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第一夜 巨悪の胎動

ふじわらしのぶ … 主人公。無敗の代打ち。通り名は”鬼神龍”。


シャチホコ金太郎 … 名古屋県を中心に活躍するプロ雀士。裏にも通じている。口は悪いが麻雀の腕は超一流。


ずんだ餅太郎 … 仙台県を中心に活動する裏社会御用達の雀士。老獪な性格。


仲井間南風丸 … 沖縄県を中心に活動する賭博師。その正体はシーサーの化身。



 東京、新宿。


 都庁の地下百階にあると言われている超高級カジノで四人の麻雀打ちが己の魂を削り合いながら、勝負に興じていた。

 この戦いはタダのゲームではない。


 日本有数の秘密組織の面子を賭けた戦いでもあった。このご時世に代打ちなど眉唾物が過ぎて論外と思われる方々もおられるだろうが超々高レートもしくは組織の面子を賭けた戦いともなれば、さほど珍しい勝負事ではない。

 まして勝負師たちが日本有数の麻雀打ちともなれば至極当然という成り行きでさえある。


 

 東風戦の二局まで静観を保っていたシャチホコ金太郎がうなりを上げた。


 「リーチッ‼…三萬や!通るやろ?」


 名古屋のシャチホコと恐れらる男が卓に三萬を捨てる。

 他の二名は内心、冷や汗を流しながら見守るしか無かった。


 (流石は名古屋のシャチホコ。この局面で諸部の流れを決めるおつもりか…)


 仙台の雄ずんだ餅太郎、苦しげな顔をしながら牌を引く。


 七のピンズ。あのシャチホコに限って安い役ということはないだろう。

 安く見積もっても八千は固い。さらにドラが乗れば跳満という情況も考えられる。


 (悪く思わんでくれ、御二方…)


 老獪な笑みを浮かべながら安牌である一ピンを捨てた。

 当然、チャンタ狙いだった彼は戦術の変更を迫られた。

 シャチホコの麻雀は所謂”勘麻雀”で一度主導権を握られるとあっという間に大差をつけられて敗北する危険性が大であった。


 (それにしてもシャチホコさんって名古屋の人だったよな。言葉遣いアレでいいんだろうか…)


 策士と呼ばれるずんだ餅太郎は隣の拓で飄々と牌を切る沖縄の若獅子シークワーサー南風丸を見た。

 当の南風丸は南風だけにどこ吹く風という様子で九ソーを切っていた。


 シャチホコはさも悔しそうに舌打ちをする。


 (やれやれ、みっともない。あれはブラフだな)


 目下、南風丸の興味はずんだもんでもシャチホコでもなかった。

 彼の左隣に座る伝説の博徒だけが彼の敵だと言っても過言ではない。


 「リーチ」


 その男が牌を切る。


 「‼」


 その意外過ぎる捨て牌に三者三様の反応が現れた。

 緊迫する戦場のど真ん中に投ら荒れたのは黄色いのび太くんの牌だった。


 「ふじわらぁぁ…ワレ舐めとんのか!ケツの穴に奥歯突っ込んでガタガタ言わすぞ、ドラァッ‼」


 名古屋のシャチホコが吼える。

 だが博徒ふじわららしのぶに微動だにしない。お漏らしがバレぬようにオムツはここに来る前に三重にして身に着けている。


 ――最早漏らす事は彼にとって大前提だった。


 「さっさと引けよ。きしめんういろう君よ」


 しのぶは素でシャチホコ金太郎の名前を間違えた。


 シャチホコの顔は怒気で種に染まり、彼を除く二人は失笑を堪えている。


 「きしめん舐めたら、怪我するでぇっ!このダボハゼがあっ‼」


 シャチホコはイーピンを切る。


 「御無礼…ドンジャラ」


 パタパタパタ…しのぶの牌が開帳される。笑顔のドラえもんの牌が十三枚あった。


 「ドラえもん、のみ。一億点だ」


 シャチホコは額の浮いた血管が一瞬にしてぶち切れた。


 「ドラえもんの牌、そんなに無えよ‼」



 その通りである。


 普通『ドんじゃラ』の役牌はキャラが同じ牌三枚、道具が同色で九枚で構成されている(※作者の曖昧な記憶)。シャチホコ金太郎はプロ雀士になる前はドんじゃラのプロだったのだ。


 「おいおい、シャチホコさんよ。もしかしてアンタ、ドんじゃラは麻雀に劣るとでも言うのかい?」


 ずんだ餅太郎はは殺気を込めた視線を向ける。

 彼の手にもまた黄色いのび太君の手牌がいつの間にか握られていたのだ。

 しのぶに先行される事になったが、彼もまた手堅く”のび太とドラえもんの仲良し”(のび太三枚、ドラえもん三枚。

 黄色い道具牌で交際。少し点数安め)を狙っていたのだ。


 「これは麻雀のしょぶだろうがっ‼いつからドんじゃラに…」


 ふとずんだ餅太郎、南風丸の開示された手牌を見る。

 そこには麻雀牌ではなくドんじゃラの牌が並んでいた。


 「なんくるないさー。ですよ。シャチホコさん。アンタも一人のドんじゃラーならさっさとチップを払ったらいいんだ」


 いつの間に点棒もドンジャラ用のチップに変わっていた。


 (クソが‼どう考えたって積み込みやんけ‼)


 シャチホコは二人の要請に押し切られような形でチップを払う。


 「これはあくまで麻雀のしょぶだ。次からはドンジャラじゃなくて麻雀に戻してもらうぜ」


 しのぶはクスリと笑う。それは明確な挑発であり、玩弄の態度とも受け取れた。


 「どうぞご自由に。しかしエビフライのすけさん。アンタの得意の麻雀で負けたらカッコつかないよな?」


 しのぶは全自動卓から排出された麻雀牌をいち早く並べた。


 「言ってろ、雑魚が」


 シャチホコ金太郎は己の配牌を前に表情を崩さない。

 もはや彼は安い挑発をするような真似をする余裕は無かった。手牌を手早くまとめあげ、高めの訳を狙わんとする。


 (この手牌…三色か。上手くいけばメンタンピンを狙えそうだが…)


 向かいの席に座るしのぶを見る。しのぶはポーカーふフェイスのまま対戦相手を一瞥していた。

 ずんだ餅、南風丸らは既に最初の牌を切っている。それぞれ南、北といった字牌ばかりだ。


 そして次のシャチホコは真剣な表情で西を切る。シャチホコはしのぶにガンを飛ばした。


 「早よ切れや、ドサンピン。あんさんのこすっからい戦法なんざワイにはお見通しなんやで?」


 しのぶはまたもや洋右の笑みを見せる。(※この文章を添削しているふじわらしのぶの同僚は切れかけています)

 南風丸は当初から予定した二枚目の南を切り、自風である西を見た。露骨な目線移動が誰も動じる様子は無い。


 (おやおやずんだ餅太郎さん。どうしました?本当は欲しかったんでしょ、この南)


 ずんだ餅太郎は舌打ちをしながら南を切る。

 実は南はドラであり、これを頭にして高めのトイトイで流れを戻すつもりだった。

 冷静さを取り戻したシャチホコを相手にいつもの昼行燈は失敗をする可能性もある。


 (南風丸、いやな小僧だ‥)そして都合三枚目の北を捨てた。これで覆面トイトイを狙うつもりでシャチホコとしのぶの競り合いを観戦する算段だ。


 「安いのう。底が視えとるでずんだ餅太郎はん」


 シャチホコは二枚目の牌を引き、分かりやすく似たりとッ嗤う。勝ち筋が見えた。


 「そらリーチや。コイツは高いで?」


 九ピンを切ってリーチを張る。当り牌は2ピンの単騎のみ。リーチ、三色、イーペーコー。タンヤオ。ツモと一発が乗ればかなり心強い手だった。


 「フッ」


 しのぶは三者等を鼻先で笑い飛ばし、即二萬を切って情勢を見極める。


 「ワイとしのぶの一騎打ちかぁ‼シケとるのお、東京者は‼」


 残念ながらこの面子に東京出身の人間はいない。


 「撥…です」


 南風丸はおどけた様子で撥を切る。いつもの天然が入った坊やのような顔をしているが内心では冷や汗ものだった。実はこの時既にシャチホコとずんだ餅はテンパイの状態だったのだ。


 「ハッ」


 ずんだ餅太郎は息を吐きながら牌を引く。彼の当り牌は三萬。ドラ抜きのダマテンとくれば大いに安いあがりになるのは間違いないだろうが、

 未だに実力を見せないしのぶが実力を発揮する前に叩き潰すつもりだった。


 (二位狙いとは情けないが、私に王となる器量が無い事は私自身が一番良く知っている…)


 シャチホコは対極的に豪快に牌を引いた。ツモを狙っている、その気になれば裏ドラだって乗せてやるつもりだ。


 「東だ。誰か当たるヤツはいねえのか?」


 そして東を捨てる。


 しのぶ、またしても動かず。粛々と山から牌が引かれ、捨てられていった。



 変化があったのはそれから六巡目くらいだった。


 「カン」


 しのぶが哭いた。


 ハットリくんの牌が四枚、宅に晒される。


 「おい、しのぶ…いい加減にせえよワレ。ワイらは麻雀やっとるんやで?ドンジャラやのうて」


 「いやこれはハットリくんの…」


 「あのな、しのぶ…ハットリくんのゲームもドンジャラっちゅう名前や‼」


 惜しげもなくドんじゃラの豆知識を披露するシャチホコ金太郎。他の三人は黙るしか無かった。


 協議の結果、しのぶにフリテンのペナルティが加わりオーラスに突入する(※物語の尺的な問題ゆえに)。


六巡目、シャチホコ金太郎がテンパイとなる。萬ズの門前、清一色。さらにドラが乗って三倍満の好手である。

 南風丸もまた一巡遅れてテンパイ。ピンズとソーズ、字牌から構成され三色チャンタ。ドラが乗って最低でも倍満は固い。対して沈黙を守るずんだ餅太郎は四槓子。

 さらに字一色のダブル役満だった。


 シャチホコと南風丸が緊張の面持ちでずんだ餅太郎の捨て牌に気を配る。


 なんとういうプレッシャー、四人の中で最年長の男がオーラスで”漢”を見せたのだ。


 否、ただ一人だけポーカーフェイスを崩さぬ男がいた。ふじわらしのぶだ。彼は南風丸とシャチホコの当り牌を躱しながら着実に勝利の一手を作り上げていた。


 ――四者に延長戦という思考は存在しない。


 ここで決めるつもりだった。そして海底、しのぶが吼えた。


 「うぅぅぅーー‼!ワンワンッ‼」ではなくてツモったのだ。


 「御無礼。ツモです」


 しのぶは端から牌を倒す。



 左端から諸葛亮(×2)、関羽(×3)、張飛(×3)、趙雲(×3)、黄忠(×3)、呂布(×3)


 『五虎将軍』――トリプル役満をも越える伝説の一手である。


 「このクソが‼ボケェッッ‼‼牌が17枚って多すぎるんだよ‼真三國無双麻雀なんて誰も覚えていねえんだよ‼後呂布は食の武将でも五虎諸郡でもねえよっっ‼」


 シャチホコが思いつく限りの全てのツッコミを入れる。他の二人は黙るしか無かった。

 そこでしのぶはシャチホコを人差し指でさした。


 「お前はもう死んでいる」


 「は?…ええっ⁉ほあああっ‼」


 シャチホコの顔が内側から空気でも入れられたかのように膨れ上がる。


 「ちょっ‼待っ…ッッ‼これはそういう話じゃねえッ‼」


 シャチホコの叫びも虚しく彼の顔は二倍くらいに膨張する。

 しのぶはトドメにシャチホコの額を指で突いた。


 「リーチ‼一発‼即死ッ‼」


 ズドッ‼


 しのぶはシャチホコの額に人差し指を第二関節くらいまでぶち込むとゆっくり引き抜いた。


 「しのぶ、先に地獄で待っている…ぜぇえええッ‼」シ


 ャチホコ太郎は断末魔を上げながら爆裂四散した。


 カジノの中は騒然としている。

 しのぶは無言で席を立ち。出口まで歩いて行く。


 「しのぶーーー‼」


 その後を追いかける南風丸とずんだ餅太郎、闇組織のオーナーたちは沈黙に耐えながら見守るしか無かった。真・救世主伝説がここに始まる。



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呂布(笑) 誰かいないと思ったら錦馬超! 突っ込みなかったけど諸葛亮もいらない
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