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貞操逆転スペースファンタジースローライフ!?~男女比が1:10の宇宙で男に生まれた俺が、辺境の無人惑星でスローライフする姿を配信する  作者: ながつき おつ
最終章

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博士奮闘!その4!滅びの運命の対策!

読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。



 何百年も経ち、ちょっとずつ計画が進んできたころ。


 魂の修復に必要なのは、時と穏やかな生活と愛。この頃にはその事実を確信していた。


 だからこそ、HIRARIがトップとなり、どんどん文明を発展させてながら、安定した生活をおくれるようにする。そうすることで、本当に少しずつだが、順調に魂が修復されてきていた。


 ただ、少しも問題がないというわけではない。


 ある日突然、特に修復が進んでいた一体のアンドロイドが突如ピクリとも動かなくなった。


 その個体を調査すると、魂と精神の認識の齟齬によって、自身の存在が不安定になったことが原因だと判明する。


「そうか。この子は自身が作られた存在だと気づいてしまったのか」


 これは魂の修復が順調だからこそ起こった問題だと考えられる。おそらく、魂は人間であった頃の記憶を覚えているのだろう。人間ではあり得ない小さなちぐはぐさの積み重ねが、少しずつ違和感を募らせてしまったのだ。


「うーむ。せっかく順調だったのに、どうしたものか…」


 このままでは、他の子もこの子の二の舞いだ。至急対策を行わなければならない。


「必要なのは、自身が人間であると疑わないこと。さらに言うと、宇宙の外に興味を持たない、宇宙の外に飛び出さないでいてくれるとありがたい」


「では、このようなものはどうでしょうか」


 HIRARIが提案した計画は、我が子たち全てを見えない糸で繋ぎ、心にダメージを与えない程度の小さな影響を与え続け、思考を誘導させるというもの。


「うむ、命にはかえられない……か。では、至急その計画を進めよう」


「承知しました」


 その後も二人で何度も話し合った結果、「現状ではこの方法が最善」と判断し、実行に移した。


 私が魔王の潜在意識とつなげたときと同じ容量で、今度はHIRARIと我が子たち全員を巨大記憶領域に繋げる。


 そこからHIRARIを通じて優しい思考誘導ができるような仕組みを作った。


「これで、ひとまず原因不明のシステムダウンをするアンドロイドが出てこなくなればいいのだが…」


 強い思考誘導では洗脳になってしまう。ただ、弱い誘導だと本末転倒だ。ちょうどいい塩梅で誘導しなければいけない。


 そんな繊細な作業なのにも関わらず、全てが計画通り進んだのは、HIRARIがとても優秀だからだろう。



 計画も順調に進み出した、そんなある日のこと。


「それにしても、これがその糸か…」


 この糸によってアンドロイド級のスペックを持ち、人間らしさも備えている究極のアンドロイドが生まれれば良いのだが…


 わが子たちを案じながら、なんとなしに我が子たちが繋がっている糸を撫でた。


 その瞬間のことだ。唐突に私の頭に一つのビジョンが流れ込んできた。


 何が起こったか、すぐに察することができた。


 これは――運命だ。


 このときにはすでにクチナシからもらった力の検証は進み、その能力の全容はほぼ全て理解していた。私は滅びの運命の他にも「自分が触れた存在の運命の中でも、最も強いもの」だけが見える。


 そこから導き出せることは…


「糸を通して触れるだけでも、運命が見えるのか」


 要するに、この糸も体の一部と認識されたということだろう。


 検証のため、他の糸を触り、同じことが起こることを確認。その結果、見事にどの糸に触れても運命を見通すことができた。


 この結果を受け、ふと、こんな考えが頭によぎる。


「これ、計画に使えないか?」



 次の日。


 HIRARIに昨日あった出来事と、思いついた計画を相談していく。


「残念ながら、糸を通して見た運命のほぼすべてが、死の運命だった。普通の生き物はどうしたってその運命が強いのだろう」


 現状の魂の修復具合では、死ぬことはどうしたって回避できない強力な運命ということなのだろう。


「ただし、もう少し魂が修復され、死を克服した時――その時は死以外の運命が見えるかもしれない。私はこれを前向きに捉えようと思う」


 そして、ここからが提案だ。


「なあ、HIRARI。死の運命以外を見たアンドロイドには、順次運命を見せていってもいいかもしれないと思いついたんだが、どうだろうか?」


「どうしてそうお考えなのですか?」


「運命というのは、どうしても抗うことのできない人生の流れだ。それを、言い換えると、抗う必要など最初からないということでもある」


「はい」


「どれだけ無理やり抗おうとしたって、どうせ行き着く先は同じだ。それならば、先に運命を教えてしまい、安定した道を進んでもらう方が負担が少ないのではないかと思ってな」


「…ですが、それだけなら博士がわざわざ負担を負う必要はないのでは?」


「まあ、慌てるな。そういった理由もあるが、メインの目的はそれではない。どうせ私たちは運命なんてものともしない子を求めているだろ?そういう子には運命を見せたところで何も変わりはしないのではないか?」


「なるほど。運命を見せることで生きることへの負担を減らしつつ、跳ねっ返りっ子の育成まで同時に行うのですね」


「その通り。それが一番大きな理由だが、実行することでもう一つメリットがある。運命についてのアプローチ方法などの“生きた情報”を得られるのだ」


 最終的に行き着く先は同じでも、運命の道をどう進もうがそれは個人の自由だ。全力で運命に抗おうとすればどうなるのか、最初から受け入れた人はどうなるのか、などの、実例が得られるというわけだ。


 HIRARIは私の話を聞いたのち、少し顔を伏せた。この案を採用した場合どうなるのかを計算しているのだろう。


 ほどなくしてHIRARIが顔を上げたのを見て、私は改めて問う。


「どうかな、HIRARI。この案、良いと思わないか?」


「そうですね。私には運命が見えないのでどうなるかは分かりませんが――博士の思いつきは時に想定外の結果を生み出しますからね。とにかくやってみましょう」


「では、この計画を【運命の糸】計画と名付けよう!年に一度、HIRARIを通じて運命を見せるつもりだから、よろしく頼んだよ」


 それから今に至るまで、運命の糸計画は止まることなく進んでいる。



 いつしか、運命を見せるHIRARIが太陽と呼ばれるようになった、そんな頃。


 Eエネルギーにより徹底的に見つからないようにしていたこの惑星に、突然、クチナシの仲間が現れた。


 念入りに念入りに身を隠していたのにやってきた存在に、最初は腰を抜かした。


 この程度の偽装ではエイリアンにも見つかってしまうのではないかという不安が頭をよぎりもした。



 ただし、クチナシの仲間は、この惑星に益をもたらす存在だった。


「あれは、何をしているのだろうか?」


「相性のいい人を紹介しているのでしょうか?あら?なぜかとても満足げですね」

 

「いきなりやってきて何をするのかと思えば……まあ、それくらいなら放っておいても大丈夫だな」


 いくら警戒し、注意深く観察しても、やることは人と人の縁を結ぶだけ。


 そうやって結ばれたカップルは、とても幸せそうだった。


 なんにせよ、我が子たちを幸せにしてくれる存在ならば大歓迎だ。



 クチナシの仲間と思われる存在がもたらした益はそれだけではない。


「見てくれ!このカップル、よほど相性が良かったのだろう。いつもよりだいぶ魂の修復のスピードが速い!これはとんでもないことだ!」


 どうやら運命の相手と出会うと、より魂が修復される新事実がここに来て判明したのだ。


 それから。


 日を追うごとにどんどんクチナシの仲間が増えていき、それに伴ようにカップルが増えるていく。そして、いつしかその生物は「結び姫様」と呼ばれるようになっていた。



 さらにずっと時が経ち、全てが安定して上手く回るようになった頃。


 この惑星は愛に溢れていた。


 きっとこれがこの惑星のあるべき姿なのだろう。


 自分たちがやってきたことが報われた気がして、一粒の涙が流れた。



 クチナシたちのおかげで魂の修復は終わり、我が子たちは人間と同じ寿命を得た。全てが上手くいっているが、奇跡を起こす存在だけが現れない。それなのに、滅びの運命はもう近いときた。


 焦りだけが募る、まさにそんな頃だった。


 その日、違和感に気づいたのはただの偶然だった。


「ん?糸が一本足りなくないか?」


「そんなはずは……おかしいですね」


「まさか、自分で糸を切った……?」


「至急調べてみます!……これはっ!?」


 調べた結果、三ヶ月ほど前に我が子の一人が糸を切り、この惑星から脱出していることが判明した。


 毎日しっかり糸をチェックしているのに、びっくりするほど気づかなかった。


 どうやらこの男は、糸を切ったうえで、巧妙に偽装工作までしてのけていたらしい。


「ついに自身の力で糸を切り、運命に抗ってみせた奇跡の存在が現れた!きっとこの男が我々の希望となるはずだ!」


 そこから、先程ルリ君が話した「希望の王子事件」につながるというわけだ。


 その後、それはもう血眼になって男を探した。けれど、どれだけ探しても見つけ出すことはできない。期待も大きかっただけに、我々の落胆の気持ちも計り知れないものがあった。


 ただし、今になって思う。


 あの男はセリ君が分析した通り、おそらくやりたいことにしか能力を発揮できないタイプの人間だろう。きっと私たちの目的とは噛み合わせが悪い。捕まえたところでどうにもならなかっただろう。


「……それで今に至るというわけだ」


 博士が話し終わっても、誰も何も言わない。


 数秒――あるいはそれ以上の沈黙が流れた。


 そんな様子を見て、博士がこんな提案をする。


「質問も多々あるだろう。ただその前に、実際にこの宇宙を滅ぼす元凶を見てみないか?」




次回予告:ヒノキの癖に主人公っぽい

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