここにいらっしゃるのですか? そして、この人は?」
「またニーナか? まったく、あの女を殺っ......。」彼女はつぶやいた。「あ~、こちらは幼なじみの先輩だ。」
「おさな......なじみ? でも、何で泣いてるの?」
「それは.......いや、今泣いてないよ! それより、教えてくれ、先生は何と言っていたんだ?」
あんなふうに私を避ければ済むとでも、本気で思ってるの?「エレイン1.0」ほど世間知らずなわけでも、父ほど不注意なわけでもないよ。明らかに何かで動揺しているね!
クスコ様のお母さんは、娘を抱きしめていた姿勢から立ち上がった。
「待って、サファイアちゃん。この可愛いな女装男子は誰? そのコールくん?」
「は? 娘だよ。この間、自分で髪を切ったけど。」
「へ~、これはその子か......。」
その女性の顔に奇妙な表情が浮かび、
母は顔をしかめた。「......。」
「サファイア!! これはヤバすぎ!! こんなとてつもない嘘を隠し通せると本気で思ってたの? 彼女をここに連れてこなかったのも、納得だわ。あまりにも明白すぎるよ!」
母様はただ、私たちから目をそらした。
「......。エレイン。もう行かなくちゃ。クスコちゃんたちは祝うべきことがたくさんあります。それに、君のメイドともしっかり話したいです。」
彼女はドアの方へ歩き出したが、私は動かなかった。
「お母様、クスコ様の母は何の話をしているのですか?」
「大きくなったら教えてあげるよ。」
「ママ、嘘つくの、私より下手だね。」
「⁉」
すぐそばで、クスコ様が母親のドレスを引っ張った。
クスコ様の母親は見下ろし、奇妙な手つきで身振りをし始めた。それに応じるように、クスコ様もまた同じような身振りをする。すると、母親は再び答えたそう。あれ? なんか、見たことがある。前世で、かな? ん~、ん~、そうか! 手話! 孤児院で手話を使っていた子供たちとの記憶が突然あふれ出してきた。気のせいかもしれないけど、あの身振りのいくつかに見覚えがあると思う。もしかして、どちらの世界でも同じシステムが使われているのかな? だとしたら、実は私、いくつか言葉を覚えているかもしれない。
その女性の手がふと止まり、彼女は「いいえ。誰もエレインに怒っていませんよ。ただハミルトン公爵夫人は口が軽いですね」と説明した。
クスコ様の手が、再び動き出した。
それに応えて、その母親は私をまっすぐに見つめた。
「あたしのクちゃんを助けられたの? 君が『私の恩人』と呼んでますね。」
自分の母への心配は消え去り、私はクスコたちに暖かい笑顔を向けた。あ~、弱みを見抜かれてしまった~!
「アハハ、いや~~~、それほど特別なことはしていませんでしたよ。主にあの先生のおかげです。私はただ、正しい方向を指し示しただけですから。」
クスコ様の手が、激しい勢いで私に向かって動いた。
「彼女は、君が謙遜しすぎだと言っていますよ。彼女も感謝したがっていますし、私も同じ気持ちです。でも、いいな~、サファイアの娘さんが私の娘を救ってくれることになるとは……。」
「えっと、サファイアって......それはお母様の名前? 綺麗ですね~。」
瞳の色に合っていると言いたいけれど、実は、この世界で青い宝石が何と呼ばれているのかは知らない。
母が私の肩をつかんで、「名前じゃないよ。行こう」と冷ややかな笑みを浮かべて言った。
クスコの母親はくすりと笑った。
「エレインちゃん? 娘の命を救ってくださったので、一つお聞きしたいことがあります。」
「はい?」
自分の母は身構えるようにして身を硬くした。
「今の人生は好きですか? もし明日、新しい名前を付いて、見知らぬベッドの上で目覚めたとしたら、君はどう思うでしょうか。」
驚いてまばたきをした。それは本当に10歳の子供にするような質問か? どう考えても、これはさっきの母の涙に関係している。それに、母の「嘘」ともつながっている。さっき立ち聞きした話からすると、母は父のもとから逃げ出して、この屋敷で隠そうと考えているよう。あの「悪魔の件」以来、彼女が何らかの悩みを抱えていることは分かっていたけれど、そこまで? まぁ、確かに、誰が見ても両親の年齢差はあまりにも大きすぎだね。
論理的に考えることはできるが、同時にどこか胸を射抜かれたような思いがした。何しろ、前世の自分が全く新しい世界に目覚めたのは、ほんの1ヶ月前のことだったのだから。私はかつて知っていたものすべてを、すでに失ってしまった。とにかく、こういう質問は避けたほうがよさそうだな~。悪いね、エレイン1.0。君は今眠っているんだから、私が嘘をついてもいいよね? クスコ様の母親の笑みが深まり、ニーナが私に【オーラ】を使った時のような奇妙な感覚が、肌を伝うように広がった。
突然、頭がすっきりした。
あ~、そうですね、正直に答えた法がいいわね。
「ご質問の意図がよく分かりませんが、それについては特に好きでも嫌いでもありません。ママとニーナは、まだ私と一緒にそこにいてくれるだろうか?」
その女性は微笑んでうなずいたが、それは私に対してというよりは、むしろお母様に対してだった。
私は「じゃ、問題ないね!」と答えた。
「よかった。それじゃあ、改めてありがとう、エレインちゃん。いつでもクちゃんに会いに来てね。フフフ、カイロにも。彼は、君は小さい子供のわりにはなかなかいいやつだと言っていたよ。」
母は友人を睨みつけ、「先輩、私の娘に魔法を使うのはやめて」と言った。
「フフフ、じゃ~、またね。」
母が私を連れて行ってしまう前に、クスコが私に手を振って別れの挨拶をした。
キツネさんが眠っている間に前世の記憶に頼るなんて少し恥ずかしい気もするが、私はぎこちなく彼女にハンドサインを送った。
【どういたしまして】と【バイバイ】出来た。
彼女は驚いて眉を上げ、指で口元を覆った。
*********
こぢんまりとした屋敷から出てくる間、母は一言も発しなかった。その視線はまっすぐ前を向き、顎は何度も食いしばられていた。やれやれ、こりゃ大変だ。ニーナが私をここに連れてきたことへの怒りか、母が心の中で葛藤している何かなのか、どちらの方が厄介なのだろうか。外で、ニーナの乗った馬車に近づくと、彼女はまるで叫び声を上げる準備でもするかのように、深く息を吸い込んだ。
しかし、その前。
「ハミルトン様! ハミルトン様! 待って!」
立ち止まって振り返ると、カイロ王子が白い封筒を頭上で振りながら、こちらに向かって走ってくるのが見えた。母は眉間にしわを寄せ、私を上から睨みつけた。その表情は、『今度は何?』と雄弁に物語っていた。
カイロ王子は「コインを忘れえましたか?」
「あ~、うん。実はね、カイロ様、クスコっ」
母はカイロから届いた封筒をひったくった。
「すみません、カイロくん。急ぎの用事があります。」彼女はそう言ったが、それでも自分自身で封筒の中を覗き込んだ。「これは魔法のコインじゃない?」
私は慎重に、彼女の手から封筒を引き抜いた。
「はい、は~い。それは私の~。カイロ様、特定されましたか?」
「もちろん! それは、前回のより素晴らしい掘り出し物ですよ。でも気をつけて、あと1回分しか使えない。そのせいで、実際にお見せすることは出来ません。封筒に説明書きを入れておいたから、必ず読んでおいてね。それにしても、どうやってそれを見つけたのか、すごく気になるな。」
母は彼に手を振って追い払うと、クスコの時と同じように、また私をその場から引き離した。
私は振り返りざまに叫んだ。
「ごめ~ん、行かなきゃ! 母親と妹を探して! 彼女の問題は解決しておいたから!」
歴史オタクの目は大きく見開かれた。
「ええええええええ⁈」
母親は明らかに苛立ちを募らせ、馬車の御者に怒鳴りつけた。
「他の皆たちに、ニーナとエレインと一緒に戻ると伝えてきて。」
「かしこまりました。」
彼女が勢いよく客車のドアを開けると、そこには何食わぬ顔で本を読み続けているニーナの姿があった。
「やりすぎたよ、ニーナ!」彼女はそう言い放つと、馬車に乗り込むのを手伝おうと申し出た別の使用人を無視した。
「ほ~、バレちゃった~。」とニーナはそう言いながら、本のページをめくった。
「言ったでしょ! あの先生を屋敷に連れてくるって!」
「そ~う? それは覚えてな~いよ~。」
「それは、噓! 噓、噓、噓!!」
差し伸べられた手を受け入れ、私は反目し合う二人の女性が乗る馬車に乗り込んだ。
ライオンの巣穴に飛び込む、といったところでしょうか。正直なところ、エレイン1.0とキツネさんが眠っていてよかったと思うな。今日のお母様は、あまり優雅とは言えない振る舞いをしているからね。今日どんなに感情の起伏が激しい状態にあったとしても、あんなにわがままな振る舞いをしていい言い訳にはならない。1ヶ月前の、あの冷静なお母様は一体どうしちゃったの?
馬車が動き出すと、二人の女性はたちまち互いに罵声を浴びせ始めた。最初は「情報収集」の好機かと思ったが、この叫び声には大した中身がなかった。ニーナは母が抱える問題についてすでに知っていたはずだ。母はひどく腹を立ててはいるものの、私の前でその秘密を漏らしてしまうほどではない。
そこで代わりに、カイロの封筒から手紙を取り出した。
【ハミルトン様へ。このコインは150年前に作られたものです。「運」ではなく、「知恵」をほんの少し高めてくれるものです。
何百年もの時を経て力が弱まってしまったあの強力な「運のコイン」とは違い、こちらは最初から一度きりしか使えないように作られていました。正直なところ、持ち主や他の誰かが誤って使ってしまわなかったのが不思議なくらいですね。
こうしたコインは、助言を求めて遠方から訪れる巡礼者のために、教会が10年ほどの期間だけ製造していたものです。狙いは、見ず知らずの他人に決めてもらうのではなく、自ら答えを見つけ出すための「明晰なひととき」を本人に与えることにありました。しかし、悪意を持って買い占める者たちが現れたのせい、すぐに製造が禁止されてしまったのです。今では誰も覚えていないから、これを持っていても咎められる心配はありませんよ。僕は試験の日やこれがあればよかったな~、と思いますね! もちろん、大ピンチに備えて取っておくべきですね。でも注意してください。「知能」を高めるものじゃない。
次のコインは、楽しみ! ― カイロ・ロード】
うわ、さすが、カイロ王子様。ありがとうね。でも......。
私は彼の手紙と、封筒に入ったままのコインを交互に眺めた。「知恵」だって? そんなもの、一体どうやって測るというんだ? もしここが本当にゲームの世界で、これがゲームのアイテムなのだとしたら、本来はどうやって使うものなのだろうか? あと、見つけた時に触れたが、何も感じなかった。カイロに渡した時も、なぜ「1回分のチャージ」が消費されなかったの? そのコインをどうしようかと思案しながら、ニーナが私の注意を引くようなことを言った。
「あんたがそんなひどい母親じゃなかったら、こんなことには絶対にならなかったはずよ! 明らかに、あんたの目を引こうとしてわざと問題行動を起こしているだけです。」
「うるさい! 母親になりたいなんて、一度も望んだことはなかったよ。」
「まあ、あんたはそれを間違いなく自分の有利なように利用したな。」
「何を知ってるっていうの! 君はただの子供! もし君が彼女から目を離さなければ......。」
「は⁈ 子供だろうとなかろうと、少なくとも私の方があなたの娘さんのことをよく知っていますよ! それで、彼女が髪を切ってこんなことになったのは、どう考えても君のせいだってことくらい。」
私は馬車の中で背筋を伸ばして座った。私が髪を切ったことが、この件と何の関係があるっていうの?「エレイン1.0」の頃に比べれば、あれなんて一番疑わしくない行動でしょ。ん~、キツネさんがまた目を覚ましてくれたら、本当によかったのに。昔の記憶の大部分が失われているせいで、この二人の女性の話がよく分からないんだ。それにしても、母は『子供なんて欲しくなかった』のような言葉と言ったばかりだ。結局のところ、エレイン1.0とキツネがまだ眠っているのは、本当によかった。
でも……また考えずにはいられない。この二人の関係は、一体どういうものなんだろうか?
とりあえず、私にできる精一杯のことは、二人に向かってとびきりの笑顔を見せることだった。
「あの~、私、ここにいるんですよ。私の前で言い争うのはやめてくれませんか?」
二人はどちらも私の声を聞かず、それどころか互いに怒鳴り合いを続けていた。
私はただため息をつき、カイロの封筒に入っていた魔法のコインに目を落とした。もしかしたら、それを使って、二人の喧嘩を止めさせる方法を見つけられるかもしれない。ただ、カイロが言ったように、そのコインを持ったからといって頭が良くなるわけじゃない。そもそも十分な情報がなければ、いくら頭をすっきりさせたところで、あまり役には立たないからね。例えば、正直なところ、カイロとクスコの家に私を連れて行ったことで、なぜママがニーナに腹を立てたのか、私にはさっぱり分かりません。
それが、お母さんがお父さんから逃げ出したいと思っていたことと、どうつながっていたの? クスコ様のお母さんが私に気づいた時のことを思い返してみた。彼女はなんて言ったんだっけ? 【こんなとてつもない嘘を隠し通せると本気で思ってたの? 彼女をここに連れてこなかったのも、納得だわ。あまりにも明白すぎるよ!】って。彼女も、私の母は嘘をつくのが下手だと思っていたようです。でも、それならなぜ、私に会ったときにそんなことを言ったのでしょうか? いくら考えても、どれも筋が通らなかった。
母の声から、ついに少しだけ熱が消えた。
「エレインをあそこに連れて行ったなんて、本当に信じられない……。パール先輩はすぐに気づきましたよ。私が言った通りに。」
「わかってるよ。彼女が君を説得してくれると思ったんだけどね。」
あれ? パール先輩? それはカイロとクスコのお母様? 真珠か? これって、王子の名前みたいな感じ? 何か仕掛けがあるの?
ニーナは首を振り、話を続けた。「でも、今ならはっきり分かるよ。お前の頭は固すぎて、まともな話なんて通じないんだな。何を言ったところで、お前はただグチグチと文句を言い続け、自分の優柔不断さを正当化する言い訳を並べるだけだろう。
母の美しい顔が、また泣き出しそうに歪んだ。
「努力はしているんですよ!! ただ......ただ、どうすればいいのか分からない。どちらの選択肢もあまりにひどいものなので。」
ニーナは再び首を横に振った。
「よくそんなことが言えるな。どう見ても、お前の優柔不断さのせいで俺たち全員死ぬことになるぞ。」
え? ちょっと待って。まさか、大げさに言っているだけだよね?あの悪魔について、見間違いなんてしていなかったはずだ……。もしかして、家族が死んだ理由は全く別のところにあるんだろうか? いやいや、その悪魔が全員を殺すというのは、完璧な計画だったはずだ。……んん、だが、彼女たちが今言ったことのは……【どちらの選択肢】......【お前の優柔不断さ】......。
母は絶望した様子で身を乗り出し、両手で顔を覆った。その仕草は、私が手で狐の面を作った時の様子に少し似ていた。
「ニーナ……告白したいことがあるんだ……」
私の若いメイドが手を掲げ、二人を見つめている私の方に目を向けた。
「お嬢様、お耳をお塞ぎください、お嬢様。」
「あ、はい。」
「いい子ね」彼女は微笑んで言った。
私は微笑み返し、素直に耳を塞いだ。
......。
私、いい子じゃないよ!
彼女が母の方を向き直るとすぐに、私は耳から指を少し外した。
お母様は「あの悪魔は、次は私を狙っていたのよ」と、母は手で口元を覆いながら言った。「コールの中で弱っていくにつれ、何週間もの間、私はその声を頭の中で聞いていた。」
私とニーナは、二人とも目を見開いた。
「信じてください。決断したい。でも、君が言ったあの『優柔不断さ』に、今まさに蝕まれているような気分なんだよ。あの夜言ったでしょ。自分がににちゃんほど強くないってこと、わかってるんだ。」
二人の女性の間に沈黙が流れ、彼女たちはただ長い間、互いを見つめ合っていた。
静寂の中で、若く美しい母を想い、胸が痛んだ。この世界で「悪魔」がどういう仕組みで動いているのかはよく分からないが、明らかにそいつはコールと母の負の感情を糧にしようとしていた。あの忌々しいゲームの箱によれば、彼女は誰にも言えない秘密を抱えたまま、逃げ場もなく閉じ込められて死ぬ運命だったはずだ。ニーナだって同じだ。二人とも、この痛みを抱えたまま死んでいったことだろう。
よし、決めた。最近、ただのわがままなお姫様だと思っていたけれど、彼女を救わなきゃいけないと分かる。キツネさんやエレイン1.0の手伝いを借りずに。事実やパズルのピースをすべて把握しているわけではないかもしれないが、馬車の中にいたある一人は、間違いなくそれらをすべて知っている。
私は走行中の馬車の中で立ち上がり、魔法のコインを手のひらにあけると、慎重に母の目の前まで歩み寄った。以前と同じように、それを手にしても特に変わった感じはしなかったが、何に反応するのかはなぜか分かっていた。このコインは選択を迫るかも。
私は温かい笑顔を浮かべて手を握った。
「お母様はプレゼントですよ。」
彼女はニーナと変な視線を交わすと、私の方を見ずに手を差し出した。
「まぁ、ありがとう。」
コインが彼女の手のひらにぽとりと落ちた。金属が肌に触れた瞬間、彼女の全身はこわばり、まるで薬物でも摂取したかのように瞳孔が開いた。一秒の後、彼女は魚のように口を大きく開け、力が抜けた手からコインを落とした。その大きさにもかかわらず、コインは重い音を立てた。そして……塵となって崩れ去った。
彼女の表情はすぐに元通りになり、怒りや心配の色は消え失せて、背筋を伸ばして座り直した。
何か言い出しそうな様子だったが、その目はただ、考えを巡らせるようにあちこちと泳いでいた。
ニーナは、まるで私が角を生やして悪魔に変身したかのような目つきで私を見た。
「エレイン! 彼女に一体、何をしたの?」
「へへ~、お母様を救ってみたよ。」
まぁ、それより、自分自身を救うための手段を渡した。
ニーナは信じられないといった様子で、そして恐怖を浮かべて母親に目を向けた。
お母様は、「うん。そうかも」とつぶやいた。「決めた。」
その後、家までの道のり、お母様は私たちに何も言わなかった。
読んでくれてありがとうございます。
もし分かりにくいところか、面白い点があったら、ぜひ教えてください!
エレインの母親の秘密をまだ明かせていなくて申し訳ありませんが、もうすぐそこまで来ています!次のメインストーリーに取り掛かるのも楽しみですが、今はまだエレインの家族が危険な状況にあります!




