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第二夜 浮臥龍と鳳雛と高須○リニック

ご当地雀士 & ギャラリー


小西光 … 通称コシヒカリの名で知られる凄腕雀士。塩おにぎりを食べないと戦えない。食が細い。

 佐渡馬蔵 … 名前にサド、マゾが入っているが性癖はノーマルな老人。よく喉を詰まらせる。


上杉田景勝 … 佐渡の付き人。いつも馬鞭とろうそくと縄を携帯している生粋のサド。愛読書は「花と蛇」


所沢ジョージ …東京都所沢市、川崎市を中心に活躍する雀士。群馬と千葉と茨城を見下している。


 目黒福蔵 … 東京麻雀殺戮闘技場の支配人。黒くもないしセールスマンでもない。


 桜田門除水 … 関東に君臨する総会屋の元締めの一人。しのぶに恥をかかされた経験がある。



 決して眠らぬ街、魔都・東京を舞台に繰り広げられる最強の博徒たちの戦いに終わりはない。

 今日もまた人知れぬ場所で飢えしか知らぬ獣たちが命の削り合いに興じる、あたかも誘蛾灯に誘われる羽虫のようにその魂の一片が燃え尽きるまで…。


 勝負の世界に遺恨無き戦いなどあるはずもなく敗者が崖を昇りつめ復讐を果たさんが為に戦いを挑む事など珍しくもない巷である。


 その日、東京に現れたのは三つの影であった。


 「しのぶ、絶対に貴様を殺してやるぜ」丸いサングラスをかけた初老の男が怨嗟の声を上げる。

 彼の名前は小西ヒカル、コシヒカリの名で知られた東北では有名な博徒だった。


 「落ち着けや、小西の。怒っていあたらツキが逃げちまうぜ?」


 白髪の男が仇敵を前に不敵に笑った。

 この年長者然とした老いぼれの名前は佐渡島馬蔵、人呼んでサドのマゾ。新潟県を中心に活躍するする代打ちであり、小西と拮抗している。


 ――双方、いわゆる商売敵の間柄であった。


 「黙れや、ジジイ。俺はしのぶを殺す為にわざわざバスで東京にやってきたんだよ。今さら羽田で東京バナナだけ買って帰るわけには行かねえんだよ!」


 コシヒカリは両手に持った東京バナナの袋を振り回す。親戚、知人に送る分は既に宅急便で送っている。


 そして、――ここにあるのは今日の晩にホテルで食べる分だ。


 「そこが若いっつーんだよ。いいか、東京土産といえば昔から鳩サブレと決まってんだ。なあ、景勝?」


 「ええ、全くです。佐渡の旦那」


 佐渡の付き人、上杉田景勝は袋いっぱいに詰まった鳩サブレの箱を見せつけた。ある意味、この三人の目的は達成されていた。


 「ハッ、そんな喉に詰まる食べ物いるかよ。ところでしのぶの野郎は何処で打っているんだ?」


 景勝はジャンバーのポケットからスマホを取り出して確認する。その間、わずかな動揺があった事をコシヒカリは見逃さない。


 「東京麻雀殺戮闘技場…です」「


 よりによってコロシアムか…あの野郎」


 コシヒカリは不満を隠せずにいる。なぜならば彼は以前に配牌の数が二十を越える超次元麻雀(※スタジオみりすのやつ)で敗北したのだ。


 残念ながらコロシアムでは四次元麻雀の卓は存在しない。


 「好都合だ。おそらくヤツの得意とするドンジャラの卓も存在しねえ。野郎、何が藤子不二雄スペシャルだ。ドラえもんとハットリくんとパーマンとお化けのQ太郎って明らかにゲームが違うだろ!」


 先の戦いで麻雀対ドんじゃラの戦いにおいて佐渡はダブル役満で大差をつけていたところを「藤子不二雄スペシャル」でひっくり返された苦い記憶がある。


 (あの時、しのぶの手牌が多すぎる事に何故気づかなかった…俺ッッ‼)


 後悔後先に立たずであった。


 「とにかく今日はお前と組んでしのぶを殺すぜ…」「いざ行かん、決戦の場。東京は水道橋、塔巨ドーム地下十階(※徳川光成の闘技場の下にある)東京麻雀殺戮闘技場へ」


 そして三人の男たちは電車に乗って上野から水道橋に向った。


 一方その頃、しのぶをつけ狙うもう一人の影が水道橋に現着する。


 「しのぶ、あの時の屈辱は忘れてねえぞ…」


 今にも爆発しそうな殺気を放つ痩身の男は荒々しい足取りでドームの入り口に向かう。入り口に立っていた黒服の男たちは警備員の男たちを差し置いて男の前に立ちはだかった。


 「退けや、雑魚ども。俺を誰かわかってんのか?」


 チンピラ風の口をきいて黒く服たちを威圧する。黒服の人はかしこまった態度で男に向って頭を下げた。


 「ジョージ様、貴方様の入場は運営により禁じられているはず。どうかお引き取り下さい」


 「おいおい、兄ちゃんよ…オメーじゃ話にならねえんだ。支配人の目黒を呼びな」


 痩身の男はサングラスを上にあげて高身長の黒服を睨んだ。不穏な気配を覚えた警備員が割り込もうとしたがすぐにドームの内部からタキシード姿の男が駆け足でやって来た。その後ろには恰幅の良い禿頭の男がゆっくりと着いてきている。


 「これはジョージ様、よくぞお越しいただきました!」


 銀縁の眼鏡をかけたタキシード姿の男はすぐに頭を下げた。この男こそ東京麻雀殺戮闘技場の支配人を任されている男、目黒福蔵だった。


 「おっ、クロちゃんか。懐かしいね」


 謎の博徒ジョージは気安い風を装って目黒に声をかけた。警備員たちはその様子を見て安心したのかすぐにその場を立ち去ったが、目黒当人は腫れ物を見るような目でジョージを見ていた。


 「その節はどうも。出来ればアンタには二度とここに来てほしくはなったんだがな」


 目黒は吐き捨てるように言う。

 ジョージはニヤッと笑い、もう広いの男を見た。


 「今日は俺ゲストなわけよ。そこの桜田門センセイのね」目


 黒は呆れた様子で隣の最重要VIPの顔を覗き込んだ。その男こそ、かつてかつては与党の黒幕の一人と言われた桜田門一派の重鎮の一人である桜田門如水だった。


 「よく来たのう。ジョージはん。アンタの為に今日は大部隊を用意しとったで」


 「…センセ。稼ぎたいなら真っ当な雀士を雇った方がいいぜ。今日の俺は東京都を代表する雀士じゃねえ。ただの復讐鬼だ」


 ジョージの笑顔にすごみが増す。この凶兆にしか見えぬ顔つきも今の桜田門厭ってはこの上なく頼もしい。


 「ワシはな、金が欲しいんやない。あの男ふじわらしのぶの悔しがる姿が見たいだけなんや」


 「クウックック…。なら目的は一致したな。いいぜ、この東京都所沢市在住の所沢ジョージが今日はアンタ専属の打ち手になってやるぜ」


 東京都所沢市を中心に活動する雀士所沢ジョージは肩で飾を切りながらドームの入り口に立った。

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